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祓い屋さん

「俺は、祓い屋じゃないぞ」
オンラインの画面越しに、先生の仏頂面。

繋がった途端で、リアクションに困っていると、

「依頼内容と違うにもほどがあるだろう!」
と続けた後は、いつものボヤキ。

「でも、祓ったんでしょう?」

それはまあ、と口籠もる。どう祓ったかは絶対に言わない。
思い出したくないか、言語化が面倒か、私には教えたくないか・・・

たぶん、私向きではないのだろう。

教えたければ、こうスキャンしてだなあ、
とか何とか、嬉しそうにさっさと言葉を紡いでる。

部屋のカーテンが、ほんのわずかだけど揺れた。
昼間、窓を開けてキチンと閉めていなかったのかも。

ここ数日、深夜に風が強い。
胸もざわつくし、疲れているのかな。

「仏教美術の講義で何かあったか?」

先生には、大学院での厄介なクラスメイトのことは話していない。

「履修科目まで、さすがですね」

昨年の夏、バンコクからヒーリングを
してくれた時のことを思い出す。

最近、甘いものを食べすぎていないか?
お菓子、いや果物か、と終了後にメールを貰って、
恥ずかしくてドギマギしたのだ。

大好きな桃を、お得に買えるお店を見つけて、
ついつい、毎日数個づつ食べ続けていた。

誤魔化すのは嫌だから正直に伝えたら、
なにごとも過剰摂取は良くないぞ、と返ってきて、
次の日から、あわてて控えたのを覚えている。

「セルフヒーリングもしているし」
そう続けながら、ノートを画面越しに見せた。

先生は、一瞬何か言いたそうだったけれど、
どうやら携帯の着信が鳴ったようで、

「窓は、ちゃんと閉めろよ」

と言うと、オフラインになった。

風は、ますます強くなってきた。
ベッドに潜り込む。

大学の学食から、ゼミの仲間と出てくる私がいる。

何だろう、体がだるい。
誰かが、私をじっと見てるような気がする。

これは夢?

みんな何を笑っているの。
友人たちに囲まれながらドアから出てゆく。

誰かが私の耳元でささやく。
あの人って・・・ああ、本当ね、と私。

少し罪悪感。

視線が強くなる。胸が苦しい・・・

ドアが閉まるのがわかる、ああ良かった!
ここから離れられる。

その瞬間、何かがドアの隙間から、
ものすごい速さで飛んできた。

体が動かない。ソレが胸をめがけてきた瞬間、
ガッと牙のある生き物が、ソレを咥えて消えていった。

目が覚めて、はあはあと息を数回吐く。
今のは、白い竜?・・・先生。

言動に気をつけなさい、声が聴こえた。

ふっと思って、SNSを開くと、
先生のつぶやきが目に飛び込んでくる。

月が水星・火星と凶角、深呼吸を。

深い呼吸を意識する。1回、2回・・・
驚くほど落ち着いてきて、まるで憑き物が落ちたよう。

メッセージを開く。

『払い屋さんへ、さっきは、ありがとうございます。
ご無事の帰国を待っています。羽月*』

送信済み。
そして既読。

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読んで下さり、ありがとうございます。

はじめて、みんなのフォトギャラリーを利用させて頂きました。
今回、使用させて頂いたのは「Tome館長さん」のステキな作品です。
ゆっくりですが、noteの活用や記事の幅を広げられたら嬉しいです。

今日も1日お疲れ様でした♡

Harmony*