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Y染色体ハプログループ・語族・人種第3章『アフリカの支配者E系統』

 めちゃくちゃわかりすく纏めるとY染色体ハプログループは男系遺伝子でY染色体にあるので男性にしかなく、場合にもよりけりですが言語系統、つまり語族の分布とある程度の一致が見られるため同時に語りましょう。


「ハプログループE」

 Y染色体ハプログループE(E-M96)は約10万年前にA1b2(B2)からBとCTに分岐、CTから北東アフリカで7万年前にDE(YAP)が誕生し、それがさらにEとDに分岐して生まれた系統で、その年代からユーラシア拡散以前のアフリカが発祥の地であり、現在のアフリカの大部分を占めている。

分布

 変異せずに現在まで残っているE*(基型)はサウジとレバノン、エジプトなどのアラブ人、アムハラ系エチオピア人、南アフリカ、ガボン、カメルーン、ブルキナファソ、ニジェールの黒人の間で発見されている。

E2


 また、初期に分裂したE2(E-M75)は赤道付近のアフリカ全域、特に五大湖地域と中部アフリカに集中して存在しており、ナイル系民族であるアルール族で7割、ヘマ族で4割、セネガンビア系のフラニ人で3割、チャド系のダバ族やネグリロ系のムブティ族、バントゥー系のケニアの諸民族やズールー人で2割ほど観察され、その他のアラビアやアフリカ各地でも発見されている。

アルール族

E1a


 一方、E1(E-P147)の中でも初期に生まれたE1a(E-M132)はセネガンビア系フラニ人で1割〜5割、ジョラ人で3割、パペル族・マンジャコ族・マンチャラ族で2割、ウォロフ族で1割、バランタ族で1割、その他ではドゴン人で4割、ハウサ人で2割、Nalu族で1割などとなっていて、主に西スーダン一帯に集中している。

ドゴン人

E1b


 E1のもう一つのE1b(E-P177)の内、E1b2(E-P75)は非常に少なくほぼすべてがE1b1(E-P2)に属し、その中にあるE1b1aとE1b1bの双方が大きな繁栄を遂げている状態で、E1b1a(E-V38、旧称E3a)は4万年前に東アフリカで誕生し、中でも初期に分岐したE1b1a2(E-M329、旧称E3*/E1b1c)はアフロアジア語族オモ語派という小さい言語群を話す話者達やそれと混血している周辺のオロモ人などに多く見られる状態で、エチオピア南西部という限られた地域にのみ現存している。

オモ系ウォライタ族

E1b1a1


 一方、E1b1a1(E-M2、旧称E3a/E1b1a)は巨大で西部アフリカから中部アフリカで誕生し、その後、このグループの集団がニジェール・コンゴ語族となってその地域全体に浸透、さらにその一部が「バントゥー系民族の大移動」を引き起こしたことでアフリカの南部や東部にまで拡大し、世界で最も巨大なグループの一つとも言える。

ニジェール・コンゴ語族の分布、バントゥー系民族は茶色

 特にバミレケ族、エウェ族、ガ族では10割、フツ族、ヨルバ族で9割、ファンテ族、マンディンカ族、オヴァンボ族、セネガル諸民族、ガンダ族、ビジャゴ族で8割などが特に多い記録である。

 ニジェール・コンゴ系ではないマダガスカル人、ナイル系のマサイ族やルオ族など、アフロアジア語族に属すセム系の各地のアラブ人やベルベル系のトゥアレグ人など、クシ系のソマリ人など、そして、黒人奴隷の子孫が暮らす新大陸や南アジアでもある程度見られ、古代や中世の人骨からも多く発見される。

バミレケ族

E1b1b


 一方、E1b1b(E-M215、旧E3b)は東アフリカで誕生しニジェール・コンゴ語族と並ぶアフリカの二大言語系統となっているアフロ・アジア語族の拡大によって拡大しており、世界最古の都市イェリコを建設した中東の「ナトゥーフ文化」やその後に大繁栄した古代エジプト王国などからも多く発見される。

エジプトの征服帝ラムセス2世

 E1b1b1a(E-V68)では早期に分裂したE-V2009はサルデーニャ島やモロッコに見られる程度で、M-78というサブグレードが大部分を占め、クシ語派のサホ族で9割、ソマリ人で8割、オロモ人やべジャ人で4割、セム語派のエジプト人で8割、モロッコ人で4割、エチオピア全体で3割、アフロアジア語族話者と多く混血しているナイル・サハラ語族でもマサリト族で7割、フール族で6割、その他、フラニ族の一部でも3割、南ヨーロッパでもアルバニアやギリシアで3割などとなっている。

クシ系サホ族

 E1b1b1b(E-Z827)のE-V257/L19 (E1b1b1b1)ではE-81がマグレブで7割〜10割ほど見られ、そのほか各地のベルベル系民族でも多く北アフリカで最優勢の系統であるといえ、南西ヨーロッパのスペインやポルトガル、その移民のラテンアメリカでも1割前後見られ、E-PF2431は北アフリカやサヘル、西欧諸国、近東諸国で発見されている。

ベルベル系トゥアレグ人

 E-Z830 (E1b1b1b2)に属すものではE-M123がヨルダン人で3割、アムハラ人で2割、E-M293がナイル系Datooga族で4割、コイサン系クウェ族やクシ系Burunge族で3割、コイサン系サンダウェ族で2割、E-V6がエチオピア周辺で1割前後、その他、E-V42やE-V92などがある。


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