【詩】チョコレート

なにもわからなかった

なにも

火のついた矢は
一本じゃなく
四方八方から
やってくる

黒い目を光らせた
したり顔

誰もが誰も

家に帰ると
柔らかすぎるソファで
ぐったりする

ヘッドフォンで聞く
いつも聞かないセットリスト

一人じゃない

使い古されたメッセージが
心に凍みない

窓から見る月
誰かも見てる月
きっと知らない人

ピンポンと鳴り
画面に人の姿
宅配のおじさん

荷物を受け取る

友達からの荷物は
思い当たらず
首をかしげる

中身は大好きな店の
チョコレート

疲れてるの
頑張ってるの
肩の力を抜いていこ
甘いものでも食べて

のメッセージ

火のついた矢だけじゃなかった

差し伸べる手もあった

追いつめられた状況に
何もかも見えなくなって

チョコレートを頬張りながら
月を見るとさっきとは
違う色で月がこっちを見ていた