見出し画像

スマホケースなんかに、ブランディングなんて必要なの!?

何をしてるか分からないが、気になる「インハウスデザイナー」の存在

「うちの会社には、スマホケース専門のブランディングチームがいるんだよ」
入社してすぐの頃、とある先輩社員からの一言。

今だから言います。
私はそのとき、言っている意味がまるで分かりませんでした。

だってスマホケースって、ただのスマホのカバーでしょ?
安くて、頑丈だったらそれで良いんじゃないの?

――それから数年の月日が流れ、やっとその先輩社員の言っている意味が分かったとき、私は過去の自分の無知を恥じました。

こんにちは。
Hameeでシステムエンジニアをしている巻嶋です。

Hameeという会社には二つの大きな柱があります。
一つはスマホ関連グッズを扱う部門です。スマホ関連グッズの中でも、もっとも力を入れている商品が、「iFace」というスマホケースです。

iFaceは、累計販売数1942万個のスマホケース(2020年12月現在)で、Hameeの主力商品です。先日発売されたiFace Reflectionは、「楽天上半期ランキング2020」の「スマートフォン・タブレットジャンル」部門で1位に輝きました。

二つの柱のもう一つは、私の携わる「ネクストエンジン」というクラウド(SaaS)型ECプラットフォームを作る部門です。私はシステムエンジニアなので、業務でiFaceに携わることはありませんが、社内にはたくさんのiFaceが飾られていますし、「iFace」という言葉を聞かない日は一日たりともありません。

画像9


そんなHameeのヒット商品であるiFace。
そのヒットの裏側には、どんな戦略があるのでしょうか。

聞けば、iFaceのブランディングチームには、インハウスデザイナーも加わりクリエティブを担当してるとのこと。インハウスデザイナーとはなんだか聞き慣れない職種。でもiFaceのヒットの裏側には彼らの活躍があるのかもしれません。さっそくHameeのインハウスデザイナー、持田渉さんにお話を伺ってきました。

「ブランディングを共創している」という感覚と想い

画像1

――こんにちは、持田さん。今日はよろしくおねがいします。

「よろしくおねがいします」

――持田さんの業務はiFaceの広告のデザインをしているとお聞きしました。他にはどんなことをされていますか?

「広告というパートとしての関わりだけではなく、iFaceのブランディングやプロモーションでのオンライン・オフライン各タッチポイントでのクリエティブディレクション、全体の設計、クオリティ管理です。
iFaceの他にAndMeshネクストエンジンのサイトのクリエイティブディレクションも行っています」

――持田さんは、Hameeのインハウスデザイナーとお聞きしています。そもそもインハウスデザイナーとは何でしょうか?

「デザイナーは大きく分けると二つの働き方があるんです。一つは、広告代理店やデザイン専門の制作会社に入って働く働き方。もう一つは、Hameeにおける私のように事業会社に所属してインハウスデザイナーとして働くという働き方です」

――この二つにはどのような違いがあるんですか?

「簡単に言うと、クライアント(他社)から仕事を受けるのか、社内でのクリエイティブ業務に関わるのかという違いです。

広告代理店やクリエイティブエージェンシーで働く場合、デザインを依頼するのは他の会社(メーカー)や個人事業主などのお客さん。彼らから依頼を受けてクリエイティブ業務やプロモーションの企画提案をするという形になります。もしくは自主的にプレゼンして仕事をもらったり……。一方で、インハウスデザイナーは、事業会社に所属していて、クリエイティブ領域全般を担当します」

画像2

――持田さんはセールスプロモーションの会社やクリエイティブエージェンシーで働いていたこともあると聞いています。どんなところで違いを感じますか?

「クライアントや案件によってケースは様々ですが、当時は大規模なプロモーションのプランニングの全体設計から制作までをトータルに提案・実行できる事もあれば、プロジェクト内で分断的な関わりでしか担当できなかったりすることもありました。
また決裁者にプレゼンできることもあれば、そうでない時もありました。クライアントの中で提案がどう進行して決裁されたのか、クライアントの最終フィードバックが最初の話と全然違う……など、過程や結果、何が良くて何が悪かったかが見えない事は沢山ありました。

当時はクライアントを多く担当しないといけない状況だったので、各クライアントと全てを共にして同期することは限界もありました。さらに制作会社としての売上も考えないといけない……。いやらしい話『金にならないところに時間かけるな』という側面も当然あります。となると、そもそも何の為にこれやってるの?自分のやってることが、本当にクライアントの先にいるユーザーや社会にとって役にたってるの?みたいな漠然としたモヤモヤもありました

Hameeに入ってからは、ブランドチームという組織横断的なチームの中でクリエイティブを担当させてもらっているので、各部署間での有機的な取り組みが出来ています。
『どうやったらもっとiFaceのブランド価値を高められるか』という点に今までの経験を活かしながら、ブランディングという観点から多角的かつ全体的に視座をあげつつ、さらに深掘りして取り組めています。全体のバリューチェーンに関われてるからこそです。そしてブランドとしてのミッションやビジョンを共有しています。クリエイティブを軸に参加してますが、単なるアウトプットだけの関わりでない、広い領域で各部署と連携してブランドを共創している感じがすごくありますね。ブランドの背骨を一緒に作っているというか。そこがインハウスとしての大きいやりがいと、それを進めるにあたって自身の成長にも繋がっていると思います」

ユーザーを安心させる「会社のイメージ」を作る仕事

画像3

――なるほど。広告代理店に勤めていたころとは、だいぶ関わり方が異なってくるのですね。ところで、「ブランディング」という言葉、私もよく聞く言葉ではあるのですが、実際のところ正しく意味が分かっていません。「ブランディング」とはそもそもなんでしょうか?
「ブランド」と聞くと、「ルイ・ヴィトン」や「エルメス」など、高級ブランドをイメージするのですが……。

「ブランディングって高級ブランドに限った話では全然ないですよ。『ブランディング』って言うと、なんか身構えちゃうけど。

例えば、安さが売りのドン・キホーテだって安さや品揃えという自社のストロングポイントを打ち出す上で、店内の売場設計や価格設定、そして親しみやすいイメージ戦略、店内のBGMに到るまで多岐に渡り設計してるはずです。ユーザーになんでも揃ってて、安いって感じてもらわないと伝わらないわけですから。ユニクロも価格や商品クオリティに加え、色々なコラボレーションによる付加価値をつけています。イメージ戦略においても、高いクオリティのクリエィティブを打ち出して上手く両軸でやってますよね。

個人的な定義かもしれないですけど、ブランディングとは、競合他社との差別化であり、商品開発からターゲティング〜価格設定、商品特徴の訴求方法やロゴやビジュアルにいたるまでのトータルなマーケティング戦略だと考えています。市場での競争力を高めることであって、高価格帯のプロダクトやサービスに限った事ではないと考えてます。商品開発からお客さんがその商品を取って買うまでの一連の流れの戦略や設計の話なんです。なのでクリエイティブはそこの戦略のパートでもあり、またユーザーのタッチポイントでのトータルイメージ設計に置いては全体に関わる重要な要素だと考えています」

――イメージ、ですか。

「コカ・コーラって、色で表すとどんなイメージがありますか?」

――赤ですね。

「そうですよね。ボトルのデザインもあのシルエットは独自であり、見ただけでコカ・コーラってわかりますよね。そして飲んだ時の爽快感や色のイメージ、ロゴなどがユーザーの頭の中に相当浸透していると思います。プロダクトの機能価値とイメージが浸透している。ユーザーに想起させられるというのはそれだけで商品・ブランドとしての強みです。
イメージできるもの = 知っているもの、認知ですから、すごく乱暴に言えば『知っている』というだけでもユーザーは安心して買えるんです。

日々の生活の中で、人ってものすごく多くの選択を強いられてるんです。コンビニで飲料水を買うだけでも、もの凄い商品の数から選択してますよね。
CMや広告で良いイメージを感じてもらい、気になってその商品を買った時に商品自体も良ければ、ファンになったりリピーターになる可能性はグッと高まりますが、そもそも商品自体が良くなければその次はないです。
『なんだよ、イメージはいいけどモノは良くないじゃん』って。『まぁ安いからいいや』なのか『この価格でコレ?』とか。当然逆もあって、商品はすごく良いのに、ちゃんとユーザーに訴求出来てない、伝わってない(プロモーション出来てない)というケースもあります。重要なのは、情緒的な価値(イメージ)と機能的な価値(プロダクト)は両軸でしっかり伴って高めていくことです」

――なるほど。つまりブランディングチームは、iFaceのイメージ、情緒的な価値とプロダクト自体の機能的な価値をしっかり訴求しブランド力を高め、ひいては、Hameeのブランド力にも繋がるお仕事なんですね。

画像8

全ての工程に関わることができるのが醍醐味

――ブランディング自体、アウトソーシングできない業務なのでしょうか?

「本質的な部分で言えば『出来ない』と思います。
外部のパートナー企業や制作会社にどこのパートをどうお願いするかによって変わってきますが、そもそもプロダクトやサービスを創出しているのは我々ですからブランディング自体を丸ごと外部にお願いするのは、例えると自分自身の生き方や自分のキャラクターを他の人に定義してもらうのと同じじゃないですか?これってちょっと違いますよね?

外部に委託するのは、社内でなにも継承・血肉化しずらいし、自分たちの歴史づくり〜自社の成長を他社に委ねるようなものです。アウトプットにおける工程自体は部分的に外部に委託することは出来ますが、それは枝葉の話であって、大きな幹・根幹となる部分を他社に担ってもらうのは違うんじゃないかなと思いますね。
自分たちがユーザーにまず何をすべきで、どうあるべきか、が大切だと思います」

最高の状態で出したい。だから意見を言いたくなる

――逆に、インハウスデザイナーだからこそ大変なこともあるんでしょうか?

「先ほどお話ししたように、代理店時代よりも全体で関わる事も多くなりますし、議論の内容が、良くも悪くも、深くある一面にフォーカスされがちだということです。会社の中ではさまざまな部署の人が、それぞれの目標・ミッションを持って働いています。
たとえば営業の部署は、当然売上を伸ばしたいと思っており、そのために様々な企画、提案をしています。私たちクリエイティブ側も、クリエイティブでブランドイメージ向上をリードして、結果売上が上がるようにしたいと思っていて、そこに議論の余地はありません。ただ、お互いがお互いの自領域での責務ややる事に固執しすぎてしまうと、近視眼的な議論になる可能性もあります。
『たしかにブランドのイメージは良くなるかもしれないけど、実際の売上に繋がるの?』や、逆に『その方法はたしかに売上が伸びるかもしれないけど、ブランドととしてそれはやるべきなの?』など、様々な観点があります。
そうなると判断基準として、ブランド軸としてこうあるべきという共通の定規、定義が重要です。
そこが明確であれば、全体を俯瞰して見て、短期スパンでの施策・長期スパンで考える施策や様々な打ち出しが出来るし、ブランドの価値とセールス両面で向上に繋がると考えています。

同じ目標があるから、ぶつかっても納得できる

画像4

――そうですよね。私自身も自分が大切にしている価値観と他の方の大切にしている価値観とがうまくマッチせずに苦しい思いをすることがあるので、非常に共感できます。そういったとき、どのように対処していますか?

「まずは『仲良くなって相手を知る』ということがもっとも大切なことだと思います。すごい普通な答えですけど。

はじめから自分の価値観だけを相手に理解してもらおうとすると、やはり話は平行線になってしまいます。
自分を理解してもらうために、相手が何を大切に思っているのかをしっかりと知る。そして『ブランドとして何をするべきか』を一緒に考えて行けばいいんだと思います。そうすれば、立場は違えど、共通の目標に対して『一緒にがんばりたい』と思うようになる。お互いをリスペクトすることができれば、単純な1+1が5にも10にもなる可能性だってあるんです。お互いの領域を120%発揮できるリレーションシップが一番大切だと思います。それが出来ていれば、お互い耳が痛い事でも感情的にならずに建設的な議論が出来ますよね。

会社全体で掲げている『クリエイティブ魂』は、その突破口の一つになると思っています」

――「クリエイティブ魂」はHameeのミッションですね。

「そうです。『本気で魂を込めてやるときと、そうでないときとでは、アウトプットのクオリティも成果も変わってくる。だから魂を込めてクリエイティブに仕事をするべき』そういったミッションです。

デザイナーと営業とで、それぞれアプローチは違えど『クリエイティブ魂』というただ一つの目標に向かって進んでいくことが違わなければ、お互い納得できる結果になるのではないでしょうか。

信頼は一朝一夕で得られるものではありませんが、貯金のように少しずつ積み重ねていくことで、いつの間にか大きな信頼に繋がっていくものだと思います」

ーーそうやって、いわば信頼貯金と言うべきものを貯めていくことで、ブランディングがさらに加速していくのですね。最後になりますが、iFaceのブランディングはどうなったら完成だと思いますか?

ブランディングの完成は無いと思います。それは悲観的な意味ではなくて、時代や価値観の変遷に応じて軸は持ちながらもフレキシブルに変化していく必要があり、そうする事が、ユーザーにとって本当に価値のあるものを提供できるからと考えているからです。『ケース買うならiFace』。誰もがそう思うような世の中になったら完成に近づきますが、そこが完成では無い。まだまだ模索の段階です。まずはしっかりファンを作って、競争力を高めて、ブランドとしての価値を確立していけるようにしていきたいと思っています」

――本日はお忙しい中、ありがとうございました。

画像5

経営者の立場からみると、インハウスデザイナーを自社で雇うというのは勇気のいることだと思います。直接的に利益を生み出しているのが分かりやすい営業部門のスタッフと比べると、どうしても一歩尻込みしてしまう。
しかし、すぐに数字に直結するとは限らない方々がいるからこそ、様々な部署のスタッフが様々な形でコラボレーションして、今のiFaceのイメージが出来上がっているのです。

iFaceはかなり大きなブランドになっています。
その影の立役者として、インハウスデザイナーがいるということが他社には無いHamee独自の強みなのです。

iFaceがみなさんにとって「いつもそばに置いて使いたい、ITアクセサリー」になったなら、これほど嬉しいことはありません。

ぜひ今使っている方も、これから使う方も、iFaceを楽しく使ってくださいね。

画像6

持田 渉
1973年東京生まれ 武蔵野美術大学卒 アート ディレクター/クリエイティブ ディレクター
広告やセールスプロモーションのVisual direction & Design,Photography Directionを中心に多種多様なデザイン案件に幅広く従事。
2018年より、Hameeのデザイン部クリエイティブ ディレクターとして、 コマース事業部ではiFaceのクリエイティブディレクションやプラットフォーム事業部のデザイン案件のディレクション等を担当。

画像9


この記事が参加している募集

社員紹介