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大きな深夜の腹時計/連載エッセイ vol.111

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「姿勢ッコくらぶ通信 vol.113(2019年・第4号)」掲載(原文ママ)。

『センセイは、いつも元気ですね~。』

……お客様からよく頂戴する言葉である。
無駄な大声量が平常運転のワタクシに対する皮肉の可能性も否めなくはあるが、『センセイの声を聞くと、こちらも元気になる。』……という言葉も合わせて頂くので、まぁ、お褒めの言葉と受け取って差し支えないのであろう。

しかしながら、私が『常時体調万全』と宣言できるかと言えば、もちろんそうではなく、お客様にばれない程度に、チョイチョイやらかしてはいる。

軽微な……つまり、お客様への感染リスクが極めて少ない体調不良の場合。

これを乗り切るのは『気合』の一言。
お客様はこれから、貴重な時間と資金を投資して、お店のサービスを受けに来てくださる。
そんな時に、暗い顔してていいのかよ、オレ!! さぁ、スイッチを入れ替えよう!! 気合だ、気合!! ……ってな感じでバックヤードの鏡に言い放ってからお客様と向き合うと、あら不思議、案外乗り切れてしまう。

まぁ、そんな日は、接客時間と休憩&打ち合わせ時間の『表情明暗ギャップ』で、スタッフをドン引きさせてしまう事もあるが、まさに『病は気から』なのであろう。
なんとかなるものだ。

逆に重篤な……つまり、高い感染リスクがあったり、日常生活に支障をきたすレベルの体調不良の場合。

何故か、お客様の予約をいれず、腰を据えてデスクワークに勤しもうとスケジュール調整をして拵えた『数日間の作業日』に発症する事が多い。

私からすると、貴重な日程を潰され、回復後に『鬼のスケジュール』が待ち構える事になるので、自分の身体から『謀反』を起こされたかのような気分になるが、逆にカラダからすると、お客様に迷惑を掛けない日程を、敢えて選んで普段の無理を吐き出しているのかもしれない訳で、まぁ、これもある意味、『病は気から』なのかもしれない。

こうして、この20年間、大概はなんとか乗り切ってきたつもりである。

しかしながら……時として、この身体と仕事のスケジュールのタイミング調整が上手くいかない事が生じるのもまた、人間である限り、仕方のない事で……。
今回は、そんな『現在進行形』なお話である!!

起点は、本通信表面に掲載されている『大規模講演会』。

自分のポリシーとして、『講演』と名が付くイベントに関しては、対象人数の多少に関わらず、いつでも全力投球。
特にも今回は、私がペーペーの頃からお世話になっている先生とのコラボ講演で、しかも私が少し長めに時間を頂戴する『トリ』。

更に、いつもの新聞社に加えて、地元のケーブルテレビのカメラも入るので、気合十分。
その講演内容の評価は、実際に参加された方々にお任せするとして、その日は懇親会も含めて、充実した時間を過ごした。

翌日は作業日。

その週末には、いつもの西日本への講師出張を控えている為、その準備に充てる予定であったが、どうやら心身ともに疲労が色濃い様子だったので、のらりくらりと自宅でデスクワーク。

そして衝撃の翌々日。
その日は、半作業日。

お客様の予約を午後の時間帯に極力集中させ、午前と夜間の時間帯は、デスクワークをする予定。
その日は真夏日の予報が出ていたので、午前のうちから店舗に入り、エアコンをはじめとする空調設備の電源を入れ、いざPCを立ち上げようとすると……おかしい……なんか……お腹が少し痛い……。

一先ずトイレに駆け込むと、見事なまでの『ウォータースライダー』。

……ナンダナンダ!? 

でも……その他の不調は感じないので、念のため午前は静養して、午後はいつものように『気合だ作戦』。
夏風邪だと宜しくないので、いつも以上に消毒へ気を遣いながら接客に勤しむ。
その後、途中のん気に、注文していたファッション関係の書物を受け取りに本屋へ寄り道しながら帰宅。
件の『ウォータースライダー』は、若干急流気味になってきたので、念のため体温を測ると……『38.2℃』。

……ナンダナンダナンダ!?

不測の事態に焦りを感じつつ、イソイソと寝床作りに入る。
何せ、次の日と、そのまた次の日は、経営する2店舗それぞれの出張前の営業日。
予約は入れられるだけ入れてある。
つまり、翌朝までに何としても体調を回復させる必要があった。
私は近頃の小学生にも笑われそうな時間帯に寝床へ潜り込んだ。

……ふと目が覚める。
時刻は丁度、午前零時。
数時間が経過していた。
若干の腹痛はあるものの、意識は明瞭。
徐に立ち上がり、トイレで急流を乗りこなし、再度横になりながら体温計を脇に挟んだ。

数秒の後、暗闇に電子音が鳴り響き、表示枠をかざす。
極度の近視&乱視の私は、目を凝らし何度も確認する。
しかし、そのデジタル数字は変わらない。『39.0℃』。

……ナンダナンダナンダナンダァァァ~~!!??

『高熱・腹痛・下痢』……私は必死に脳内検索を試みる。
これは……所謂……『感染性腸炎』かなぁ……。

更に自分の状況を省みる。……『発熱→あり/意識→明瞭/頭痛→なし/吐気→なし/胃痛→なし/腹痛→軽中度あり/水様性便→あり/血便→なし』……これは恐らく……『カンピロバクター腸炎(細菌性腸炎ランキング1位)』か『サルモネラ腸炎(同ランキング2位)』ですなぁ……。

この予測を立てた時点で、少し落ち着く。
何故ならば、この2つであれば、ヒト感染のリスクは非常に少ない。
つまり、その日に接したお客様へご迷惑を掛けた可能性は限りなく低い。
しかも症状レベルとしては、それほど重篤でもない様子。
元々特別な治療は必要のない病ゆえ、健常な成人男性たるワタクシであれば、あとは自己の回復力を信じて静養するのみ。

さあ、水分とミネラルと少しの糖質を補給したら……レッツ睡眠グ~ググ~!!

ふと目が覚める。
時刻は丁度、午前一時。
若干の腹痛を抱えつつ急流を乗りこなしたら、再々度眠りに就く……。

ふと目が覚める。
時刻は丁度、午前二時。
若干の腹痛を抱えつつ急流を乗りこなしたら、再々々度眠りに就く……。

ふと目が覚める。
時刻は丁度、午前三時(……以下省略)。

まぁ……体内の悪いモノを排泄する正常な生理作用とはいえ……我ながら、この腹時計……時間厳守か!!

『キミは、几帳面すぎるんだよ~。』……仕事仲間からよく頂戴する言葉である。
それに対して、私は胸を張って答えよう。

『この性分……五臓六腑ゆずりですから!!』。


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