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小さな傷が、誰かの勇気を呼び覚ます。

「価値観が合う人と働きたい!」「共鳴できる仲間と一緒に熱狂したい!」
少年漫画のようなワクワクした楽しい働き方を、大人の社会で実現させるのは、そう簡単ではないですよね。

「失敗を恐れずに、本当に自分がいいと思っていることをやればいい」
理屈ではわかっているけど、人間関係のもつれや力不足で思った通りにいかないことがほとんどだと思います。

Hameeは東証一部上場にまで成長しましたが、その過程では価値観のずれから社員が去っていったこともあります。代表である樋口は今でも組織文化に課題を感じているようです。

取締役の比護も「失敗しか記憶にない」というほど、沢山のトライと失敗、会社の倒産も経験してきて、あらためて価値観を揃えることが大切だと言います。

この二人の会話の中から「どうやって同じ価値観に共鳴しながら働くことができるのか」ということを考えます。

ジャンプする会社のフラットな関係性が羨ましかった。

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PROFILE:比護 則良(ひご・のりよし) Hamee株式会社 取締役
1976年生まれ、スタートアップ企業のエンジニアとして、ホームページ制作、生産工場のシステム開発、大手ベンダーでネットワークドライバ開発、ECシステムの立ち上げを経験。その後Eコマースの会社の立ち上げメンバーとして新規事業の立ち上げを経て、2014年Hameeに入社。

比護:Hameeの印象は、入社前に見たコーポレートサイトに載っていた従業員がジャンプしている写真です。あの写真を見て「何なんだこの会社は。自由だな」っていう感覚がすごいあって、「ここで仕事ができて自分の能力を発揮できたらおもしろいだろうなー」と思っていました。

樋口さんと初めて会ったのは、取引先としての打ち合わせの場でした。同席したエンジニアの方が社長に対して言いたいことを言っているし、社長もしっかり認めている関係性を見て、それはそれは羨ましく見えました。

ー実際に幹部として活躍されてみて入社前の印象は変わりましたか?

比護:入社前の印象と比べて進化していると思います。最初は朝礼で全社員が円陣を組んでいるのを見て、オールドスタイルだなと思っていたのですが、だんだんそれがHameeのユニークな個性で、欠かせないものだと気づいていったんですよ。独特で、温かさみたいなのはずっと今でもあると思います。

今では朝礼の代わりにマネジメント層が朝の一言を文章で配信するなど、少しずつリモートワークに適した形に変わってます。人に対して優しさがある会社、自由な会社っていうイメージはずっとあって、そこは変えたくないです。僕が自由人なんで。

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樋口:比護さんが入社してから一年ぐらいは、あまり話したことがなくて、新幹線や街で会っても比護さんいるなーと遠巻きで見ている感じ。ちょっと怖そうで、正直、話かけづらかったです(笑)
昔の壮絶な話を聞いているうちに人情味を感じて、見え方が変わってきたと思います。

壮絶だったんですか?

比護:成功したって言えることよりも、失敗したことしか記憶にないんです。幼少期に週6野球漬けで、残りの1日も地方遠征で試合してたり、足が速くてお調子者だったので、友達の誕生日会にも沢山呼ばれるし、完璧にキテるなって。その時が人生で一番チヤホヤされていて、ある意味、燃え尽きちゃったんです(笑)

そこからは全部適当になっちゃって、20代半ばまで遊び呆けて、毎日夜起きて朝まで飲み歩いていました。母親が大病を患って、僕が三十歳の時に他界したんですが、当時の僕は痛みをこらえて頑張っていた母を気にもかけなくて、逃げるようにぶらぶらしていました。

いよいよ改心しなきゃダメだ、働こうと一大決心して、色々と就職活動をしましたが、こんな奴を採用してくるところはなく、やっと決まったところも内定を取り消されてしまいました。流石に見かねた僕の兄が、取引先の会社を紹介してくれました。

そこは経営状況が厳しく、真夏にエアコンをつけると怒られる会社でした。前日に濡らしたタオルを冷凍庫に入れて帰宅し、翌朝カチカチに凍ったタオルをねじり鉢巻にしてプログラムを書いていました。
生活も苦しく、ご飯を食べるのもギリギリで、毎日シーフードヌードルと赤飯のおにぎりを食べていました。でも働けることの喜びが勝って、苦しさは一切ありませんでした。

全てを掛けたプロダクトは、お客様が使ってくれても嬉しくなかった。

比護:その会社の経営が立ち行かなくなってきた頃、どうやって資本を得るかということに全てを賭けていました。ECのことなんて何も知らないのにスクラッチ開発で「ネクストエンジン」の競合サービスを短期間でリリースしようとして、3度意識を失って倒れました。

ネクストエンジン:楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazonなど複数のネットショップ・モールの受注、在庫、ページを一括管理し、発注、顧客管理、メール送信などの運営に必要な機能を揃えたクラウド(SaaS)型ECプラットフォーム

一応は資本を入れてもらえたのですが、当然そんな突貫で作ったものが良いサービスになるわけなくて、「ネクストエンジン」を超すどころか、お客様を持っていかれる一方でした。

自分でも品質が良くないことがわかってるから、お客様に僕らのプロダクトサービスを使ってもらうことは嬉しくありませんでした。次第にライバルの「ネクストエンジン」にスムーズに移行してもらうためのツールを作るようになりました(笑)

だから僕の中では、こんな事をやって上手くいきましたみたいな成功体験を持ち合わせていないんです。ほとんどが失敗やうまくいかないことばかり。

会社のことよりも、お客様のことを思う気持ちが強かったんですね。

比護:そうですね。お客様がすごく親切にしてくれて、僕らのサービスを購入してくれた事に対して、すごくありがたさを感じていました。

リリース直後のバグだらけの製品を年間で一括購入してくれた方々もいました。購入してくれた理由は、サービスを買ってくれたというよりも、人を買ってくれてたんだろうなという感覚がすごく強かったです。だから、僕らもやめる時は、受けた恩を人でしっかり返そうという感覚が強かったです。

人とのつながりが大義で、常に顧客ファーストだと思ってるし、そうしないと事業は続かないですしね。

人とのつながりを大切に思うようになったきっかけは何ですか?

比護:これはまさしく倒産です。いろんな人に退職勧告とか転勤とか無理難題をお願いしたり、当時の社長が辞めさせられているのも見てきたので、一緒に頑張ってきた人たちの生活を守れなかったっていうことに対する引け目はすごくあります。

人の生活を守るとか、経済的にしっかりと事業を伸ばしていくことの大切さは人一倍持ってるかもしれないですね。雇用を守ることによって、人は守れると思っています。

樋口: 比護さんは、自分で開発して、営業もして、お客様もサポートするという体験が大きいよね。

比護:ある時、システムを買ってくれた蕎麦屋さんのところに行ったら、蕎麦をご馳走してくれて、それから裏のこたつのある所に連れていかれて、僕らはこれからどうしたらいいのかと悩み相談をされたことがありました。

お手軽な蕎麦打ちキットを作って売ったらどうかと、一緒になって構想を膨らましたりしているうちに、お客様と寄り添っていかなきゃだめだよな、システムを売るだけではだめだよな、と考えるようになりました。

その頃の体験は、どのように「ネクストエンジン」に取り入れてるんですか?

比護:これまで「ネクストエンジン」では、忙しさや煩雑さを解消して、もっと販促など売れるための仕事しましょうと働くことだけにフォーカスして価値を投げかけてきました。しかし、これだけ多様な時代になってくると、価値にも様々な解釈が出てくるので、もっと未来に目を向けてみました。

お客様が何のために課題を解決して時間を大切にするのかと問い直して、自動化・最適化によって生まれた時間を有効活用する体験にこそ真の価値があると結論づけて「せかいであそぼ。」というキャッチコピーで表現しました。

一見すると相反するような言葉、例えば、「システムと人」とか、「自動と自由」とか、「効率と無駄」とか、「仕事と遊び」とか、「働くと楽しむ」とか、この一つひとつが性能と言われている「ネクストエンジン」を手にすることの真の価値・体験なんじゃないかなと思います。
「あそぼ」という言葉には、この体験の意味が込められています。

僕らは「Enjoy Commerce」という体験価値を伝播するために、「ネクストエンジン」を提供し続けているし、その体験価値を追求するためにECの自動化や効率化をお勧めしています。

樋口:お金も時間も健康もあって、じゃあ何するっていったら、世界で遊びたいじゃん。海外じゃなくても、そういうことしたいなって考えるよね。

自動化して一生懸命やることで、みんながもっといい仕事できるようになって、自分たちもそうだけど、ユーザーさんたちも世界で遊べるようになったらいいよね!そこに「クリエイティブ魂」を燃やそうって。

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PROFILE:樋口敦士(ひぐち・あつし)Hamee株式会社 代表取締役社長
1977年生まれ、地元高校卒業、大学3年時に創業。その後、モバイルアクセサリーのEコマース、メーカー、卸売から、ECのマネジメントシステム、海外展開へと事業領域を拡張しつつ、2015年4月に東証マザーズへ上場、2016年7月東証一部へと市場変更し、Hameeのプロダクト×データ×テクノロジー分野での更なる進化を目指している。

比護:「せかい」っていうのは、ワールドもそうだし、自分自身の世界観もそうだし、趣味のコミュニティもそう、それを表現するために、あえて平仮名で書いています。
そういう価値にこそ、そもそも最適化する意義があるよね、「ネクストエンジン」 を入れる意味があるよねと伝えていきたいし、サービスもそうなっていかないといけないと思っています。

なぜ「あそぶ」という言葉を選んだんですか?

比護:効率性を重視する仕事に対する自由で新しく楽しい概念と、全く新しいモノを生み出す原動力って解釈とか、これからの時代の人間が大切にすべきこと、という概念など、いろんなものを含んで「あそび」と表現しています。

目の前の課題が、あそびのために、自分の世界観のために紐づいていくと、僕らが提供するサービスやツールを導入する意味が、もっと色濃く見出してもらえると思います。

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▲「ネクストエンジン」のブランドサイト。

みんな自由な選択肢を持っている。もっと楽しもうよ。

どんな未来を目指しているんですか?

比護:一緒の会社に属する以上は、「これいいよね」、「これよくないよね」ぐらいの大きなくくりでの価値観をきちんと共鳴できる仲間と熱狂していたいと思います。

情熱を燃やして何かできるのって、そういう仲間じゃないとできないと思うので、そういう仲間でいたいし、そうなりたいなと思ってます。

今までの経験の中で、価値観が揃ってうまくいったとか、もしくは揃ってなかったから大変だったことはありますか?

比護:多分揃ってないことのほうが多いんじゃないかなっていう気はしますね。うまくいかなかったなって。倒産したこともそうだし、もう大変だったんで。

僕自身未熟だったということが一番大きい要因なんですが、陰湿ないじめがあったり、メールってこんなに長く書けるんだなっていう悩み相談をもらったりとか、絶対的に合ってなかったんだろうなっていう事しかないので、なかなか難しいですよね。

もしかしたら、ずっと追求し続けるものなのかもしれないし、どこかで着地するものじゃない気がしてます。価値観が揃っていることは大事だと思います。

そもそも、みんな縛られてるわけじゃなく、自由な選択肢を持っていると思います。その上で、「なぜわざわざここにいるの?」とみんなに問いたいし、いるならもっと楽しもうよって思いますね。

樋口:まだ会社が小さい頃は、人が来てくれるだけでもありがたいから、価値観とか見てられないよね。経験がないから、そういう意識もないし。Hameeも以前はグチャグチャだったよね。

ただ、今は時代が変わって、いい会社が増える中で、なぜここに居るのかを考えないともったいない。20年前はそんなこと言ってられなかったけど、今はそうじゃない。

価値観が合う人だけでやったらどれだけ幸せか、価値観が合う会社を見つけられる時代に、無理している人は機会ロスだよね。人生を無駄遣いしちゃっていると思う。

比護:37歳でHameeに来ました。Hameeで合わなかったら、僕はどこに行っても合わない人間なんだなって解釈しようと思ってたので、就職をするのは、ここで最後にしようと思っていました。

入った時に、怖そうに見えたのは、多分、信じられないぐらい必死だったんですよ。年齢的にも早く自分の価値を出さないとって思っていたので、めちゃくちゃやってました。

小さな傷が、誰かの勇気を呼び覚ます。

Hameeに入ってから大きな失敗はしましたか?

比護:他社と本気で取り組んで、これで会社を変えてやるぜ!事業を変えてやるぜ!と思ってやったことは全然うまくいかないし、メディアも5〜6本出して、ほとんど知らず知らずに終わってるのが、いっぱいあるんです。広告もやったんですけど、これも知らず知らずのうちになくなって、正直、全然うまくいってない。沢山トライはしてるけど、芽が出てないなっていう感覚です。

それだけたくさんトライできる秘訣は何ですか?

比護:トライできない理由がわからないんですよね。やっちゃいけないことなんか一個もないし、怒られる事ってそんなにまずいことだっけ?って。

怒られたら嫌だなって思う感覚が僕にないんですよね。注目されてるじゃんみたいな感覚の方が強いので、そこに対してネガティブなことを思ってないから、できない人の考えって何なんだろう?怒られたくないっていう考えなのかな?とか、その感覚の方が強いです。

みんなにも言ってるんですけど、自分が会社や事業のためだと思って全力でやることなら誰も否定しないよって。そう思ってやった事なら、結果がどうだって別に怒ったりしないし、やればいいだけっていう感覚なんですよね。

そう思えるようになったきっかけは何ですか?

比護:この思考自体はずっとあるんですよね。少年野球をやってた時からずっとかもしれない。打ちたかったら素振りすればいいだけだし、零細企業に入った時も、俺が売れるものを作ればいいだけだって思ってましたし。作れなかったんですけど。
やればいいだけ、別に大したことじゃないっていうのはずっと思ってます。

ただ僕は圧倒的に打席に立つ数が多い性格なので、そのぶんたくさん怒られるし、たくさん失敗するので、必然的に目立ってくるんですよね。

なので、成功したかったら目立てばいいのにとメンバーにも「どうしちゃった?最近目立たないね、失敗してる?」みたいな話はよくします。

樋口:そういうところは、比護さんに良い刺激もらったと思います。新規事業とか必要だけど、会社の柱になるレベルじゃないとやりたくなかったんです。「それより先にやることあるじゃん。先に足元固めてから」というベースの思想がある中で、比護さんがしょっちゅう新しいことをやりたがるから、まだ早いんじゃないって。

比護さんと接するうちに、小粒だと思っていても、早く失敗すればいいと思えるようになりました。比護さんの影響はありますね。それまでは、そういうのを良しとしてなかったのかもしれない。「新しい事業作ろう!」と言っておきながら、「それは難しいんじゃない?」ってなっていました。

比護:小さい傷をたくさん負うっていうことは、すごく大事なことだと思ってるので、特に若い人たちには強く伝えたいです。心が折れるような傷を負う前に、もっとたくさん小さい傷を負って、たくましくなりなよって。それが経験値だと思ってます。

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時代と共に過酷な労働環境は減る中で、どうすれば、たくましくなる経験を積めると思いますか?

比護:例えば「ネクストエンジン」に携わる新卒の社員は、お客様に接する機会を持っています。顧客のペインに、きちんと触れているんだとしたら、何とかしてあげたいって思わないですか?っていうだけのことだと思うんですよね。

なんとかしてあげたいなら動けばいいだけだよって。制約があると勝手に思っているだけで、制約はないんですよね。勝手に自分で行動を抑制しているだけで。それって本当に自分がいいことだと思っているんでしょ?やればいいじゃんって。

やる気にさせる人と、美味しくする人が会社をジャンプさせる。

お互いのことを一言で表すと?

比護:目指すべき人。いい意味で「人たらし」。人をやる気にさせるのが上手いと思ってます。これが経営者として大成した要因なのかなと。僕もそうありたいと思っています。

樋口:大成したいんだけどね。大成した感全くないんだけど、どうすればいい?

比護:そのビビリさが、大きな船を動かしていく上で、安定して成長してこれた良さだと思います。慎重って言えば聞こえはいいんですけど。15年もかけて上場できる会社って中々ないと思うんです。そんなに時間をかけたらほとんどの会社は駄目になると思うので。そこに樋口敦士のアイデンティティが出ていると思います。

社長から見た比護さんは?

樋口:昆布みたいに大事。なきゃ美味しくない。絶対必要で、欠かせない。でも、それがもったいないところでもある。本当は比護さんは昆布じゃいけない。いや、昆布であってもいいけど、大事な存在なんだっていう風に普段接してない人からも思ってもらえるようになるといい。

あと、不遇な20〜30年を過ごしてきて、子供の頃から、ずっとツイてない。
ツイてない原因は自分にもあるんだろうけど、今の比護さんはノッているから、そのまま波に乗って、ジャンプしている会社にしてっちゃってよ!

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さいごに

夢中で走り回って、転んで擦りむいて、泣きべそかいた次の瞬間には、楽しい事を見つけてケタケタ笑ってる。痛みや悔しさをバネにしながら、思い切り楽しむ姿が勇気をくれる。

そんな大人が増えれば、世の中は元気になっていくはず。

私たちHameeは「笑顔と入魂」で、クリエイティブ魂に火をつけます。
燃え盛るクリエイティブ魂が、世界をより良くすると信じて。

最近、小さな傷つくってますか?

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