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人と出会いとマニフェスト/連載エッセイ vol.18

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.20(2003年12月)」掲載(原文ママ)。

「センセイって本当に楽しそうですね」。
患者サンから(呆れ半分に)よく言われる。

確かに毎日が楽しい。
この仕事は、日々発見、日々勉強の連続であるから、充実しないわけがない。

もちろん、シンドイ事も少なからずはある。
しかし、それを自力で乗り越えた瞬間がたまらない。

結果、常に目を輝かせた、気色の悪い白衣男が誕生するわけである。

この「楽しさ」の中でも、私が特にお気に入りなのは、「人との出会い」である。

「カイロプラクティック」という、少々マニアックな、それでいて有無を言わせぬ説得力を持つ特殊技能を手にしたおかげで、私はどれだけ貴重な出会いを手に入れただろう。

人見知りの激しい私は、特にその依存度が高い。
ありがたや、ありがたや。

先日もこんな事があった。

その日、私は次の予約患者サンを待つ間、不覚にもデスクでうたた寝をしてしまっていた。
すると、時間前のはずなのに、院に人が入ってくる気配。

「誰だ!?」

臨戦態勢を整えて待合室に出ると、そこには患者サンではないが、どこかで見たことのある顔が立っていた。

「○×党のポスターを貼らせて下さい」。

時は総選挙前。
普通であれば一般の運動員と相場が落ち着くはずであったが、何かスッキリしない。

記憶の糸を辿る様に男性の顔を眺める私の脳内を、一陣のメロディーが流れた…。

「♪あっあ~あっあ~、海の魂よぉ~♪」

彼こそ「みちのくプロレス」所属の演歌歌手「気仙沼次郎(けせん・ぬまじろう:元ヨネ原人)」であった。

なんでも、政党ポスターを貼らせて貰いがてら、来年1月に開催予定の興行ポスターを掲示してくれる店舗をあたっているとの事。

私は二つ返事で快諾し、院に常備の「みちプロ・パンフレット」にサインを貰った。

「いや~、院を開けていると色んなヒトが来るもんだなぁ~」と次の日私が感慨に耽っていると、今度は「ごめんくださぁ~い」と元気な呼び声。

今度こそ起きていた私は、素早く顔を覗かせた瞬間、思わず心のリングマイクを握り締めて叫んだ!!

「東北の英雄ぅぅ~!! ザァ・グレェェィトゥ~・サァスゥケェェ~!!!!」

ライトの下で跳び回る姿よりは幾分小柄に見える勇姿が、満面の笑みを湛えて(もちろん想像。議会用のマスクじゃなかったし…)立っていた。

患者サンであり県議のKさんを介して、一度電話で話した事はあっても、やはり「生サスケ」違う。

選挙応援をする彼の立場を無視して、舞い上がった私は必死に自己アピールを繰り返した。
「沼次郎」を心のステージからリングアウトさせて…。

「それじゃあ、今度ワタシの体をみて下さい」。

優しい社交辞令と共に爽やかに去っていく彼の後姿へ、しかし私はこう呟くのだった。

「その『マニフェスト』は守ってね…」。


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