ロードスケーター・トリプルアクセル/連載エッセイ vol.42
※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.44(2008年2月)」掲載(原文ママ)。
親愛なる読者の皆様、毎度毎度、今更ではあるが、明けましておめでとうございます。
この通信の発行が偶数月と決まっている為、この『2月号』に『新年の挨拶』をするのも毎年どうかと思うのだが、こればかりは致し方ない。
ご容赦頂きながら、折角なので今年最初のエッセイは、元日に起きたばかりの『チョットした』出来事について徒然なるままに…。
突然であるが、読者の皆様の住居と職場はどれくらい離れているだろうか?
職場優先で住居を選んだ為、『味噌汁の冷めない距離(死語…)』だという方もいれば、何らかの事情でかなりの遠距離を毎日往復している方もいるであろう。
ちなみに私の通勤時間は、時々真っ赤なオーラを携えて追い掛けてくるパンダ色の方々に捕まらない程度の速度で車を走らせて、片道30分程度。
患者さんからは『もっと院の近くに住めば楽でしょうに…』などと気を遣われてしまう事も多々あるのだが、住居と職場(院)が離れている事でプラスの面も実際のところ多いように思う。
1番の利点は、これは『商売』をする上では昔から言われている事ではあるが、『仕事』と『生活』の線引きが明確になり、けじめをつけ易いという事であろう。
この業界は『自宅兼店舗(院)』でやられている方も多いのだが、『外向きバリッと内実グウタラ』な私がその形態をとってしまったら、とてもじゃないが患者さんやスタッフに叱責される事間違いなしの『ユル~い』雰囲気が院に漂ってしまうことであろう。
嗚呼、想像するだに恐ろしい…クワバラクワバラ…。
(実はこのエッセイも締切をとうに過ぎてから着手してますがナニか?)
やはり私の場合は30分の道程を、朝はテンションを上げる為に音楽をかけて大声で歌いながら、夜は…夜も結局ガンガン歌いながら往復するのが性に合っているようである。
このように、職場との『距離感』を普段はむしろ楽しんでいる節のある私なのだが、唯一真冬の時期だけ恨めしく思う時がある。
それは年末年始や週末など数日に渡って院を閉めている時に大雪が降った場合だ。
『院が休みであれば通勤する必要はないのでは…?』と思った方は雪国ビギナー、然にあらず。
数日に渡って降り積もった雪を掻く労力ったらトンデモナイのである。
特に下層の雪が氷状に固まったり、除雪車が押し退けた本来車道上にあった雪が脇に寄せられて院の前に『雪の壁』を形成したまま凝固された朝にゃあ鶴嘴を持ち出さなければ粉砕できない程で、とても開院前の一仕事で片付けられるレベルではない。
結果、そうなる前に大雪の日は、休みであっても雪掻きだけをしに院へ向かうのである…休みなのに…。
(当然、その車中の『心のBGM』は名曲『ドナドナ』である…。)
さて話は最初に戻って、今回の年越しはご存知の通り、この冬最強の寒波に覆われたお陰で大雪。
大晦日の時点でかなりの積雪量ですぐにでも雪掻きへ出向きたい気持ちになったが、空模様からすると翌日まで降り続きそうである事から、ここは2日連続の『休日除雪』を回避し、腹を決めて元日決戦に臨む事を決意。
翌朝、『戦場』へと出発した…。
しかし『悲劇』は思いもよらぬ形で押し寄せるのである…!!
元日の国道4号線は流石に我が県の大動脈、轍が出来ない程度まで除雪がなされ、車の流れも順調。
何の警戒もなく、私は来るべき『戦い』に思いを巡らせていた…。
すると!!
丁度、道幅が減少する手前で車線変更する時である。
何故かそこにはポツンと残された様に除雪車を掻い潜った雪の一団が……
我が愛車の右前輪がヤツラに乗り上げる……
『ボファ~ン!!』……。
車はとたんに制動を失いスピンし始めた!!
『どっしぇ~~!!』
私は諦めそうになる心を、自動車ローンの残高を思い浮かべる事で何とか奮い立たせ、必死にハンドルを右に左に切り続ける。
周囲に雪が舞い上がった…。
時間としては一瞬の出来事だったに違いない。
気付くと車は進行方向とは真逆を向いて停まっていた。
奇跡的に車は無傷。
カーステレオからはおめでたい尺八の音が響き、そして顔を上げると、血の気が引いた後続車のドライバーと目が合い…苦笑いを浮かべながら会釈し合うのであった…。
(実は本当の悲劇はそれからで、道路が前述の『雪の壁』と中央分離帯で挟まれている為、うまくUターンできず、最寄のコンビニ駐車場まで数十メートル後ろ向きで車を走らせなければならなかったのである。
顔を正面に向ける度に、後続車のドライバーと目が合う為、その都度、微妙な会釈合戦が始まり、かまくらがあったら入りたい心境であった…。)
思わぬアクシデントから始まった新年。
1年の幸運を全て使い切ってしまったのか、それとも体のいい厄払いとなったのか、きっと後者である事を信じて今年も成長していく所存である。
まずは、来月のアメリカ研修での不在時に大雪が降らない事を祈りつつ…
合掌!!
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