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ブナケン島の夢

時差ボケは、もう完全に治ったと思っていたのに、松本清張も真っ青並の超グロデスクな夢を見た。ブナケン島の初夜は、うるさくて眠れなかった。少し離れたバンガローの中国人が深夜までぼそぼそ話す声と、ヤモリのケラケラ笑う声、そして夫は猫の仕業だというが、木の板をパラパラ叩き合わせるような「クラックラッ」という音。あれが猫だというなら、化け猫しかありえないんじゃないか?

離島の三人姉妹の周辺で起こった奇怪な事件の最後は、真ん中の美女が腐りかけの生首を取り出して自白する夢で、そんなものを見せたのは、冬のブナケン島の仕業に違いない。

海坊主頭のイタリア人と、どう見ても二十代にしか見えないが実は五十歳の中国人女アイビーに、夕食に調理した鶏肉とココナッツのスープをおすそ分けしてもらったのは現実の話。アイビーは英語が苦手で、もう一人中国人男性が泊まっているが、中国語が分かるのは私と彼しかいないから、私にもやたらと話しかけてくる。
「鶏肉、おいしかった。ありがとう」というと、アイビーは
「でしょ。そのへんを闊歩してた鶏だから、格別新鮮なのよ」と自慢気にいって、私と彼女の間に座って食事していた、ベジタリアンのフランス人夫婦の顔をしかめさせた。

今朝は八時からダイビングの船が出るため、同乗してシュノーケリングする計画もあったが、寝付けない上に夜中に何度も目が覚めて、ベッドの上で今これを書いているが、とても半時間後に海に入る気分じゃない。どうせ何もすることがない、インドネシアの離れ島だ。ゆっくり惰眠でもして、時差ボケの頭をしずめてあげよう。海は穏やか過ぎて、魅惑的なのだけれど。

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