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風何(ふうか)
2022年7月21日 19:55
※ ふと窓の外を見てみると、激しく地面を打つように雨が降っていて、灰色の雲が目に見えるくらいの速さで流れている。わたしはもっと間近で降りしきる雨を見たいと思って、窓を開け、ベランダに出る。けれどもわたしが実際ベランダに足を踏み入れると、降り始めたときと同じくらい唐突に雨は止んでしまって、ただ雨の匂いだけが辺りに漂っていた。わたしはほとんど呆然としたまま、いつの間にか綺麗に赤く映え
2022年6月24日 19:47
休日に当てもなく街中を歩いていると、わたしは偶然ひとつの喫茶店を見つけて、特にすることもなかったわたしはそのまま店内に入っていった。外は煌びやかな太陽が今も燦々と照り付けているはずなのに、店内はその外の風景がまるで嘘であるかのように仄暗い雰囲気を醸し出していた。辺りを見渡すと店内にいる客はわたしひとりだけで、あとはカウンターのすぐ近くにひとり店主が佇んでいるだけだった。 わたしはそのとき、やっ
2022年6月23日 22:52
夜になるとぼくはひとりでベランダに出る。半袖で出られるくらいの外気が既に辺りを漂っていて、ああ、もうすぐ夏がやってくるのだと、ぼくは自らの肌をもって実感した。けれども季節というのは、所詮、ぼくにとってはただの付属品でしかないのだ。だって、夜になってベランダに出ると、必ず彼がいるから。彼がいる間、いくら年月が経とうが、いくら季節が巡ろうが、きっとぼくは十九歳のままなのだ。 風が吹き抜けて、木々に
2022年6月12日 00:20
小さな頃、夢を見るのが怖かった。眼を閉じて、夢の世界に入って、そのなかではきっと会いたくない人に会うんだろうだとか、得体のしれない何かに襲われるんだろうだとか、そんなことを想像し始めると、幼い頃のわたしの目はたちまち冴えてきてしまうのだった。そのせいでいつだって夜が長く感じた。外で鳴く虫の声や、路上を走る車の音ばかりが耳に残った。ベランダの外から見える街灯のオレンジばかりが目に映った。そうして眠