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元アスリートが会社をつくったら、エモくて強い組織ができた

ぼくは26歳までバスケ選手だった。選手を引退したあと、人材会社とWEB会社を経て、スポーツビジネスの会社を起業した。

起業から10年。メンバーはもうすぐ50人になる。

ぼくが目指してきたのは「スポーツチーム」みたいな会社。

みんなで一緒に、勝利に向かって努力する。受注したら、みんなでハイタッチして褒め称える。「上司と部下」の関係じゃなくて、おなじ志をもつ「チームメイト」として接する。

そういう組織は、感情的になりすぎてうまくいかないと言われることもある。でも、いまのぼくらは「エモくて、かつ強い組織」を実現できていると思う。

スポーツの世界で培ってきた考え方を、ビジネスの世界に応用することでうまくいっている場面も多い。

今回はそんなぼくなりの、組織づくりについての考え方をまとめてみた。もちろんこれが正解ってわけじゃないけど、組織のあり方のひとつとして参考になったら、とてもうれしい。

打ち合わせ中に寝てしまう、元アスリートの新人

5年前、うちに元アスリートの新人が入社した。鳥谷部(とりやべ)という、なでしこリーグのサッカー選手だった子だ。

最初のころ、彼女は仕事にぜんぜんついていけなかった。

打ち合わせ中に寝そうになったり、メンバーからの指摘にも「なんでそんなことを言うんですか!」と怒ってしまったり……。

ただ、彼女はやる気がなくてサボっていたわけじゃなかった。

現役の選手だったころは、好きなことをやっているし、毎日走って蹴って鍛えて、それが周囲からの評価にもつながっていた。

それがいきなり社会に出て、ウェブマーケティングもビジネスの常識もなにもわからない。わからないから会議にもついていけない。不安で、つい同僚に当たってしまっていたんだ。

そんな鳥谷部が、いまはたったひとりで新潟のバスケチームに出向して、広報担当として立派に活躍している。お客さんからの信頼も厚い、頼れるメンバーに成長してくれた。

失敗しても死ぬわけじゃない

鳥谷部の話をすると「寝ちゃうようなメンバーをお客さんの前に出すって、怖くなかったんですか? 『おたくの会社、どうなってるんですか』みたいになるじゃないですか」といわれたりする。

ぼくは「まあ、失敗しても死ぬわけじゃないから」と思っている。

会議中に寝るのはたしかにダメだけど、それで誰かが死ぬわけじゃない。最終的には「うちのメンバーがすみません。彼女を現場に出させてるぼくの責任です」と、ぼくが謝ればいい。

そこは覚悟して、ある意味「成長のため」と割り切っている。

こういう考え方になったのは、スポーツをやっていた影響だと思う。

スポーツ選手は、みんな何百回も負けている。試合に負けるのはもちろん、試合の最中も何回もミスをする。バスケみたいなチームスポーツだと、自分がベストパフォーマンスを出せても、仲間がミスをして負けることだって当たり前にある。

でも、何百回負けても、努力をして、最終的にそれを上回る結果を出せればいい。試合中にミスをしても取り返せばいいし、前の試合に負けても、次の試合をがんばればいい。

失敗を責めないし、落ち込まない。だからメンバーをどんどん現場に出して、失敗してもらって、経験をつんでもらえるんだと思う。(これを受け入れてくれるお客さんにはホント感謝しかない。。ぼくらも、失敗のまま終わらせることは絶対ないようにしてる。)

スポーツの試合は「高速トライアンドエラー」の繰り返し

スポーツの試合は、毎分毎秒が「トライアンドエラー」のくり返しだ。

たとえばバスケのディフェンスなら、正面を守るのか、左か、右か、瞬時に判断しないといけない。

右がダメなら左。左がダメなら正面。それでもダメなら、もうボールを持つ前からディフェンスにつく……というぐあい。

ひとつ失敗しても、すぐ「次!」と切り替える。

落ち込んでるヒマなんてない。「ああ、右ダメだった、、」なんて10分もしょぼくれてたら、試合は終わってしまう。落ち込んで動きが悪くなれば、交代させられてしまって、挽回するチャンスすらもらえない。

失敗を引きずらない。すぐ切り替えて、次の手をうつ。最終的に挽回できればすべてOK。このマインドは、ビジネスの世界でもすごく役に立っている。

6部リーグから這い上がった大学バスケ時代

ぼくは、採用したメンバーが遅咲きでもまったく気にしない。

さっきの鳥谷部の場合は、完全にひとり立ちするまでに4年ぐらいかかった。でもそのあいだ、ぼくは一回も焦ったことはない。他のメンバーから「あいつ大丈夫ですかね?」と言われても「大丈夫、マチガイナイから! いつか必ず結果だすから!」と言い続けた。

それは、人の成長を信じているからだ。

どんな人でも努力さえすれば、かならず成長できる。そう思うようになったのは、大学バスケでの経験が大きい。

ぼくは中学のころから関東トップリーグでプレーしていた。でもいろいろあって、大学は電気通信大の弱小チームにすすむことになった。(その経緯はこちらのnoteに。)

チームは、体育会の中でほぼ最下位の6部リーグ。メンバーはぼくが出したパスに気づきもしないような、絶望的な状態だった。

でもそんなチームが、4年間がむしゃらに練習して、最終的には推薦がないレベルだといちばん上の、4部リーグの上位にまで上がることができたんだ。

誰でも、絶対にうまくなる

この経験は、ぼくにとってすごく大きかった。

チームメイトたちは最初、ほんとうに下手だった。ただ、それはサボっているからではなく「技術を知らないだけ」という感じ。「ちゃんといいやり方を教えたら、きっとよくなるんだろうな」という予感はあった。

そうしたら、想像以上にうまくなった。

ぼくが思ってた以上に、みんなまじめで一生懸命だったからだ。

技術は足りなかったけど「うまくなりたい」「みんなで勝利をつかみたい」という思いは共通していた。ぼくは、そこにひたすら技術をのっけていっただけ。

そのときの先輩が、引退前の飲み会で伝えてくれた言葉を、いまでも覚えている。「平地はすげー怖かったけど、おかげでこんなにうまくなれた。そこは感謝してる」と。

当時のぼくは、はいあがるのに必死で、先輩でも関係なくめちゃくちゃ厳しく当たってた。「嫌われてるだろうな」と思ってた。だからその言葉にはびっくりしたし、鳥肌がたつぐらいうれしかった。

いまどんなにダメでも、思いがあって努力できる人なら、絶対にうまくなる。そして、人が成長するってものすごくうれしくて、尊いことなんだと知った瞬間だった。

採用は、スキルよりカルチャーで選ぶ

人の成長をとことん信じる。

だからこそ、採用ではスキルよりも「カルチャー」が合うかどうかを見るようにしている。うちの会社で大切にしている価値観と合うかどうか。

どんなに華々しい経歴で、スキルが高くても、カルチャーとフィットしない人は採用しない。逆にカルチャーさえあっていれば、どんなに時間がかかっても、ちゃんとうちで育てる覚悟で採用する。

メンバーが成長するために、いちばん大切なのは「待つこと」だと思う。

周りの先輩たちが、いかに根気強く待てるか。上から押しつけて強制しようとしてもダメで、本人が気づいて変わるのを待つ。そうじゃないと、ほんとうの成長はできない。

そのとき、学歴とかスキルじゃなくて「人間」の部分を信頼できていることが、すごく大事になってくる。「こいつならやってくれる」と信じられる人を採用することが、その後のコミュニケーションの土台になるんだ。

スター選手を集めただけでは勝てない

スポーツがおもしろいのは、お金にものを言わせてスター選手ばかりそろえたからといって、必ずしも強いチームになるわけではないこと。

男子バスケのアメリカ代表チームがいる。NBA(National Basketball Association)に所属してるアメリカ人を集めてつくる、いわば「最強」のチームだ。

そんなアメリカ代表が、2大会連続で金メダルを逃したことがある。

2004年のアテネオリンピックでは銅メダル、2006年の世界選手権でも3位。「バスケ大国アメリカ」というブランド失墜の危機になってしまった。

そこで立ち上がったのが、マイク・シャシェフスキーという大学バスケの名将。彼はチームを立て直すために「ゴールドスタンダード」というものをつくった。要するに「金メダルをとるための行動指針」だ。

どんなすごい内容なのか? と思ったら、じつは驚くほど基礎的な話ばかり。

たとえば「ディフェンスをみんなでがんばろう」とか。 NBAの選手はみんな派手だから、オフェンスのチームだと思われがちだけど、やっぱりバスケの基礎はディフェンスだから、ディフェンスを頑張ろう、と。

あとは「みんなでコミュニケーションを取ろう」とか。みんなスター選手で、コミュニケーションをとらなくてもある程度できてしまう。だからこそ、しっかりメンバーの意図をくみ取ることで、チーム力を上げよう、と。

ほんとうに超シンプルで、当たり前のことが書いてある。

そして2008年の北京オリンピックで、アメリカは金メダルに返り咲いた。しかもそれ以降のオリンピックで3連覇を成しとげている。当たり前のことを徹底するのがいかに大切か、よくわかる話だ。

当たり前のことをちゃんと言葉にする

この「ゴールドスタンダード」は、会社でいうと「ミッション・ビジョン・バリュー」にあたると思う。

どんなに個々のプレイヤーが優秀でも、チームができていなかったら金メダルはとれない。「これくらいみんなわかるっしょ」と思わずに、チームの基礎になる考え方をちゃんと言葉にするのは、ビジネスの世界でも大切だ。

うちの会社では「アイデンティティ」と名づけた6つの行動指針をつくって、全員で共有している。

6つの「アイデンティティ」

内容は、すごく基本的なことばかり。「仕事に最後まで責任をもつ」「ウソやごまかしはしない」「仲間をリスペクトする」など、ビジネスの話というより、人としての心得みたいな感じだ。

でもやっぱり、ちゃんと言葉にして、みんなで共通認識をもって確かめ合うことが、いいチームをつくるんだと思う。

このアイデンティティは、採用の指針にもなっている。さっきの「カルチャーフィットするかどうか」の基準だ。こういう考え方ができる人なら、うちの会社で成長できるはず。その点でも、やっぱり言葉にするのは大切だ。

吊り上げるより「押し上げる」リーダーに

大学バスケ部のころのぼくは、どちらかというと「独裁者」みたいな感じだった。力でねじ伏せて、みんなを鼓舞して、従えてきた。

それから社会に出て、アパレル、民間のバスケリーグ、人材コンサル会社、WEB会社と、いろんな会社を経験して。人材にいたころは仕事についていけずに、半分鬱みたいにもなった。

そんな経験を経て、いまは無理やり引っ張って吊り上げるんじゃなくて、下から押し上げるリーダーになりたいと思ってる。

ガチガチにレールを敷いて「さあ、この上を走れ!」というのではなく、自分で考えて、なにが正しいか判断して行動してもらう。

もちろんいきなりはできないから、採用の時点でカルチャーフィットする人を選ぶし、そのあとも勉強会をしたりしてサポートする。ただ、成長のスピードは、あくまでも本人に任せて待つ。

それが合う人には、すごく成長できる環境になっていると思う。

みんなで掴んだ成功だから、心からハイタッチできる

うちの会社ではメンバーが受注したり、プロジェクトがうまくいったりすると、みんなでハイタッチしてよろこぶ。(いまはコロナでフルリモートだからできないけど。)

こんなウェットな組織は、ひょっとしたらめんどくさいのかもしれない。「会社は会社」とわりきったほうが楽だ、という人もいると思う。

でもぼくらの場合、ほんとうに心からうれしいからやっているだけ。

新人が入ってきたとき、うちでは特定の「教育担当」はつけない。いろんな先輩が、いろんな角度からフィードバックして育てていくし、みんなそうやって育ってきた。

だからほかのメンバーの成功を、自分のことみたいに喜べる。「熱くなろう!」と意識してやってるわけじゃなくて、ここで働いていたら自然とそうなってるんだ。

ぼくは正直「会社とはこうあるべきだ」みたいな思いはない。

ただ、みんなのこのいい笑顔が、ずーっと続いていくような、そんな組織であり続けたい。それを追い求めていたら、たまたま今みたいな「エモい」形になった、というだけなんだと思う。

第10期の納会の写真

ぼくらはいずれ上場も視野に入れている。今後、組織がもっと大きくなっても、この笑顔を守ることさえ忘れなければ、きっといいチームでいられると信じている。


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