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父が逝って9度目の4月が終わろうとしている。 4月のうちに父の最期についての記事を投稿したいと思いながら、溢れるものが多すぎて何をどう纏めていこうか思いあぐねて今日まで来てしまった。 60年も生きて来たのに、8月31日に慌てて読書感想文を書いている子供のようだが、100点満点だと思った父の逝き方を記しておこうと思う。 父が入院したのは、2014年の節分の日だった。 数年前から透析をしていた父だったが、特に寝込んでいた訳でもなく、週に2回の病院通いをしながらも静かな余生を送
これは自分のために書いているのかも しれない。 きっと自分が楽になるために。 そうすることがいいことなのか どうなのかわからない。 SNS的でなにかを書くということ その向こうに誰かが読んでいる ということにまだ不慣れなのかも しれない。 とりわけ家族について書くことは なんども自問してしまう。 人はいつか記憶を失うものだし。 そばで暮らしている大切な人が 覚えてほしいことを忘れてしまう ことに今年からずっと直面している。 時々、記憶が揺らぐから
三月最初の週末、両親に会いに行った。 少し春めいてきた休日の電車の旅は、車窓も車内もおだやかでのんびりしている。 今回のビールのお供は、とろたく巻き。うまい。大正解。 この至福の時間だけでも、出かけてよかったと思う。 家に入ると、雛人形が飾ってあった。 元々は豪華絢爛七段飾りだったが、両親が地方移住する際にお内裏様とお雛様だけとなった。 私の初節句のために祖父母が用意してくれたもので、人形の街として有名な埼玉の岩槻まで買いに行ってくれたそうだ。生まれたばかりの私に注がれた
大変お恥ずかしい話なのだが、今も、両親からお年玉をもらっている。 社会人になってからもずっと。今年も。 四十路を過ぎた娘が、七十代の親からお年玉をもらう。 定収入のある娘が、年金暮らしの親からお年玉をもらう。 都心で気ままに暮らす娘が、地方で慎ましく暮らす親からお年玉をもらう。 どこをどう切り取っても、世間的にアウトなのは明確だ。 毎年、「もういらないよ」と断ろうとするのだが、「いいからいいから」と強引に握らされる。「あげられるうちは、あげたいから」と。 もちろん、もら
昨日、自分が果たして「一昨日の鍋の残りを食べた」だけだったか問題について語って参りましょう。 更に、仕事納めで事務所はそこそこ小綺麗に出来ていたけど、例のアレはどうしたの?問題についても、見て行きましょう。 (何故に第三者目線) 第一の問題として、昨日、実家に届くと予告されていた「素敵な物」とは? 仕事をしていて16時を回った辺りでも実家から音沙汰無しなので、送り主さんに耳打ちされていたけれど、実家の両親は内緒にして「素敵な物」を葬り去るのではあるまいか?と、一抹の不安
「○○のおばあちゃんって北条政子っぽいよね」 私がまだ小学生であった頃。社会科で鎌倉時代について勉強している時に、不意に友人にこんな事を言われた。 皆心を一にして奉るべし。これ最期の詞なり。 ということばで始まるこの口上は、鎌倉の武家政権と京都の公家政権が争いとなった承久の乱において行った北条政子の演説の始まりにあたり、歴史の教科書でも取り上げられていたと記憶している。 私は友人のことばを聞いて、教科書に載っていた北条政子の絵を眺めながら「なるほど、言いたいことはわかる
夜7時を過ぎて電車に乗ると、 車内は一家の主人であろう男性達が 8割を占めていた。 この世は男性の方が多いと思わされるほどだ。 着込んだ男性4人が対面式ボックス席に 窮屈そうに座っている。 そのうち1人が降りたので、 女1人で混じって座った。 前の男性が考え事でもしているらしく、 目を閉じ眉間にしわを寄せ、何かを数えるように指を折っては、また,数え直して指を折る。 その左手薬指に結婚指輪がはめられている。 50代半ばに見える、ごく普通のおじ様。 周りを見ると、半数ほどの
駅前の広場で、スピッツのチェリーを歌っている人がいた。 小雨が降っていて、私はミスタードーナツの詰め合わせを手に家路についていた。入籍前夜のこと。 無意識に歌詞を反芻する。小さな幸せを大切に暮らすって、生きていくうえでいちばん大事なことかもしれない。感傷的な気分に浸りつつ、内心まじめに頷いていた。ないものねだりばかりしていたら、いつまで経っても満たされないもんなぁ。 「遅くなったけど夜ごはんどうしようか?」 同居人のLINEに、「ミスド選び放題だよ!」と返したら、
リビングの扉を開けると 部屋に、西日が差していました。 斜めの日差しが、 波打つレースカーテンの縦縞を通過して ソファに、床に、光を投げています。 ワックスの効いた木目の床に 光が反射して、部屋全体が 明るい色をしています。 昼間、ついうたた寝をして 起きてみると すっかり夕方になっていたのです。 やさしく揉みほぐしたような 夕陽のぬくもり。 手のひらで受けるとそれは ふっくらとあたたかく、 肌の上に心地よく広がります。 リンゴをひとつ、剥きました。 長野生まれの品
くよくよしている。 本当に小さなことで、くよくよしている。 詳しい事情は割愛するけれど、小学三年生の息子が、悔し泣きしながら下校してきた。 話を聞くと、同級生から紙製の棒で頭をペシペシと叩かれることが頻繁にあり、やめて、と言ってもやめてもらえず、もういやだ、という気持ちが爆発したようだった。 かといって、相手の子のことが大嫌いかといえば、そういうわけでもないらしく、ペシペシ叩かれないときは、いっしょに話していて楽しくもあるんだという。 その話を聞いて考える。 わたしは、ど
先日、妻の両親と一緒に旅行に行ってきた。 妻の実家は東京にあって、私の住む埼玉の町からはさほど離れていない。1時間程度もあればすぐに行ける。なので、ひと月か、ふた月に一回くらいのペースで遊びに行かせてもらっている。お父さんもお母さんも健在で、私の子供である孫たちをとても可愛がってくれて、大変ありがたい。 さて、旅行は、お父さんお母さんのみならず、タイミングが合ったので、離れて暮らしている妻のお兄さん夫婦も一緒に行けることになった。このお兄さんと奥さんも、とても子供好きなの
澄んだ空の一端を紡いで 織り上げたような淡水色のドレス。 シフォンのヴェールを 幾重にも重ねてつくられたスカートには、 ガラスの粒が贅沢に、繊細に あしらわれています。 動き合わせて やわらかな煌めきがスカートの上を走り、 まるで 瞬く流星のようです。 私には勿体無いほどの その美しいドレスに身を包んで 前へ、前へ。 彼の肘に手をかけ 生花に彩られた会場の中を進みます。 十月の、透き通るような秋の日。 空の青と木々の緑に囲まれた式場で 私たちは ささやかな結婚式を挙げ