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令和新年タイ騒動/連載エッセイ vol.126

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「姿勢ッコくらぶ通信 vol.128(2022年・第1号)」掲載(原文ママ)。

発行タイミングの都合上、本号が今年初めての通信&エッセイとなるが、皆様どのような年末年始を過ごされただろうか。

私の方はといえば、年末は、大晦日の前々日まで施術に励んで、前日に店舗の大掃除をスタッフとともに行い、当日は自室に引き込もってデスクワーク。

年始は、元日に盛岡と紫波の自店の見回りついでの実家への顔出し、2~3日は自室に引きこもってデスクワーク&読書というノンアルコールな三が日。

「非日常」が「日常」となる前は、翌月あたりに迫った「恒例のアメリカ研修」の自由時間の計画立てなどで心を躍らせていたものだったが、そんなこともなく、地味ィ~な時間を過ごしていた。

今年の営業開始を6日に設定したのは、年末ギリギリまで働いたことの他に、もう1つ理由があった。

それは、5日に紫波町の商工会が企画する「新年特別講演会」へ参加するため。

例年であれば、そのような類の催しにあまり参加しないのだが、今年は講師を、その独特の語り口と微妙な商品ラインナップ、そして何かしら以上の関係性を匂わす女性歌手アシスタントとの掛け合いでお馴染みの、某通信販売会社の社長が務めるとあって、私は即座にスケジュールを再調整し出席を決めたのである(しかも件の女性アシスタントも「同伴」!!)。

そしてその参加を決めた時点で、今年初めてのエッセイのネタは、これで決まりかと考えてもいた。

そんな淡い期待を胸に傾聴した講演は……事前の予想の斜め上をいくフリーダムなもので、また違った意味でネタになるような内容。
講演終了後の帰路で頭を巡ったのは、『講演自体の面白さだったら、絶対に自分の方に軍配が上がるなぁ…』ということと、『女性アシスタントは角が立たない軌道修正係なのね…』ということであった……。

さて、本来であればこのエッセイの「本ネタ」となるはずであった「講演会ネタ」を「前座」扱いにしてしまったが、それは……その前日となる4日に個人的にはそれを上回る、ある「アクシデント」が勃発したからなのである……。

その顛末を私はこう名付けよう……「令和新年タイ騒動」と!!

毎年最初の営業日に、盛岡の店舗にて商売繁盛&無病息災のご祈祷いただくのを恒例行事としているワタクシ。

今から約10年前、その盛岡の店舗を立ち上げる際、「商売をするなら神事はしっかりやっておいた方が良い」とのアドバイスを受けたことから、欠かさず実践している。

そして、それを担当してくださっているのが、盛岡中心部の2つのお寺を護り、神式仏式両方の形式のご祈祷を修められ、そして当店の長年のお客様であり良き理解者でもある巷で人気の(!?)ご住職。

実はそちら方面に疎かったワタクシも、彼女のアドバイスによって、今や手際よくご祈祷の供物を揃えられるまでになった。

そして今回、その供物の中でも一際存在感を放つ「尾頭付き鯛」を巡って騒動が勃発する!!

昨年末、ご祈祷用の鯛を注文するために向かったのは、盛岡中心部にある某老舗魚店。

そこは毎年利用しており、場合によっては電話注文で済ませるケースもあったが、今回はたまたま直接訪問して対面注文。
いつものようにご祈祷用であることと、予算と、受取希望日を伝えると、その時点での翌年……つまり今年の市場始めは希望日翌日の5日であり、営業もその日から始めるとのこと。

しかしながら、事前に予約していれば、我々のような顧客向けに誰かは店番をしているので受け渡しは問題ないということで、これまたいつものように注文を完了した。

ご祈祷当日。

店舗には早めに到着し、部屋を急ぎで暖めつつ、供物のセッティング。
その後、いよいよ尾頭付きな鯛を出迎えにハンドルを握る。

件の魚店は当然ながら表玄関を閉めていたものの、駐車スペースから続く、店舗横の引き戸から、「一般販売用」のスペースの奥にある「業務用」のスペースへ直接入店。
市場が開く前の店内には、当然ながら商品たる魚介類は鎮座しておらず、アルミ台の上に、2つほど大きめの発泡スチロールケースが置かれていた。

『ウチ以外にも、もう1件、注文があるんだぁ……きっと同じくご祈祷用なんだろうなぁ……』などと思いつつ、注文を担当してくれた当店マネージャーが魚店の方を呼びに奥へ声を掛ける刹那、その2つのケースに視線を走らせた私の脳裏に、嫌な予感が走る。『ケースの上に書かれた宛名が……2つともウチじゃない……!!』

『はぁ~~い……。』

奥からゆっくりとした足取りで現れたのは、恐らく今や社長職を息子さんに譲った会長さんであろう。
胸中が若干穏やかではない私は、敢えてその不安を吹き飛ばすかのように爽やかに告げた。
『本日ご祈祷用の鯛を注文しておりました○○デス!!』

人間というものは社会性の強い動物である。
「社会性」とは言い換えれば「共感性」であり、島国に住まう我々は、特にその能力に長けているという。

つまり何が言いたいのかというと……こちらの言葉を聞き取った際の、会長さんの一瞬の動作停止と、その逆を行く瞳の往復動作ですべてを悟ったのである……『あ!!……注文漏れだな……。』

そして会長さんは、その2つのケースが置いてあるアルミ台とは逆方向に歩を進め、大きな扉の冷蔵庫を開き、中から取り出したものをこちらに向けながら、気まずそうに私へ告げた……『タイです』。

うん……確かにこれはタイ……煮付けにしたら美味しそうな可愛らしい小鯛タ~イ……。

車に乗るまで終始無言だったワタクシとマネージャー。
エンジンを掛けた瞬間に溢れ出したのは、今年1年分を既に消費してしまったかのような苦笑いであった。

人徳のあるご住職のこと、事情を話せば笑って済ませてくれるかもしれない。
しかしながら、それでは神様仏様に面目が立たない。
そしてそれ以上に、ご祈祷中、小鯛を奉げて手を合わせている自分達の絵面に客観的な笑いを堪えられる自信がない!!

結局、ダメもとで入った近所のスーパーで奇跡的に尾頭付きを入手でき、事なきを得た我々。

ご祈祷後、事情を聴いたご住職から、元々繋がりのあるその魚店へ直接ご指導いただけることに。
恐らく来年の「尾頭付き」はこちらの提示する予算以上のブツが提供されることであろう……。

騒動は……続く??(笑)


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