劇場クラスターのおはなし

書こうと思えばいくらでも書けそうな、調べようと思えばいくらでも調べられそうな、連日騒がれている”劇場クラスター”についていよいよ触れたいと思います。ちょっと緊張しております。舞台芸術に関わる身として全貌を知っておきたいという思いもありますが日が暮れそうなので自分の記録程度のnoteにしたいと思います。

今回の報道を受けて私が感じたこと。舞台芸術の、事例の問題点②適切なガイドライン③価値を軽視するような報道④今後の展望 今回はこの4つに絞って自分の考えを記録することにします。ここに書かれているものはあくまでも自分の考えなのでご了承ください。

①事例の問題点

報道にあるように『THE★JINRO―イケメン人狼アイドルは誰だ‼―』6月30日〜7月5日 @シアターモリエール で劇場クラスターが発生した。詳細については長くなるので詳しく知りたい方は各メディア掲載内容を見てね。今回の問題点として、ガイドラインが守れていなかった、体調不良者が自己申告をしたのにも関わらず主催側が出演を求めた、出待ちなど状況下における配慮がなされていなかったなどの声が報道されている。しかしこれらの報道はほとんどが「演劇関係者によると〜、関係者によると〜」と書かれている。どこまでが事実でどこからが虚偽なのかわからないのだ。作品に関わればもうそれは”関係者”になる。実際に劇場に足を運ばずに当時の状態を目にしてない人でも関係者、小耳に挟んだだけでも関係者になってしまうのだ。真実を知るためにも主催側から正式なコメントを要求する。真実を知るためというのは、咎めるためではなく今後同じ災いを起こさないための経験の共有という意味で。もちろん擁護する訳ではないが、落ち度があったことには間違いないはず。でなけれな感染を免れることもできたはずだ。

②適切なガイドライン

報道の中に「ガイドライン」という言葉がよく使用されるが、おそらく参照していたのは「小劇場協議会(http://jipta.jp/?p=1)」ではないか。劇場ガイドラインについて調べると「公益社団法人全国公立文化施設協会(https://www.zenkoubun.jp/covid_19/files/0525covid_19.pdf)」も出てくる。(小劇場協議会は公益社団法人全国公立文化施設協会を参考にガイドラインを作成したようです)注目したのはガイドラインに記載されていう内容の文末。「〜に努めてください」「推奨します」「工夫してください」「検討してください」という曖昧な言葉ばかり。そして観客向けへのガイドラインばかり(劇場だからかもしれないが)。主催者側への要請も緩すぎる。例えば、発熱以外の症状があった場合は自宅待機を「促してください」、「可能な限り」ソーシャルディスタンスの確保をお願いいたします、と書かれている。しまいには《 加盟劇場が本ガイダンスを徹底するにあたっての実施方法は各劇場の対応と致します。そのため劇場によって細かな対応が異なる場合があります。》と書かれているのだ。この一言が添えられている時点で「シアターモリエールがガイドラインを守っていなかった」と断言できるのだろうか。

ガイドラインにきちんと書かれており、また劇場や団体の性質上守ることが可能といえども守らなかった、は全く擁護できない。さらに、ガイドラインに書かれていないから出待ちはOK、面会はOKという判断になるのも意識の低さが指摘される部分ではあるので擁護できない。一般的に考えてアウトでしょということは、観客はおろか関係者ならばなおさら判断できることではないか。


価値を軽視するような報道

この報道で3次被害が起こっていることは演劇関係者は自覚しているだろう。(2次被害は”今回の報道によって公演中止を余儀無くされた団体”だと思って書いています)見出しの通り、演劇の価値を軽視するような報道・コメントが多いように感じた。特に私が胸を痛めたのは2.5次元舞台に対して「ホストまがいの」報道。役者に対してもホストの皆さんに対しても大変無礼な報道である。良く言えたなと思うくらいである。しかしこれは相手が演劇だったから言えた誹謗中傷なのではないかという考察もしている。後々研究したいと思っているが、日本における演劇役者(特に小劇場役者)の価値が低すぎる。演劇役者の特徴が原因になっていると思うが、このような社会意識が今回の無神経な報道に繋がったのではないかと考える。(演劇役者が社会にもたらす影響、特に存在価値や労働問題などについて関係がありそうだけどこれは私が研究したい内容だからあと5年くらい待って)演劇業界の価値の低さを改めて実感できた事例であった。

④今後の展望

ポストコロナの演劇はどうなってしまうのだろうか。娯楽と見なされるエンターテインメント業界・アート業界は廃れてしまうのではないかと心配する声も上がっている。(私はそんなこと思ってないよ!ペストの時でも大丈夫だったじゃん)現段階に於いて、精神を擦り減らす程の感染防止対策を取り入れながら公演や稽古を実施している団体も多い。断腸の思いで公演中止を発表した団体も少なくはない。どの団体にも「ありがとう」と感謝の言葉を述べたい。”展望”と言えるほど期待ができるわけではないが、文化芸術を愛する身として、ポストコロナに立ち向かう方法を一緒に考えていきたい。(演劇界における今後の展望ではなく私自身の展望になってしまった。)問題点を洗い出し、+αのリスクを考えて行動を起こしていかないといけない。生にこだわっている以上、生でお届けするというリスクがあることを忘れてはいけない。

まとめ

ここまで読んで頂いて「ガイドラインが不十分ではないのでは…」気づいたかもしれない。今回の報道を受けて、劇場側・主催側だけに非難の矛先を向けるのは間違っているのではないかと感じている。なぜこのようなガイドラインが作成されたのか?ここには現代の日本における文化政策の問題点でも同じようなことが言えるが「現場を知らない人がトップに立ち、文化芸術を牽引している」からではないか。公益社団法人 全国公立文化施設協会 役員名簿を拝見したところ劇場・音楽堂の館長などマネジメントをされている方が多い印象。実際に表現者の気持ちがわかるのか。モノ・カネ・ヒトを物理的に支配するのが全てではない。今回は演劇に絞った内容であったが、ガイドラインは、劇場側の気持ち、出演者側の気持ち、観客の気持ちを考慮して作成されたのだろうか。起こりうることを想定して作成されたのだろうか。”感染拡大防止”ばかりを念頭に置き、心理性・精神性・性格性を考慮せず作成されたのではないか。今回の問題はコロナ禍における文化芸術だけではなく、日本の文化政策にも課題があることが指摘できる事例であった。

なっが〜〜い!こんなに書くつもりじゃなかったのに。最後まで読んでくれてありがとうございました。

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