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摂食障害の長い長いトンネルを抜けて~元摂食障害当事者からのメッセージ~63


でも、私は一人じゃない。寄り添って、親身になって、一緒になって戦ってくれる大切な仲間がいる。

「私、過食嘔吐をやめたい。絶対に諦めない・・・」

今夜も、月の光が眩しいくらいに美しく輝いていた。

どうしても起き上がることが出来なくて、急に会社を休んだ日以来、再び御宿駅のホームに立っていた。

お母さんに見つかると、怒られるから内緒だよ・・・

今は亡きおばあちゃんだって、きっと天国から必死に応援してくれているはず・・・あの日、気が付いたら御宿駅のホームに降りていたことが、どこかで何かが繋がっているような気がした。どこまでも続く海岸線、真っ白な砂浜、それに童謡「月の沙漠」の記念像。そのどれもが、私の味方だと思いたかった。そしておばあちゃんも、きっと応援してくれているはずだと信じたかった。

「ねえ、おばあちゃん。私ね、何となく痩せたいなぁ、って思ってダイエット始めたの。そしたらね、痩せたい気持ちが暴走しちゃってね、どんどん痩せたくなって、実際にどんどん痩せていったの。でもね、多分無理な食事制限のせいで、今度は食べたい気持ちが暴走しちゃったの。自分で自分の食欲が抑えられなくなっちゃってね。痩せたいのに食べたい、みたいになっちゃって。おかしいよね。それでね、ある時お酒飲み過ぎて、気持ち悪くて吐いちゃったの。そしたらね、それからたくさん食べて吐くようになっちゃって・・・そういうの、過食嘔吐って言うんだって。病気なんだって。だからね、今専門の人、お医者さんじゃないんだけどね、すごく詳しい人にいろいろとアドバイスしてもらってね、昔みたいに普通に、みんなで楽しく食べて、美味しいって言えるように、あれこれ試しているの。たくさん食べて吐いたりしないように、リハビリしてるの。普通に食べられないなんて、そんな当たり前のことが出来ないなんて、おかしいよね?でもね、私、今必死になって普通に食べる練習してるの。だからね、今までみたいにおばあちゃんと一緒に楽しく食事出来るようになったら、またみんなでお腹いっぱい美味しいものを食べようね、約束してね・・・」

あの日と同じコンビニに寄った。今日は、私がおばあちゃんに500円分のお菓子を買ってあげよう・・・

「おばあちゃん、500円まで選んでいいんだからね」

おばあちゃんは、確か甘い物には目がなかった。大福、どら焼き、ええっと・・・塩飴って、コンビニにあるのかな?おせんべいも好きだったけど、亡くなる少し前には、(歯が痛くってねぇ・・・)とか言って、あんまり食べてなかったっけ。そうだ、甘栗ならあるかな・・・

おばあちゃんの好みに合うものを、コンビニで500円分買うのはちょっと無理があったかもしれない。それでも何とか500円近く買って、店を後にした。

あの日と同じように、海が見えてきた。海に近づくにつれて、真っ白な砂浜が目の前に広がっていった。眩しくて、目を瞑ってしまいそうなくらい、砂の一粒一粒がキラキラと輝いていた・・・そう、御宿の海は、変わらず私を迎え入れてくれた。

「おばあちゃんのために買ったお菓子だけど、おばあちゃん、今日はおばあちゃんのことを思って、私が大切にいただくね」

大福、どら焼き、甘栗・・・どれも糖質まみれだけど、今日は、今日だけでも一つ一つ、大切に味わって、美味しい、って言って食べたかった。

「おばあちゃん、あんこって、何でこんなに美味しいんだろうね・・・甘くて、口の中でとろけて、もう最高に美味しいね!」


今日もありがとうございます。


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