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薄楽俊
2022年12月30日 19:49
理髪店の前は雨が降っていたことがない亡き王女のパバーヌが聞こえてくる二階の窓はいつも閉じられていて少年だった僕の耳は海辺の貝のように知りもしない未婚の叔母の過去の波打ち際に取り残されていたああそうだ そういえば忘れていたことが大切であると叔母はよく言っていた叔母は時折スフインクスのように決して解けないなぞなぞを出し僕はいつもインチキの答えをでっち上げた叔母はその度に淋
2022年12月21日 23:27
アクアリームブルーの夜明けぼくが言葉を引き摺り出しいや、言葉がぼくを引き摺り出し現実という荒野がアクアリウムブルーの夜明けに現れる記憶の地平線に見えかくれするのは あれは音速で駆け抜けていく無数のモンゴル馬の立髪かそれとも君の髪の匂いかしかし昨晩 見たのは外に出ようと水槽の側面板にへばりついて仰向けにひっくり返った草亀だった逃げていく夢にまたがり消えてゆ
2022年12月14日 10:20
A Day in the Life君がいてネコがいてバーモンドカレーを煮込む臭いがして中辛の君がいて何事も君に合わせるぼくがいてふたりと一匹は白いミルク渦のようになって日曜の朝昼兼用の食事をする君があとかたづけのために片膝を立てれば陰りに白いパンツがほのみえてぼくはなぜかむでぃーかつやまの消息が気なりだすささやかなよろこびをわかち合うためにぼくはネコと君も好きなチェットベー
2022年12月13日 18:45
夕焼けの壜拾ったものは夕焼け落ちていたのは初めての孤独誰もいない校庭になぜかぼくだけがいた鳥の影が地面を駆け抜け投げ捨てられた薄汚れたガラス壜のようにぼくは夕焼けの世界にころがっていた揺れていたものは何拾ったものはコスモスの記憶落ちていたのは初めての仮面通り一遍の覚えたての笑いで通り一遍の頷き方をしその場をやり過ごした風もないのに揺れていた路傍の花はその後もぼ
2022年12月8日 20:53
冬の案山子茶碗蒸しも刺身も変な味がするようになってさロシア文学の好きだったオレの半身が言う気分転換に今度の日曜にあの山に登ってみようかオレはすっかり白くなった頭をかきながら部屋の窓から見える稜線を指差した脊振のなだらかな稜線が冬の日に温められているオレたちは冬の案山子だなもちろん、長い付き合いのオレにもお前の裾野は見えないだけど 見えているものはたくさんの見えないものをふ
2022年12月5日 18:29
弾道ミサイルの夜に騒がしい沈黙を無数の神々ががなりたてている進化という退化がはじまって嘘にならない嘘がはびこっているあてもなく浮遊する言霊が朝から晩まで漂い眠れない時間の不安指数に歯止めがかからない そして電力不足のネオンが肋骨のように仄白く発光している午前零時螺鈿色の月が出ている夜空を鋼鉄の飛翔体が横ぎっていくという予報が出れば おそらくぼくはぼくにもどりそばにいる君の耳た
2022年12月2日 12:00