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マンチェスターの音楽ワークショップ

英国のマンチェスターには2度足を運んでいる。街のサイズ感も含め、私の好きな場所の一つである。最初に訪問したのは、マンチェスター・カメラータというオーケストラが行うワークショップ実践を観に行くためだった。2015年8月のことになる。

マンチェスター・カメラータは、当時、高齢者やホームレスの人、若者など様々な対象にワークショップを行っていた。

これを知ったきっかけは、ブリティッシュ・カウンシルである。2015年春、ブリティッシュ・カウンシルから私に、高齢者向けの文化活動(当時から<ラーニングフルエイジング>プロジェクトをしていた)の話題提供をしてもらえないかという打診があった。訪日する高齢者向けの文化活動をする団体の中にこのオーケストラもあって、その際に意見交換をしたのがきっかけである。そこで当時の担当だったNick Ponsillo 氏と意気投合し、現地の視察に出かけた。

プロのオーケストラメンバーが実施するワークショップということで、どんな敷居の高いものかと思っていたが、最初に観たワークショップはいろいろなものをフロッタージュ(こすりだして描く)する活動をしていて難しさは感じられなかった。参加者は中高年という感じだったが、中には障害のある方も入っていた。

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ランチをし移動し、ワークショップの打ち合わせに同行した。

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フロッタージュした絵をもとに詩を創り、歌にして行く活動をしていた。

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後日、別のワークショップを観た。今度は、オペラを創るという活動で、毎週集まり、8週間かけて(これは日本だとなかなか企業の開発ワークショップでもない限り聴いたことの無いスケール)オペラを創るのだという。その間の1回に参加させていただいた。会場はこんな風情のある建物だった。

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参加者からもらった言葉で詩を紡いで行き、それに作曲家、チェリスト、フルーティストが音楽を即興でつけていく。

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歌詞と曲ができたら、パフォーマンスを考える。

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実際に参加されていたのは、認知症初期の方とその介護者。

下の写真は実践者(左)と参加者(右)。音楽は認知症の改善に役立つと、マンチェスター・カメラータの人は言う。

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興味深かったのは、これらのプロセスを記録している、エスノグラファー(記録係)が居たことだ。ワークショップによっては大学と連携し評価を行っているが、それはいつもではなく、通常は独立したエスノグラファーに依頼をし、様子を記録し評価を行っているのだそうだ。これらの評価は、次にファンドを取ってくるときに重要な意味を持つ。日本では、まだまだワークショップの「評価」は誰のためにする?というときに、評価という言葉にネガティブな意識を持っている人もいるように思う。しかし、実践を評価するということは、実践者そのものを守り、育てるためにあるものだと私は思う。そういう意味で、面白い仕組みだなと思った。


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