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【詩】アクアリウムブルーの夜明け

アクアリウムブルーの夜明け

アクアリームブルーの夜明け

ぼくが言葉を引き摺り出し
いや、言葉がぼくを引き摺り出し
現実という荒野が
アクアリウムブルーの夜明けに現れる

記憶の地平線に見えかくれするのは あれは
音速で駆け抜けていく無数の
モンゴル馬の立髪か
それとも君の
髪の匂いか

しかし

昨晩 見たのは
外に出ようと
水槽の側面板にへばりついて
仰向けにひっくり返った
草亀だった

逃げていく夢にまたがり
消えてゆく
あれは

あれは何か?

立髪の夢が
いや 夢の立髪が
アクアリウムの光の中で
水草のように揺れているのだが


なにか大切な夢をみていると思ったときに目が覚めた。

余韻だけがあり、ぼくはそれをすぐに追っかけ、言葉で捕まえようとした。だが、どうしても追いつかない。なにか大切なものを取り逃がし、もうそれはもどってこないというのが実感だった。夜明けの蒼い水槽の中に取り残されている、そんな感じでしばらく漂っていた。

よくあることだが、このときの夢はとくに悔やんでいる。

この詩は「B-REVIEW」に投稿したものを改題、改訂している。


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