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「もう子供じゃない、でも大人じゃない」 社会人2年生に、M!LKの『ERA』が刺さった話


マップに頼らずとも営業先に向かえるようになりつつある、社会人二年目の春。目が回るような繁忙期を乗り越え、最近はゆっくりと昼食を選ぶ余裕がある。頑張りどきと、そこまで頑張らんでもええよ、ってとき。もちろん完全とは言わないけれど、それらを少しずつ掴めてきたように思う。昨年の5月に比べれば疲れ果てて寝落ちする回数も減った。

やりたいことがある。
noteには何度も書いているし、何ならプロフィールでまで暑苦しく宣言している。
先日不意に思った。自分、いつその道への舵を切るつもりなんだろう
とにかく今の仕事に慣れるまでは、転職の具体案なんて考えず集中するつもりでいた。そうしていつかは、と夢見ているうちに、いつの間にか1年が経った。あれ。今って、どういうとき?

運転中。手持ち無沙汰な時間の思考は碌なものを生まない。多忙であれば考えなかったはずの、輪郭がぼんやりとした蟠りがぼこんと心の中に生まれた。車内には最近好きになったM!LKの曲が流れている。


初めて歌詞をきちんと聴いたのは、そんなタイミングだった。


ぶわっと視界が滲んで、ハンドルを強く握る。
一瞥したスマホには、『ERA』と表示されていた。


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M!LK 『ERA』

結成して7年半になるM!LKは、グループ編成が二度変わっている。『ERA』という曲はグループの一つの節目に大きく関わると知った。詳しい流れを見聞きするごとに、この曲の印象はどんどん重みを増していく。

でも、それを知る前に、歌詞が今の自分に響いた。お風呂の中で熱唱するときくらい、誰もいない体育館で叫ぶときくらい、心の膜を突き破って響いてきた。



歌詞の至るところに、身に覚えがありすぎて痛かった。

いいことばっかじゃなくたって
勝手に進む時間の後ろ髪掴まえて
まだ行くなと 叫ぶ

1番Bメロ

もう子供じゃない でも大人じゃない
同じ今を生きる仲間達よ
報われたいよな 最後笑ってたいよな
僕らなら新しい時代を作れる

1番サビ

〈もう子供じゃない でも大人じゃない〉とか、ここ8年くらいずっと心の中にあるよ。もう明らかに子供ではない23歳。「大人」であるはずの自分の年齢を実感する場面はたしかにある。この前は高校生と自分の年齢差を数えて驚いた。
それでも、全然、私は大人じゃない。

サビを踏まえてBメロに戻る。すると〈勝手に進む時間〉に〈まだ行くなと叫ぶ〉情景が、リアルさを増して降りかかってくる。子供じゃないのはわかっているけど大人にもなりきれない。報われたい。最後に笑っていたい。だから頑張りたい。でも時間よ、もう少し待ってほしい。そうして〈まだ行くなと叫ぶ〉のだ。……なんかもうわかりすぎて心臓痛い。


積み重ねた一秒よ どうか明日を裏切るな

2番Bメロ

これまで積み重ねてきたから大丈夫! と、自信満々に言い切れない。「どうか裏切るな」と強く両手を握って縋るような祈りが、胸を張って立つ裏に抱える不安や怖さを思わせる。

どれだけ積み重ねてきても明日を裏切られることはある、というこれまでの痛みが生んだ言葉のようにも思える。私はこれを聴いて、8年続けたソフトの最後の大会2週間前に骨折したことを思い出したよ。もちろん彼らの歴史と同じ類にはしないけど、あるよねほんと、そういうこと。〈裏切るな〉と祈らずにはいられない感情は、聴く人それぞれで思い出す何かがあるのではないだろうか。前向きな言葉ばかりじゃない弱さ。どこか覚えのある痛み。ちらっと見えるその内側が、詞の内容をより一層深いところに届かせる。


運転中に前方の車が歪んだのは、2番のサビを聴いたときだった。

何も無駄じゃない 君は無駄じゃない
迷ったらこの歌を聴いてくれよ
遠回りしてもいい 間違ってたっていい
目印はいつでも僕らが作るから

2番サビ

これ応援しているアイドルに歌われて感動せんやつおるんか???

泣いた。マジで。車の中で。びっくりした。
第一志望全落ちして就浪するか迷った2年前。とにかく就職した現職に少し慣れてきてこのままでいいのか不安な今。やりたいことがあると言いながら一歩目すら踏み出せていない、悶々とする自己嫌悪の日。様々なグレーの塊が、ぶわわわあっと、勢いよくシャボン玉を吹いたように浮かび上がった。

彼らは〈迷ったらこの歌を聴いてくれよ〉と歌ってくれた。その圧倒的なパワーと頼もしさ。とてつもなく心強くて、何かに抱きとめられたように感じた。私はnoteをポートフォリオのため、練習のつもりで書いている。そこで〈何も無駄じゃない〉を思い出してまた泣ける。この時間も無駄じゃないのだろうか。そうなのかな。書いていてまた泣けてきた。すごい、この歌。


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パートそれぞれの役割

以上が、個人的に心を掴まれたポイント。
ここで、曲全体の流れを整理してみる。するとAメロ、Bメロ、サビ、Cメロで、それぞれの特徴がわかった。(あくまでも個人的な感想です。)

1番も2番も、Aメロではわりと強気な、あえて斜めに表せばかっこつけたことを言っている。彼らの同年代としては聴いていると勇気をもらえるけれど、大人になってから思い返したら顔を覆いたくなるんだろうな、というような。

Aメロの言葉たちは、「僕ら」に向いている。メンバーが円になって、全員で内側を向いて決意を確かめ合っているイメージが浮かんだ。


一転してBメロでは、「僕ら」の弱さ、脆い一面を一瞬だけ見せる。2番では〈もう一度作り上げろ時代を〉と強く奮い立つ言葉が並んでいるけれど、前述のように私は〈どうか明日を裏切るな〉が大きな意味を持った、本音の部分であるように思える。「僕ら」の内側を炙り出し、逃さずはっきりと描く。それにより一種の生々しさが生まれる。ステージで輝く彼らが、一段こちらへ降りてきたように感じた。僕らも同じだよ、とでも言うように。

〈ここで誓う〉のは、誰に誓っているのだろう。私は、Aメロでは「僕ら」に向いていた視線が、このBメロで「外の世界」へ広がったのだと思う。円になっていたみんなが外側を向き、そこに聴き手が入る場所が開かれる。


そしてサビは、聴いている人へのメッセージ。
キラキラと輝くステージ上の彼らも、試練や葛藤を抱えていると露わにしたBメロ。その上で〈同じ今を生きる仲間達よ〉と、こんなにも力強いメッセージを届けてくれる。


そして2番サビの直後にCメロへと移り、曲の核にたどり着く。

簡単じゃなくて でも逃げたくなくて
僕らが必死に伸ばした手を
君が掴んでおくれよ
僕ら握り返すから
この今を一緒に駆け抜けよう

Cメロ(落ちサビ?)

「一緒に」、なのよ


思わずバカでかフォントで打ってしまった。
〈目印はいつでも僕らが作る〉、だからついてこい、と放つだけではない。
〈君が掴んでおくれよ〉と、こちらに援けを乞うだけでもない。

Aメロで勢いよく自分たちを鼓舞し、Bメロで少し内側を晒して一段ステージを降りてきてくれる。聴き手に寄り添うかのように。この流れがあるから、サビのメッセージが強く深く、一番真ん中の柔い部分まで浸透する。そしてCメロで、ステージから降りてきた彼らが、こちらに手を伸ばすのだ。君が掴んでくれた手を握り返すから、一緒に駆け抜けよう、と。今を生きる仲間としてこちらの手を引き、もう一度ステージへと駆け上がる。そこから、ともに見る夢を描かせてくれる。すご〜い……(雑)


そして、曲を締める最後の一節。

思い通りにはいかなくても

独りよがりな自己解釈だけれど、これ、「思い通りにはいかなくてもやり切ってやる」という固い意志にも、「思い通りにはいかないかもしれない」という一抹の不安の現れにも思える。だって120%自信があったら、まず〈思い通りにはいかなくても〉なんて出てこないと思うのだ。そう簡単に思い通りにはいかないことを知っている彼らだから、歌う意義をもつ言葉なのだろう。この詞で締めるの、何回考えてもすごい。

「思い通りにはいかなくてもやり切ってやる」闘志を、彼らは今、見せてくれている。有観客ライブをようやく取り戻しつつある今。M!LKは春のツアーが終わり、先日、グループ史上最大動員数のホールツアーが発表された

配信やYouTubeで、画面越しに何度も笑った。疲れを忘れさせてくれた。
隔たりのないライブ空間では、全身で「楽しい」を浴びた。ステージ上には「ドームツアー」というデカい夢に一歩ずつ近付きながら、一緒に進もうと手を伸ばす5人がいた。
まだ数週間しか知らない私でさえ、その姿を見せてもらった。やっぱり私は、〈思い通りにはいかなくても〉という一節を、固い意志だと、彼らの強さだと捉えたい。


私は彼らがこれまで乗り越えてきた道のりの、ほんの一部にすら立ち会っていない。けれど、M!LKに楽しい時間をもらった、彼らのメッセージに救われた一人として、満員のドームで『ERA』を歌う姿を見てみたい。5色のペンライトを灯す一員となってこの曲を聴いてみたい。頑張れ。私も頑張ります。
心の支柱になる曲を歌ってくれて、ありがとう。


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もっと早く彼らを知りたかった、けど!

昔はそうでもなかったのに今聴いたらめっちゃ刺さる曲、というものがある。その反対もある。中学時代に『ERA』を聴いていたとしたら、間違いなくこんな激重長文を書く衝撃は受けていなかった。

グループの変化を見守ってきたファンの方々にとっては、様々な感情が浮かぶ曲なのだろう。自分がその場面に立ち会っても同じ感想が言えるかは、わからない。

これもひとつの巡り合わせなのかもしれない。

推しができたときあるあるの「もっと早く知っていればよかった……!」は、すでに何度も感じている。けれど、社会人二年目、見て見ぬふりできない蟠りや不安を抱えちまったこのタイミングに聴いたから、同年代の彼らが歌っていたから、『ERA』に救われた。そう思えば、今でよかった。今出逢うべくして出逢えたのかな、とも思う。



〈迷ったらこの歌を聴いてくれよ〉と伝えてくれる、頼もしいけど少し弱くて、それでもやっぱり最強に逞しいこの曲を、私はこれからも何度も聴くだろう。
彼らが伸ばしてくれた手を掴み、一緒に今を駆け抜けていくために。








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