今週の読書録
間借り寿司まさよ
原宏一さんの新刊、今度は店舗の空き時間に間借りしてお寿司屋さんを開く女性が登場。
タイトルにはなっているものの、雅代さんよりも間借り先の店主の視点が中心となって展開される短編集です。
ある日突然店先に謎の中年女性が現れたら?
不思議な存在感を放つ流浪のすし職人・雅代さん。
東京、金沢など場所を問わず、間借り先もバスク料理、バー、大衆食堂と多様。
ある日やってきた雅代さんが一定期間、本来のお店が閉まっている時間帯を借りてこだわりのネタを使用したお寿司屋さんを開くのです。
SNS掲載も写真撮影もお断り、次の出店先を知るのは素材を卸す漁師さんや仲買人さんのみ。
ファンは雅代さんがどこでお店を開こうとも追いかけるほどの人気。
この神出鬼没な雅代さんと出会うのは、人生の岐路に差し掛かった人たち。
感染症危機の飲食業界に焦点をあてながら、食べることと人との繋がりを描く小説。
続編はもちろん前日譚も読みたくなる作品でした。
いいかげんなイタリア生活 - イタリア在住15年の私が見つけた頑張りすぎない生き方
日本で出会ったイタリア人男性と結婚し、イタリアで生活することになった主人公。
短期間の観光では感じないであろう、10数年住み、育児や濃密な人づきあいがからむからこそ見えてくるであろう風景。
こちらは、noteでも執筆されているワダシノブさんの作品です。
ほんわかしたイラストと個性的な視点。
喫茶店に持参してチーズトーストと紅茶をおともに読み進めましたが、マリトッツォとお寿司のエピソードが特に印象的でした。
私もロシア出身の方とペリメニとお寿司の話をしていた際に似たようなことがあったので、食文化はご当地のなじみのある物と融合して変化する感覚はどこでもあるのだなと納得感がありました。
国民性や文化の違いはあれど、結構楽しそうな様子に気軽に読める一冊です。
薄手ではあるものの、文字量も想像以上にしっかりとあったので、通勤時やお風呂タイムのおともにおすすめです。
この世の喜びよ
井戸川射子さんの『この世の喜びよ』は、芥川賞受賞作として注目されている書籍です。
今回の直木賞・芥川賞はいずれも2作品の受賞ということで、読みたいものが多いです。
『地図と拳』に至っては収納に悩むようなサイズ…いずれから読もうか迷った末にまずは薄いこちらをチョイスしました。
読み始めて最初に感じたのは、「あなた」という二人称で語られる見慣れないテイスト。
何だか国語の入試問題に使用されそうな?というちょっとズレた感想を抱きつつ、読み進めてみました。
個人的には少し好みと異なりましたが、話題作ですのでネタになったなという印象。
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