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H a p p a n o U p d a t e s - No.255

10月の葉っぱの坑夫の更新情報です。
・「作曲する女たち」プロジェクトがスタートしました。第1回は、19世紀生まれのラディ・ブリテン(テキサスのカウガール)と、20世紀生まれのオーガスタ・リード・トーマス(作曲家かどうか、決めるのは自分)の2人です。
・最近思ったこと、考えたこと
タイトル画像:作曲家メアリー・ハウ(1882年~1964年)の手

作曲する女たち
【小評伝】作曲する女たち(19世紀生まれ)
テキサスのカウガール:Radie Britain
【インタビュー】作曲する女たち(20世紀生まれ)
オーガスタ・リード・トーマス(作曲家かどうか、決めるのは自分)

インタビュアー [ブルース・ダフィー] 紹介
「作曲する女たち」プロジェクトについて

評伝はマデリーン・ゴスの"Modern Music-Makers"より日本語訳、インタビ
ューはブルース・ダフィーのサイトからの翻訳・抜粋です。(訳:だいこくかずえ)

ラディ・ブリテンが1899年生まれ、オーガスタ・リード・トーマスが1964年生まれ、と半世紀を隔てて作曲家として生きた(生きている)二人。年代を隔ててはいますが、作曲を仕事にする(できる)女性が少ないという意味では、今も昔も大きな違いはありません。いや、もちろん、画期的に増えているとは言えるのですが。
ブリテンの時代は、アメリカの作曲家はヨーロッパで学ぶことが何より大事で、ブリテンもフランスやドイツで学んでいます。クラシック音楽において後発のアメリカは、歴史ある「本場」に行って多くの知識や技術を吸収する必要があったようです。
トーマスの時代になると、アメリカの大学や音楽院で学ぶことが主流になったようで、そこが半世紀の違いに現れています。インタビュアーのブルース・ダフィーに、女性であることで何か違いが生まれるか、と聞かれて、トーマスは「創作に性別はない……たまたま女性で、たまたま金髪で、たまたま1時間後に飛行機に乗らなければならないということです」と答えています。

インタビュアーのブルース・ダフィーは武満徹内田光子にもインタビューしているASCAP・ディームズ・テイラー放送賞を受賞している著名な元ブロードキャスターです。1600人を超える独占インタビューには、ダニエル・バレンボイム、マウリツィオ・ポリーニ、スティーブ・ライヒ、ジョン・ケージなど名だたる音楽家が名を連ねていますが、無名に近い素晴らしい音楽家にも同時に注目しています(そこがまたいい!)。
「会話(conversation)」と本人が言っているように、専門的なことを追求するというより、もう少し広い意味での社会にとっての音楽の役割や、聴衆と音楽家の関係について、インタビュイーが音楽家としてどのように生きているかといった、普遍的な内容と話題が大半です。
インタビューは主としてシカゴのラジオ局で放送されたもので、のちにブルースがテキストに書き下ろしてウェブで公開しています(現在も進行中)。ラジオ番組内では、音楽をかけながらインタビューの抜粋を流していたようで、テキスト化する際には、ブルースによる紹介文や写真、手紙などの資料を加えて、インタビューの会話全体を掲載しています。

【小評伝】は、マデリーン・ゴス による500ページの大部の著作『Modern Music-Makers』から選んだものです。この本 ではチャールズ・アイブス、ヴィジル・トマソン、ロイ・ハリス、ロジャー・セッションズ、サミュエル・バーバー、レナード・バーンスタイン、アーロン・コープランド、ルイーズ・タルマなど37人のアメリカの作曲家が取り上げ られています。形式は通常の文章ですが、おそらくインタビューしたものを記事にまとめたと思われます。1952年出版(New York E.P.Dutton & Company, Inc.刊)

□ 最近思ったこと、考えたこと(happano journal)
10.05/23 「性別」にまつわる諸問題:呼称とかセルフ IDとかパス度とか
10.19/23 「性別」にまつわる諸問題<2>:第3、第4、第5の性とは? (男女二元論を超えて)

『作曲する女たち』プロジェクトをはじめるに当たって、「性別」について改めて考えざるを得ないところあり、この「性別にまつわる諸問題」を2回にわたって書きました。

男とか女とかといった問題はもう過去のことで、現在は話題にする意味などないのか、と言えば世界はそうなってはいません。歴史や過去の事例からまだ学ぶことはあり、そこから未来につながるヒントが得られるかもしれない。そう考えたことがこのプロジェクトをはじめた理由の一つです。
しかし性別の問題を見ていくと、さらなる課題もわかってきました。問題は「男女の性別分け」のみにあるのではない、といったことです。そこからトランスジェンダーの人々がどのように生きているか、彼らと社会との関係はどうなっているのか、に興味が進んでいきました。
初回に想像の範囲で書いたことを<2>では訂正し、わたし自身が考えを改めています。

Web Press 葉っぱの坑夫/エディター大黒和恵/editor@happano.org

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