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終わらせられなかったものを、終わらせるために

9月30日、5年前に執筆を止めた自分の小説を完結させました。

何故、途中で止まっていた何年も前の小説を終わらせようとしたのか。その理由はとある漫画と、沢山の思いにありました。

作品を完結させるのは難しい

私は10歳の頃から小説を書いています。きっかけは友達が書いていたのと、ジブリ映画「耳をすませば」の主人公・雫に影響されたからでした。

これまで一次創作(オリジナル作品)も、アニメやゲームのキャラを扱う二次創作の作品も書いてきました。

小説に限らず、あらゆる作品を完結させるのは簡単ではありません。
小説であれば、登場人物やストーリーを考え、出だしを書き、物語の起伏をつけて終わらせる。

作品の長さにもよりますが、星新一さんの小説のようなショートショートでも一定の作業をこなし、作品をよくするために吟味します。

これが中編や長編、連載となると、ゴールの見えないマラソンをずっとしているような錯覚に陥り、プロでない限り投げ出してしまうこともザラです。

私は「会員制サークル」という、有志の方が会員を募り、創作物を会誌・会報にまとめて発行する集まりに入っていました。
小説の連載を載せてもらい、時間をかけてもそこで完結するというサイクルを一定数繰り返してきたため、ある程度慣れることができました。

一次選考にも通りませんでしたが、新人賞に応募するため10万字の作品も一作だけ書き上げたことがあります。

終わらせられなかった作品も沢山存在します。
特に息子が産まれてからは、執筆にばかりかまけている訳にはいきません。
暮らしのなかで心をすり減らす時期もあり、創作意欲自体が萎えることも増えていました。

その一方で、ここ数年途中で止まったままの小説が何作品かあり、ふと登場人物のことを考えては「あのキャラたちの話を終わらせてあげたい」と思うこともしばしばでした。

漫画「ベルセルク」が未完に終わるかもしれない

今年の春頃、長編ダークファンタジー漫画「ベルセルク」の作者、三浦健太郎先生が亡くなったと報じられました。

「ベルセルク」は1989年から連載され、何度も長期休載を挟みながら続いていた漫画でした。

重厚でハードな描写が多い分、人間という生き物や世界の理を克明に描いた作品で、私は傷つきながら闘う主人公のガッツの姿に生きる力をもらっていました。

最新刊の41巻が12月に出ると発表されましたが、三浦健太郎先生の急逝、また緻密な作画を先生の逝去後どうするのかという問題もあり、今後の連載予定は未定となっています。
おそらく「未完」に終わるのが大方の見方のようです。

作中でようやく旅路に希望が見え、続きを心待ちにしていた矢先のことでした。
先生の死と、最後まで物語を見届けられないであろうことがただただ残念でなりません。

過去のインタビューで、結末について「ハッピーエンド」と仰っていたのが救いです。

物語の「終わり」へ行くための思い

当たり前にできていること、暮らせていることがいつ変わるか分かりません。
実際にがらりと変化してしまった世の中を私たちは生きています。

大きな喪失を味わった私は、終わらせられなかった自分の作品を終わらせようと決意しました。
たとえアマチュアの作品であっても、すくなくとも私が私の物語の終わりを読みたかったのです

また、奇しくも三浦健太郎先生の訃報を知る前に、私は半年止まっていた二次創作の連載を完結させていました。
決して多くの方に読まれた訳ではありませんが、完結したことにより掲載先のサイトで閲覧数やブックマークが増えたのは確かでした。
自分だけでなく、終わりを待っていてくれた方がいたのです

冒頭で述べた作品は約5万5千字。止まっていた時点ではその半分でした。また、何年も前の作品だったため内容の修正やディティールの掘り下げをできるだけ行いました。

また、完結に向け「自分で〆切を作る」ためにも、投稿先のサイトで開催されている賞コンテストの〆切を期限に据えました。

家庭の事情で一時期小説に時間が割けなくなり、またnoteを再開したこともあって、一時は〆切を過ぎてから発表しようと考えました。

ですが上記の理由以外にも、妹が漫画を描き上げて新人賞に応募したことが大きな励みと刺激になり、結果〆切までに完結させて賞コンテストにも応募できました。

妹とは近況報告を定期的にしているので、小説を完結させたと連絡すると「すごいね」「お疲れ様!」と労ってくれました。

そして、また始める

終わらせられなかったけど終わらせたい作品が、ほかにもあります。
最後まで物語の筋が定まっておらず、舞台も現代ではないので資料集めも多く必要とします。

ですが、書き始めた頃とは違います。
いくつかの作品を終わらせることができた自信、最後まで物語を見届けられたときの充実感、そして「終わらせたくても終わらせられなかった」、おそらく未完になるであろう作品の存在が、心のなかに残っています。
妹も漫画という形で、似たような道を走り続けています。

どうしても終わらせられないものもあります。きれいに終わらせることだけが全てではありません。私も途中で投げ出してしまったもの、逃げたことのほうが多いです。

それでも、ひとつでも「終わり」にして、積み重ねていくことで、必ず得られるものがあります。新しいことへ走り出せます。

次の終わりに向けて、息を整えたらまた始めます。

※表紙画像はマンガサイト「アル」さんより、使えるコマのサービスから「ベルセルク」のワンシーンをお借りしました。ありがとうございます。
併せて三浦健太郎先生のご冥福をお祈りします。

◇◇◇

小説投稿サイトへのリンクをプロフィール記事に貼りました。恋愛作品を発表しています。ご興味がありましたら覗いてみてください。
この記事でふれた作品は「エブリスタ」さんに掲載しているものです。


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