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天下五剣で最も美しい 三日月宗近

2019年9月 東京国立博物館で「国宝 太刀 銘三条 名物三日月宗近」が展示されていました。

三日月を初めて見たのは2018年に開催された京の刀展でした。刀なんてどれも同じだろうと思っていた私が衝撃を受けるほど美しく、日本刀を好きになるきっかけになった刀です。

三日月宗近(みかづき むねちか)は平安時代後期の山城国(京都)の刀鍛冶 三条宗近によって打たれました。

刀の鑑賞は姿から。
手元に近いところから茎にかけて強く反る腰反りで、逆に鋒近くは反りがほとんどない平安太刀らしい気品ある姿をしています。

刃長:80.0cm 反り:2.7cm (特別展京のかたな図録)

刃文の上に三日月の形をした模様が見えます。
この模様は打除け(うちのけ)と呼ばれ、焼入れの際に刃中に現れる働きのひとつです。

三日月宗近はこの打除けが「たなびく雲に浮かび上がる三日月を思わせる」ということから名づけられました。
(他にも打除けが多いからなど諸説ありますが、私は三日月に見える説が好きです。)

初めて見た時にとても感動したことを思い出します。
実物は写真の何百倍も美しいです。

上品な小鋒に帽子は小丸ごころに返る。
鍛えや刃文にも沸がよくつき潤って見えます。

千年以上前に作られたとは思えない美しさ。
こんなに綺麗なのに実戦で使われたという逸話もあります。

茎は雉子股形(きじももがた)
平安時代から鎌倉時代までの太刀によく見られる形です。

佩裏には「三条」の銘が切られています。
宗近の銘は「三条」と「宗近」の二通りがあります。

『日本名宝物語』では三日月宗近が絶賛されており、その文章が素敵すぎるので下記に引用させて頂きます。

「三条」の二字ーーこれへ刻み込まれたのが、永延年間だといふから、今から九百五十余年の昔、その陽の下を、光芒、水の滴るが如くにいよいよ冴えて、歴史と伝説を綴りこんで来た、刀壽千年、その奇しき姿である。
(日本名宝物語 第1輯  読売新聞社編 昭和4-5年発行 95p)

「水の滴るが如くにいよいよ冴えて」という表現が良いですね。三日月宗近の不思議な輝きがよく表現されていると思います。

三日月宗近は天下五剣で最も美しいといわれます。天下五剣とは日本刀の中でも特に名刀とされる5振の総称で、刀としての出来はもちろん物語性も考慮して選ばれているため大変個性的です。

【天下五剣】
・童子切安綱
・三日月宗近
・数珠丸恒次
・大典太光世
・鬼丸国綱

刀剣鑑賞を始める時はここから調べてみると面白いかもしれません。

参考文献
・日本名宝物語 第1輯  読売新聞社編 昭和4-5年発行 
・詳細刀剣名物帳 羽皐隠史著 大正8年増補版
・特別展京のかたな図録  読売新聞社,他発行 2018.9.29発行 
・物語で読む日本の刀剣150 イースト・プレス発行 2015.5.20

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