花屋 澄

さくらももこを敬愛する怠惰なOL🍨 三時のおやつとミット練習が好き🌸

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【小説】対岸の二人

第6回阿波しらさぎ文学賞 一次通過作品 対岸の二人 八年間、働いた銀行を辞めてきた。ずっと悩まされてきた歯痛に耐えかねて、知らない街の歯医者に駆け込んだときみたいに。 「しばらく家でゆっくりすることにしたけん」 連絡も寄こさずに神奈川から実家に戻ってきた娘に対して、母は鳩が豆鉄砲でも喰らったように 「ほれはかんまんけんど、……あんた仕事はどないしたん」 と、顔全体にフェイスパックを貼り付けた白塗りのお化けみたいな恰好で尋ねた。網戸越しに庭へと視線を向けると白柴の太郎が

    • ちいちゃんが教えてくれたこと

      私はDINKs思考である。 ※DINKsとは? 物心ついてから、自分の家庭環境が周りとは違うと気付いたので、 「お母さんになりたい」「子育てをしたい」「結婚をしたい」など 世間一般のライフイベントについて学生時代に夢を見たことが一度もない。 極端な例を出すと、虐待家庭が負の連鎖を起こしてしまうように家庭環境に著しい欠陥があった場合も、私は連鎖する可能性が高いと思っている。 ※あくまで私個人の体験に基づく私見なので、他の人に限ってはその限りではない。 早い話が、家庭環境に

      • 【中編】この感情に付ける、名前など(群像1次落ち作品)

        達也さんが、死んだ。 その日は珍しく、同じ課の同僚や上司も休暇を取っていたので残業にはならずに大学を後にしたことを覚えている。 学校という空間は、都市、田舎に関わらず四季の移り変わりを顕著に感じさせる場所だ。つい先日まで桜色の絨毯が床一面に敷かれていたはずなのに、入学式を終えて学舎に馴染んだ学生を目で追い切れないうちに季節は巡っていたらしい。いま、この瞬間には顔を顰めたくなるような銀杏の香りと、すでに散ってしまい雨に打たれてぐずぐずになってしまった汚らしい金木犀の成れの果てが

        有料
        130
        • ピンクの雪だるまと、カメレオン

          さくらラテ、カービィー、パンサー、レディ、林家ペー・パー。 上に挙げた単語の羅列で、連想する1つの色はなんでしょう? そう、〈ピンク〉である。 おそらく、素直な方の場合はちょうどいま散り際になっている桜の花びらの色を連想してくれたことだろう。 突然だが、私はピンクが嫌いだ。 その起源は、6歳の頃、母親が冬のセールで買ってきてくれたダッフルコートに遡る。うちの母親はピンクや赤色、レースに花柄などのいわゆる女性らしい色やモチーフが好きで、好んでそのようなデザインの洋服を私に着

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        【小説】対岸の二人

        マガジン

        • 【エッセイ】はなのかんづめ
          14本

        記事

          【散文+短歌】きらきら、きらい

          瀬生ゆう子さん・山田香ふみさん・桜庭紀子さんの歌集『Supplement vol.0』を拝見し、ガッツリ影響を受けて短歌熱に火がついた花屋です。 知らない駅に降り立ち、ふと足を止めたお花屋さんで素敵な花束を見つけて心を惹かれた少女のように。 湧き出た言葉たち(3月の散文日記+短歌)をこっそり書き留めたいと思います。 3月×日(月) 焼き立てのトーストの匂いと、窓を叩く雨の音で目覚めた月曜日。 白米過激派の母には珍しく今朝は洋食だ。 お気に入りのサンダルフォーのいちごジャム

          【散文+短歌】きらきら、きらい

          怠惰な人と、完璧な人

          私は、怠惰が主成分の人間だ。 もし、食事と娯楽、また基本的な設備(風呂やトイレ)を用意した出られない部屋に1週間閉じ込められたとしたら、喜んで引きこもるだろう。 サブスクの動画視聴サービスと読み放題の漫画さえあれば、こち亀と笑ぅせえるすまんのエンドレスリピートで1週間は余裕で時間を潰せる。 私の怠惰自慢はこれに止まらない。 見た目通り、繊細かつ低血圧なので(低血圧は本当)朝はすこぶる寝起きが悪く、起こされてもなかなか起きれない。 そうはいっても、社会人としての自覚はきちんと

          怠惰な人と、完璧な人

          勇者の剣を探さないでください

          ※今回はあまり健全な内容ではない、かつ中身のないエッセイなので、苦手な方や男性は気分を害する前にブラウザバックを推奨します※ 昨日のエッセイが思いがけず観覧数を伸ばしており、初めましての方からコメントまで頂けて、鼻が天狗ぐらいに延びている筆者です。 せっかくなので、今日も女性に向けた夜の話をしようと思う。 よく、女同士で飲み会をしているとアルコールがほどよく回ったころに、普段は物静かで大人しい女の子から下ネタがぶっ込まれることがある。 こういう時、男性陣なら初体験の話だっ

          勇者の剣を探さないでください

          嫉妬の色は、みどり色

          昔読んだ漫画にそう描いていたので、私はクリームソーダやメロンソーダを飲むたびに「ああ、自分はいま〈嫉妬〉を飲み干しているんだな」と思うことがある。 というわけで、先日知人と電話をしたときに嫉妬の話になったので、思考整理のために嫉妬について話したい。 私は、秋生まれの天秤座なのだが、誕生日占いの本には必ずと言っていいほど「嫉妬深い」けれど「束縛を嫌う」と書かれている。 つまりは、自分は束縛されたくないけれど他人に対しては「行動を律しろ」と要求する、理不尽極まりない性格であるら

          嫉妬の色は、みどり色

          長年続けている趣味や、特技はなんですか?

          たまに、初対面の人やマッチングアプリで出逢った人に表題の質問を訊かれる。 この質問、私にスポーツや勉学の才があれば「トリリンガルです」 「流体力学を少々」 「ダイビングのライセンスを持っています」「合気道で黒帯なんですよ」 など見栄えの良い特技を話すことができるのだが、生憎そういった才がないので、実はとても返答に困るのである。 それと言うのも、私が特技だと思っているものは一人ですることが難しく、環境が整っていないとお見せすることもできないものだからだ。 (また、仮にその場で披

          長年続けている趣味や、特技はなんですか?

          辞めたい習慣

          小さい頃からよく口の中にものをいれる子だった。 アンパンマンのぬいぐるみから、ティッシュ、自分の親指に至るまで1歳の頃には常に口の中でなにかを咥えている子どもだったらしい。 さて、そんな私だからだろうか。 大人になった今でも続いている悪しき習慣が存在する。 無意識に手足の爪を噛んでしまうことと、眉毛や睫毛を抜いてしまうことである。 ここでタチが悪いのは、いずれの習慣も人前ではしないということ。自分一人の空間(トイレや自室など)でゴミ箱を膝にのせてガジガジと噛むのである。足の

          辞めたい習慣

          お嫁さんになりたかった私が、アナウンサー試験を受けるまで

          こちらのアンケートにご協力いただきました皆さまありがとうございました! 無事に集計が済みましたので、「婚約破棄からのアナウンサー試験」の思い出を4割のフィクションと6割のコメディをええ感じにブレンドして綴ろうと思います。 しょうらいのゆめは、およめさん。 私の一人称が、まだはなちゃんだったころ。 どうやら、将来の夢は花嫁さんだったらしい。 自宅の押し入れに仕舞われていたガラクタ、もといお誕生日会での図工作品(手形と将来の夢を書いた紙のメダル)には、担任のこずえせんせいの綺

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          初恋と、カップケーキ

          私は、恋愛小説が好きだ。 おそらく文章を書き始めたきっかけも、島本理生さんの「ナラタージュ」に衝撃を受けたことが大きな要因だった。 ただ、曲がりなりにも、こういうストーリーが好きだという「好きの傾向」があって。(偏りとも言う)恋愛小説であればなんでもござれ、ってわけではない。 私が好きな物語のパターンは、主人公(ヒロイン)とパートナーが社会的に結ばれることがなく、精神的な繋がりを残したまま互いに別々の人生を生きていくというもの。 『ごんぎつね』 『一つの花』 『舞姫』 『スー

          初恋と、カップケーキ

          30歳独身OL、66歳の実母と暮らすってよ

          母があの家を飛び出したのは、2023年9月のことだ。 同年8月に肺がんの手術の付き添いで、約5年ぶりに 実家に帰ったときに実兄(実家暮らし、寅年)と母の関係性が異様なもので【状況説明が長すぎるので割愛】、あまりにも健やかな環境だとは思えなかったので、「ここからすぐに出る準備をして」と私は言った。 しかし、母はすぐに首を縦に振らなかったし、いくら周囲の人や、市役所の福祉課の人を巻き込んで話し合いを重ねても、兄だけを古い実家に残して自分ひとりが徳島から遠く離れた関東へ移住すると

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          蟒蛇の母さんと、バウムクーヘン

          わたしの母は、5年前に大病を患うまでは、信じられないほどの酒飲みだった。 いや、酒飲みなんて可愛らしい言葉で済ませられるほどのものではない。 蟒に蛇と書いて、蟒蛇(うわばみ) わたしにとって、母は蟒蛇だったのである。 毎日ロング缶(500ml)ビール2本を飲み干して、そこからは肴も無しに焼酎の水割り(2Lのタイプの焼酎パックを2-3日で開けてしまう)を睡魔が来るまで飲み続ける。 小学生のはなちゃんが、中学生のアタシが、高校生の私が、何度も静止しても、母を潤すお酒の循環を止め

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          レスキュー隊に早朝から叩き起こされた話

          2023年6月14日 AM7:13 ガンガンガンと玄関を叩く音と、ピンポンを連打される音で起こされた。 なにごとかと思い備え付けのTVモニターでドアの向こう側の様子を見てみると、担架や色んなものを持った「消防局」のロングコートを着た人が5~6人私の部屋を取り囲むようにしてマイムマイムの形で並んでいる。 こんな閑静な住宅街で殺人事件か、テロか、ただならぬ出来事でも起きたのかとビビッてカーディガンを着てドアを開けた。 「朝早くから失礼します~」 「今起きたばっかりなので、こんな

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          金魚に恋した夏の日

          *金魚に恋した夏の日 私は、雨上がりの虹と同じくらいに金魚を愛している。 と言っても、自宅や実家に金魚用の立派な水槽や温水管理用のポンプなど充実した設備があるわけではない。 一言でいえば "夏限定の金魚好き" なのだ。 初めて付き合った彼氏も、 二番目に付き合った彼氏も、 三年間付き合った彼氏も、 とにかく夏のデートの時には金魚が綺麗に展示されているスポットを探して欲しいとお願いし、都内はすみだ水族館から~日本橋、金魚坂、足を延ばして大阪の金魚cafeまで、ただひたすらに

          金魚に恋した夏の日