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5万円払ってnoteを添削してもらったら驚愕の一行が書かれてた話


5月4日。GW中の朝だった。

自然に目が覚めた朝の6時。布団の中でスマホをひらき、まだウトウトしている頭でnoteを眺めていたらこういう意味のタイトルが目に入ってきた。


「あなたのnote、添削します」


noterの中には「他の人が書いたnoteを添削しますよ!」という添削サービスをやっている人がいる。私も過去4人の人にお願いしてきた。なぜなら私は物書きとして一生レベルアップし続けたいからだ。


今回見つけた、「あなたのnote、添削します」というサービスを出している人は超超超あこがれの人だった。

もう意味不明なほどすごい実績を持つ現役のnoterで、100人に名前を言ったら99人は絶対に知っているというほどの超有名人。雲の上の人。その人のツイッターのフォロワーなんて、私の地元の人口より多いくらいだ。


この憧れのnoterが書いた過去のnoteをさかのぼって、一つひとつのnoteを読んでいたら見つけたのだった。「あなたのnote、添削します」という文字を。


「この人、添削サービスやってたのか」

と驚いたと同時に、瞬時にこう思った。「添削してほしい」って。そしてその添削サービスの申し込み概要に、こう書かれていた。

「ラスト1名です」


次の瞬間、微塵の躊躇も無く、一片の後悔も無く支払いボタンを押した。なぜなら添削サービスがラスイチだったからだ。そこに何のためらいもなかった。

値段は5万円だった。

私にとっては大金だ。ものすっごい大金だ。ものすっっっっっごい大金だ。ものすっごい大金だったけど「この人に添削してもらえる最後の人」になれるのなら、安いもんだと思った。


添削サービスに申し込んだ後、あらためて添削依頼のメールを送った。自分が普段どういう仕事をしているのか、どの作品を添削してほしいのか、添削したあと自分はどうなりたいのか、簡潔に短く要点だけを送った。


私がその人の大ファンであることは、あえて言わなかった。

多分だけど自分に向かって「ファンです!」って言ってくる人間のことを、この人はめちゃくちゃ嫌うだろうなと思ったから。好意は隠した上で淡々と短く簡潔な依頼メールをささっと送った。


ぶっちゃけ、むちゃくちゃ緊張した。

絶対に追い付いてやると目指している雲の上の人に直接メールを送るんだ。緊張しないわけがない。

メールを送った後、すぐに返信があった。その返信の最後にはこういう意味の言葉が書かれていた。

「初代創作大賞の受賞者の方のnoteを添削するなんてちょっと緊張します(笑)」

と。こっちが緊張しているというのに逆に向こうも緊張しているというのだった。


創作大賞とは日本最大級のコンテストのことだ。noteが毎年主催している超どでかいコンテスト。私は第一回創作大賞で優秀賞を受賞し、受賞作品は書籍化され全国書店に並んだ。

そのことは確かにとっっっっってもうれしかったし、今でも誇りに思っていることだ。


だけど、「初代創作大賞の受賞者の方のnoteを添削するなんてちょっと緊張します(笑)」という文字を見て一瞬だけ不安を覚えた。

「創作大賞の受賞者だからって緊張しちゃった結果、遠慮した生ぬるい添削を送られてきたらどうしよう……」

って。


いや、こんなことを考えるのはやめよう。

絶対にそういうことをする人じゃない。そこだけは自信を持って言える。「遠慮した生ぬるい添削を返すような人じゃない」って自信を持っていえる。私が最も尊敬している物書きの一人だもん。絶対にそんなマネはしない。絶対に、大丈夫。


そして翌日。

ものすごく濃厚な添削がメールで返ってきた。まさか添削が翌日に送られてくるとは思ってなかったので、ちょっとビックリした。だって申し込んだのはGW中だ。GWってことはその人も休みをとっているハズだ。だから添削はGW明けに来るんだと思っていた。


私はこの時、大阪に向かう新幹線の中にいた。GWで久々の休みだし、せっかくだから大阪にいる友達に会いに行こうと思って新幹線のぞみに乗った直後のことだった。


送られてきた添削は、予想をはるかに裏切る濃厚な内容だった。

これこそ本物の添削だ。

そう、思った。


「自分の文章を読んだ人にどうなってほしいのか」という私が定めた目的を瞬時に見抜き、一文いちぶんに私が込めた意図をすべてくみ取り、どの一行の何がよくて、どの一行が目的達成を阻害しているのかを丁寧に解説し、「こう書くともっと良くなりますよ」という見事なまでの修正後の文章がそこには書かれていた。


夢中で、読んだ。

新幹線の中で、前かがみになりながらスマホを握りしめて夢中で読んだ。

その人から添削のメールが届いたのは静岡を過ぎたあたりだったのに、気づいたら「次は~名古屋~」というアナウンスが流れていた。それくらい夢中になって読んでしまった。いや、まんまと読まされてしまった。

「読ませるなぁ~この人」

と、うなりながらむさぼるように文章を読んだ。


そしてその添削の最後。

そこには、私が今後「物書きとしてどうnoteを書いていけばいいのか」が書かれたパラグラフがあった。

そのパラグラフには、「こういうのはどうでしょう」「こういう文章を書くのもアリですね~」と、「私の」未来の話だというのにその人自身が楽しそうに語っていた。



そして、そのパラグラフの最後にこう書かれていた。

書くこといっぱいあって、楽しいですね~。

さぁ、何してあそぼっか。


一瞬フリーズした。

何にフリーズしたかってこの最後のセリフにフリーズしたのだ。



……なんか、聞いたことある。

私、このセリフ聞いたことある。この添削の最後に書かれている

「さぁ、何してあそぼっか」

っていうセリフ、私聞いたことあるぞ。



「どこで聞いたんだっけ」と考えた瞬間、ぶわっと思い出した。

二年前に私がnoteコンテストでグランプリを受賞した「別居婚を、8年間やってみた」っていうnote。

そのnoteのラストシーンに出てくる、私が書いた最後のセリフだ。



次の瞬間、こう思った。

「気が変わった」

って。気が変わったぞ。

「この人にいつか追いついてやる」って思ってたけど、気が変わった。

いつかじゃない。

3か月だ。3か月以内に、追いついてやる。

いや。追い越してやる。


見てろよちくしょうマジで大好きだよほんっとにそういうトコだよそういうトコほんっと尊敬してんだよ私の心の師匠だよ必ずぶちのめしてやるからな弟子としてできる師匠への恩返しは師匠を超えることなんだよ、3か月だ、3か月以内に必ず絶対にぶちのめしてやるからな見てろよほんとマジでそういうトコ本当にすごいよだから好きなんだよ添削を依頼してきた人の過去作品から引用した一行で添削を〆るとかもうオシャレすぎるだろうがイタリアンバルで出てくるよくわからないけど美味いエビのアヒージョかよここまでオシャレだともう意味わかんないよキラッキラのセンスが大爆発しすぎて光量がすごいんだよ眩しすぎるわ5億ルーメンくらいあるんじゃないのこれ。



と、思ったので私も本気を出して他の人のnoteを添削した。

実は私の職業は編集者だ。編集者をもう10年もやっている。つまり、普段は私「が」他の人の文章を添削する立場なのだ。

プロとしてここは負けるわけにいかねぇ。


良い意味で闘争心に火をつけられちゃったよ。

ふふっ、すごいでしょ、私の師匠(ドヤ顔)。


なんかもうやる気大爆発しちゃったよ。だから、本気出して私も他の人が書いた文章を添削してみた。添削したnoteのタイトルはこれ。

「創作大賞の応募作品を、プロの編集者が添削するとこうなる」

だ。

ガチの本気出したからたくさんのうれしいレビューをもらったよ。見てこれ。

ちょっと載せきれないからこの辺にしとくけど、みんなほんとにたくさんのレビューありがとうね。宝物にする。


ってことで、憧れの雲の上の人に添削を依頼した結果、闘争心が大爆発して本気で添削してみた。「これなら師匠に少し追い付けたっしょ」と自信を持って人前に出せる大傑作だ。絶対に読んでみてくれ後悔はさせん。思いっきり全力出してスッキリした。







あとがき


みんな登山したことある?

私、高尾山に登ったことあるんだけどさ。体力なさすぎて高尾山ですら結構しんどかったんだよね。


今回私が添削依頼した人はツイッターもやってるんだけど。たまに

「ツイッター上で他の人の文章を添削する」

っていう実況をやってるんだよね。その実況がとても楽しくて鍵垢からこっそり見てるんだけど。

なんか、ますます添削のレベル上がってるんだよね(笑)。



「私、師匠にちょっと追いつけたんじゃね?」

って、日々の努力の中でふと思うことがある。


でも、実際に師匠のツイッターを見に行くと、師匠自身がさらにレベルアップしててちょっと絶望するんだよね(笑)。

高尾山の頂上を目指して登山してるのに高尾山の標高がさらに高くなってて絶望するみたいな感じ。「もうすぐ頂上だと思ったのに!!」ってなるのよね。


でも、そういう所が好きなんだよなぁ~。

一生、追い抜くどころか追いつくことすらできないのかもしれない。

ちょっとだけ絶望はするけど、でもその絶望があるからこそ「じゃあもっと頑張ろっと♡」ってさらにレベルアップするための気力がわいてくるんだよね。


どうせ絶望するなら。

その絶望すら、物書きとしてレベルアップするために利用してやる。



一生、忘れないよ。

この人に添削してもらったこと。




私の、大切な宝物だ。






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藤原華|編集者
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