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【詩】亡骸

口を堅く閉ざして
普段は絶対に着ない見たこともない
リボンの付いたワンピースを着て
手を強く握られ
引っ張れるようにどこへ行く


今日からここがあなたの家


2回しか会ったことのない叔母
ブラウスのボタンを上までしっかりと閉め
目の奥に微笑みはない

いいと言われるまでは座れない椅子
勝手に触ってはいけない家の中
わたしの家ではないわたしの家

毎日するピアノの練習
間違えると手の甲を
パチンと叩く掌

話しかけてはいけない
聞かれたことには答えないといけない
わたしは
わたしの家で
わたしを殺した


大人になったわたしは
わたしが誰だかわからなくなる


いたはずのわたしは私の中にはいない
わたしがいない中で私を作る
まるで張りぼてのように

いつ剥がれるかわからない
私がわたしを探さぬまま


ピアノの音が流れる街角
頭が割れるように痛い


わたしがどこかで私を呼ぶ


誰も見つからない様に
壁にもたれかかりながら
わたしを飲み込む


流れ出るわたしを必死に抑えながら
来る日も来る日も私を生きる


地面を見ながら
私はわたしの亡骸を拾って
抱きしめる


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