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人文系博士で留学するまでの読書体験

こんにちは、Harryです。

私は現在、カリフォルニアにある大学の博士課程に在学し、小説や映画などの研究をしています。

こういう人文系の研究者(あるいはそれを目指す人)って、多分皆さんの周りにはいなくて、果たして彼らがどういう人間なのかわからない人も多いと思います。

一体どういう経験をしたら研究者を目指そうと思うのか。

今回は、ほとんど自己紹介の延長ですが、どういう読書体験を経て私が人文系の研究者を目指すに至ったかを書くことで、どんな人が人文系研究者を目指しているのかの一例を紹介できたらと思います。


まず私の読書体験ですが、覚えている範囲ですが、多くの方々と同じく絵本に始まります。

母親が保育士だったため読み聞かせが面白く、よく絵本を読んで、とせがんでいたと思います。

中でも印象に残っているのは、『へっこき娘』、『こすずめのぼうけん』、『かたあしだちょうのエルフ』でしょうか。


『へっこき娘』は、オナラが止まらない娘がりんごをオナラで吹き落す話ですが、これはオナラが止まらないという点で、最近胃腸の調子が殊に悪い私に通じるものがあります。

大人になると体調の変化とか色々あるんです。若い子は覚えておこうね。

『こすずめのぼうけん』は、雀版母をたずねて三千里、『かたあしだちょうのエルフ』は、多分有名なので説明不要でしょう。

…めんどくさくなったわけじゃないよ?


で、小学校に入ったあたりだったでしょうか。

ある種のブレイクスルーが起こります。

読むだけじゃなくついに書き始めました。

『ウッキーさるくんマンガ』という、マンガと銘打たれたにもかかわらず絵などひとつもない、マンガとは何かという哲学的な問いを含んだ荒唐無稽なさるくんの不条理劇。

Harry先生の処女作です。

あまり内容は覚えていませんが、とりあえず登場人物のさるくんが酷い目にあって終わるというものだったと思います。5話くらいまで書いたと思います。

その後小学校では、『はれときどきぶた』、『ズッコケ三人組』とか色々王道を読んでいたと思います。


中学生になったHarryは類に漏れずついに中二病を発症。

ライトノベルを読み漁り、何をトチ狂ったか自分で中二病小説を執筆。何かの賞に応募したりしていました。これが第二作目。

ラノベの中でも非常に影響を受けたのが、神坂一の『スレイヤーズ』シリーズ、あかほりさとるの『セイバーマリオネット』シリーズ、賀東招二の『フルメタル・パニック』シリーズでした。

いわゆる普通の小説も読んでいましたが、私の中二心を満たしてくれるのはいつもラノベでした。

あともう言うまでもないですがガンダムシリーズなども当然読んでいました。王道もキチンと抑える。オタクの鉄則です。


で、高校の時はラノベやビジュアルノベルを読んでいました。

おいおい、いつから純文学とか読み始めるんだよっ思ったでしょ。

まあ待てよ。そのうち読むから。いいからもう少しラノベとかについて書かせてくれ。

ラノベは、橋本紡の『リバースエンド』や秋山瑞人の『イリヤの空、UFOの夏』とかいういわゆるセカイ系と呼ばれるものです。

ビジュアルノベルとは、なんかカッコいい言い方をしていますが、簡単に言えば、美少女が出てきてなんかいい感じに物語が進んで感動的なクライマックスを迎えるゲームのことです。

コンシューマー版でプレイしていました。…ごめんなさい、PC版もちょっとプレイしていました。

毎年夏に『夏影』を聞いて感じる郷愁は、アメリカ人が『Country Road』を聞いて感じるそれと同じです。

あと未完成ながら創作も続けており、そんなビジュアルノベルのシナリオっぽいものを書いていました。

…ところで『ミナミノミナミノ』の続編まだ待ってるんだけどいつ出るんですか秋山先生ェ。


そんなわけで、浪人を経て大学に入学するのですが、ようやくこの頃からそれっぽいものを読み始めることになります。

といっても入学したのは文学部ではなく法学部でした。入学当時は割と本気で法律家を目指していました。

なので法律の勉強の傍ら、ヨーロッパ、アメリカ、日本の古典を気の向くままに読んでいたと思います。

そんな中で、各国の文学作品を英語で読む授業に出会いました。

これが研究者を目指す大きな転機だったと思います。

この授業が内容もさることながら、英語学習的にも非常に良くて、扱う文学作品に出てくる知らない単語を全て覚えることが課題の一つにありました。

毎週読む範囲を決めてそこにある未知の英単語を覚えて授業の初めでテスト。

終わったら残りの時間は内容についてのディスカッション。

大学教員の圧倒的な知識量と分析力。

ここで英語学習のイロハや、文学・文化研究の面白さに触れたことで、結果として今があると思います。

読んだ作家は、メルヴィル、ポー、ナボコフ、カミュ、カフカ、ドストエフスキー、紫式部などでしょうか。

ようやく研究者の卵っぽくなってきたな!!!!

実はこの間あれだけ狂ったように読んでいたラノベは一切読まなくなっていました。多分大二病を発症したからだと思います。


結果として、大学院では法学部から文学部への見事な転身を果たした私はゴリゴリと研究に邁進するようになったのでした。

大学院では徹底的に文学作品の読み方や批評理論の作品分析への応用などを叩き込まれましたが、これについてはいずれまた別の機会に。

ちなみに大学、大学院の間も謎の創作は続けており、大抵設定を考えて、5000字くらい書いて飽きてやめるということを繰り返していました。

一回、博士浪人してプー太郎をしている最中にディストピア小説を書き上げて、何かの雑誌に応募しましたが、当然のごとく落選しました。

よかった、世に出回らなくて本当によかった。



そんな感じで、今回はアメリカで人文系の博士課程にいる私が自身の読書体験について書いてみました。

こういう人が人文系の研究者目指してるんだなーという理解の助けになればいいなと思います。




あれ、こいつただのオタクじゃね?って思ったそこの君。

君のような勘のいいガキは嫌いだよ。


ではまた次回の記事で。(暗黒微笑)


Harry


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