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解読「羅生門」

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芥川龍之介の「羅生門」を中心に解読しています。
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#近代文学

「羅生門」を読む④ 精読編1-「下人」とは何者か-

「羅生門」を読む④ 精読編1-「下人」とは何者か-

前回の記事で、あらすじというマクロ視点から「羅生門」を読んでみました。今回からは場面ごとに精読していきますが、それに先立ち、場面の構成を精査することにします。というのは、「羅生門」という作品は場面構成にも作品を読み解く鍵が仕掛けられていと思うからです。

▢「羅生門」の場面構成の示唆する主題

場面を構成するのは「時」「場所」「人物」の3つの要素です。その要素のうち1つでも移行すると場面が展開しま

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「羅生門」を読む⑤ 精読編2-下人の憎悪と〈善/悪〉の相対化

「羅生門」を読む⑤ 精読編2-下人の憎悪と〈善/悪〉の相対化

芥川龍之介の作品を読むとき、絶えず意識されるのはこの作家の物事や人間を見る目である。それは容赦の無く対象を見透かす目である。そういう意味で彼は徹底したリアリストであるということができる。彼のこの目は自分にも向けられ、彼自身を毀損することにもなる。よく言われる「見えすぎる」苦悩というもので、それは決して人を「幸福」にするものではないだろう。

だがそのことが彼の作家として負の要素とはならないことは言

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