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声のライバル/連載エッセイ vol.23

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.25(2004年12月)」掲載(原文ママ)。

今回は珍しく院の昼休みにこのエッセイを書いている。
というのも、文章を作るのが苦手でない私の唯一の(!?)弱点は、雑音の無い所ででしか集中できない事で、そのためこの連載の殆どが深夜か休日の自室にて紡がれるからだ。

そんな私が何故ゆえにいつもと違う環境でPCに向かっているのか、それはその「いつもと違う環境」自体をエッセイのネタにしようと目論んでいるからに他ならない。

銀行の支店が集中している為か、午前中こそある程度人通りのある我が商店街であるが、この時間帯いつもであれば、すっかり静寂を取り戻してしまう。
ところが今日は少しばかり勝手が違うのである。

コンビニの跡地である院の隣の店舗では毎週曜日限定で、地元の方々が野菜や惣菜を販売する「なんでもバザール(通称『なんバザ』!!)」が開催されるのだが、どうやら今日はその「収穫感謝祭」とやらで、イベントを開催しているらしい。
朝からスピーカーがその内容や売出品目を懸命にアピールしている。

実は私、このアナウンスをしている方が気になってしょうがない。

声の感じからすると、おそらく40~50代の男性なのだが、カツゼツが素晴らしく良く、トーンもちょうど良い。
例えるなら、今では見かける機会が少なくなったものの、平和な住宅地には欠かせない「たけや~さおだけ~」の声を想像して頂ければ丁度よい。

講義をする関係上、普段からそれらのポイントを気にする私からすれば「ムム!おぬしなかなかやるな!!」という感じなのである。
先日あった祭りで「山車」の事を「やまぐるま、やまぐるま」と連呼するセンスはご愛嬌と言えよう。

とここまで書いた時点で、やはり気になってしまい、「なんバザ」を覗く事にする。

いつもの品揃えに加えて、出入り口周辺にはお汁粉とおでんの出店、中では手打ち蕎麦を売っていて、普段余り見かけない世代の方々(つまりいつも「なんバザ」にくるのは人生の先輩方ばかりなのだ!)も舌鼓を打っている。

美味しそうな香りに気を惹かれつつも、私はお目当てである「カレーライス売場」を探した。
ところがである。いくら見渡してもそれらしきコーナーは見つからない。
それどころか、あの食欲をそそる独特のスパイシーな気配すら漂っていないではないか!

「あの~、さっき放送で言ってたカレーは売り切れたんすかね?」

不審に思った私は、意を決して商店街のおかみさんに尋ねた。
するとその方は一瞬怪訝な顔をしてこう続けた。

「カレー?
 ああライスカレーは明日だよ。
 何?
 放送で言ってたって?
 困ったもんだねぇ。
 しょっちゅう間違うんだよ、あのアナウンス…。」

嗚呼まだ見ぬ「やまぐるまの人」よ!
エッセイのオチを作ってくれてありがとう…。


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