パズル 5 プロローグ

アトランティス大陸


「アトランティス大陸発見」
「アトランティスは南米に実在した」

二〇二一年六月中旬、歴史を覆すような大ニュースが世界中を駆け巡った。


紀元前一万二千年前の石板や、プラトンが書き残した通りの中央都市の痕跡などが見つかり、アトランティス大陸が実在したことは確実であると報じられた。マスコミは、連日この話題を報道した。

世間の目はボリビアの高原地帯アルティプラノに注がれ、人々は伝説とされ続けたアトランティス大陸のに熱狂した。
地質学と考古学に造詣の深い地理学者であるジム・フォクスター教授は、アトランティス大陸が実在したことを、次のような証拠を挙げて説明した。
 

・プラトンは、アトランティス大陸はヘラクレスの柱(ジブラルタル海峡にある岬)の外側にあったと記述している。南米は、まさにその場所に位置している。


・アトランティスには特殊合金があったとされている。アルティプラノは天然資源が豊富であり、実際にここだけにしか存在しない合金がある。


・ティワナク文明には、建築、占星術、数学など高度な文明があった。これらはアトランティス文明の名残である。


・南米にはマチュ・ピチュ、インカ、ナスカなどは数多くの遺跡があり、高度な文明が各地で栄えていた。それらがアトランティスの高度文明の影響を受けて栄えたと考えると多くの疑問が解決する。


・アトランティスには運河があったとされている。アルティプラノには人工的に作られた運河の形跡があった。


・発掘した石板にはかつて見たことがない古代文字が記さており、調査の結果、紀元前約一二〇〇万年前のものと判明した。

 
こうしてジム・フォクスター教授は、南米そのものがアトランティス大陸だっという大胆な説を発表した。アトランティス大陸実在の発見により、彼の名は一躍有名になった。そのことをねたむかのように懐疑的な見方をする学者もいたが、反対意見は返って報道を過熱させ、フォクスター教授の名を世間に広めるだけだった。

さらに、アトランティス大陸の発見に生涯をかけたジム・フォクスター教授の苦労物語は、話題をいっそう盛り上げた。

アトランティス大陸の発見は、歴史や考古学のみならず、地球物理学、地質学、地磁気学、地震学など広範囲な分野にわたって多大な影響を与えることになった。

ニューヨーク・タイムズは、「すべてとは言わないが、私たちはほとんどの学問を最初から見直す必要が出てくるだろう」という内容の社説を掲載した。

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