見出し画像

「しない」では定まらない




先日、とある企業の選考を兼ねたイベントに参加した。それは、二日間で初対面の人とチームを組み、事業を提案、プレゼンするというものだった。ただ事業を考えるだけではなく、会社そのものを創造するという目的だったので、その会社のビジョンやミッション、行動方針まで決めるところから始まったのが、とても新鮮だったのをよく覚えている。

テーマがソーシャルビジネス、ということで社会問題を解決すること・お金を稼ぐことの二点を踏まえることの難しさを、改めて痛感した。まず人を雇うことで生じるコストの大きさにも震えたし、細かいシュミレーションをして支出を計算することの煩わしさ、加えて商品・サービスの開発、その見積もりの難解さも痛感した。

何より自分がその事業を本気で回すことを想定したからこそ見えてきたものがおっかなくて、一筋縄では行かない理由がよく分かった。雇用することの責任、社会問題に困らされている人に手を差し伸べるからこそ、事業継続の責任は通常の企業のそれと比べ物にならないくらい大きいのだ。ソーシャルビジネスは想いで始まるのかも知れないが、果たしなく数字に対する比重が重い業界だと気づき、ビジネスに向き合うことのリアルをまじまじと思い知らされた時間だった。


「やりたい事をやる」って事は「やりたくない事をやらない」ってことではない。むしろ「やりたい事のため」に「やりたくない事」をやらないといけない。


これはDJ社長の言葉である。まさしくこれだ、と感じる瞬間にたくさん出会った。これをソーシャルビジネスに当てはめると、「社会問題を解決したいのに、いっぱいお金を稼がなくてはいけない」ってことではないだろうか。お金を稼ぎたくないわけではないと思うが、社会問題解決のために一番忘れがちな収益の問題。ここに向き合い続けることができるかどうか、正直そこでしかない、とも思った。何より数字が大事なのだ、その数字のひとつひとつに自分が解決したい社会問題の当事者がいるから。

ソーシャルビジネスは「お金」である。ただ、その「お金」にどれだけコミットすることができるか、というのは自分の中にある社会問題に対する想いというのが、何より面白い点ではないだろうか。少なくとも、私はそう思う。


画像1


組織について少し考えてみる。


今回参加したイベントはチームで事業を考えるというのだった。今後何かを企んで実行に移すことがあったとして、そのほとんどの場面で人と関わることになるだろう。組織までは行かずとも、少数と手を組んだりして集まり動くことが予想される。つまりチームが必然的に発生するということだ、そしてその発生したチームの出来が、結果に直接的に影響してくる。そんなチームをつくる上で「してはいけないこと」というものに、今回は気づけたような気がする。


チームにおける一番重要な点は、方向性だと私は思っている。目的があるから発生するチームである限り、その目的に向かう方向性がチームの推進力だ。方向性によって、目的地までの距離も速度も変わってくるので、チームの色が反映されるべきであり、それを言語化したものを「ビジョン」と、そう呼んでいるのだろう。

そんな「ビジョン」は、きっとチーム全員の共有する価値観を据えるのが一番であると思うが、世の中そう上手くいくものではない。社会に出たら、特に何も知らない人たちと仕事をするのがほとんどになるのだろう。そんなメンバーで一々価値観を共有している場合ではない、時間もない。なので、その目的地に辿りつけるように、指針を決めなければならない。皆が同じ方向を向いているところをビジョンにするのではなく、同じ方向を向かせるための矢印がビジョン、それが、俗にいうビジョンというものの捉え方な気がしている。

それが正しいとか間違っているとかの話ではなく、どちらも有効な場面や不必要なタイミングがある。最終的に目的地に到達できれば、それでいいのだ。それらをうまく使い分け、どのようなルートを通るか判断し導くことを経営、ときっというのだろう。経営者というのは、船長というより航海士にきっと近い。そして世の中の人々はこんな抽象化した言葉などではなく、もっと具体的な経営の方法を求め、彷徨っている。少なくとも私の目にはそう映る。


話が逸れたが、今回は私が得た知見は後者のもの、つまり同じ方向を向かせるための「ビジョン」についてだ。


画像2


組織をつくり、その方向性を決める時にしてはいけないこと、というのは冒頭でも書いた通り、「~しない」という表現と取ることだ。ビジョンや行動指針において「~しない」というカタチで行動を縛るのは、正直意味がない、というのが今回の一番の学びである。そんな当たり前のことに、今更ながら気がついた。


例を挙げるとすると、今回私が参加したチームの行動指針は「遠慮しない」というものだった。「初対面で気を遣ってしまうかもしれないが、時間もないし力を合わせて成果を出すために、遠慮とかいう障壁を取っ払おう!」みたいなノリで決まったのだが、結局二日間を通し、私は終始遠慮していた。そして、それはメンバー全体の空気感にも現れていた。

一日目の夜の反省会で、ディスカッションがなかなか進まないことが議題になった。その原因を突き詰めていった結果、まだまだみんな遠慮しているから、という結論に至り、遠慮しない方法を模索することに。話し合いの結果、最終的に「自分が意見を言い終わったら、”以上”か”○○さんはどう思いますか”を語尾につける」という方法を試すことになった。

オンラインでのディスカッションなので、会話の間が対面より掴みにくい状態が少なからずあった。それを変えるため、原始的な方法で会話のボールの所在を明らかにしたのだが、この方法で案外改善はした気がした。二日目の方が確実に話は弾んでいたし、全員の声が聞こえると物事の決定はスムーズにいく。人は話を振られる方が話しやすい、というのは多くの人間に当てはまるらしい。

それでも、私は最後まで遠慮をしていた。言いたいことを言わなかった訳ではないし、積極的に色んな人に話も振った。「チームがこう動いたらうまくいきそうだな」というのに則り、動いたつもりである。それでも自分の中の価値観である「遠慮していない状態」には当てはまってなかった。

というか、遠慮しないってどういう状態?という、そもそもの疑問が浮かんできた。私自身の中には答えはあるが、それをチームに当てはめていいものかわからないし、個人個人で「遠慮しない状態」の答えは違ってくる。このチームにおける遠慮しないって、いったい何をすればいいの?というのが最後まで分からず、自分の中の遠慮してないメーターは振り切れることはなかった。


画像3


拙い説明で申し訳ないが、言いたかったことが伝わっただろうか。そもそも遠慮することが悪い事なのか、は一旦おいてまとめると、「~しない」というチームの価値観は、「何をすべきか」決めてはくれない、ということである。最終的にどう動くかは、行う個人に委ねられている状態。それが「~しないビジョン」なのである。正直、このビジョンは知らない人たちが集まる急造チームにおいては、何も働きかけないのではないだろうか。

全体の方向性に従わせるためのビジョンにおいて、何をすればいいかわからないというのは言わば、線をなぞれという課題で、白紙を配られるようなものである。ビジョンを決めたのに、そのビジョンは一体何をしなければいけないか、更に説明を加えなければならない、という何とも遠回しなものになってしまう。言葉の無駄遣いこの上ない。目的を達成するためにどんな行動を取る組織であるか、を決めるビジョンで、何をしないか決めるなんてそもそも破綻している、と私なんかは思う。

それを知ってから、ルールや法律であっても「~したらダメ、したら罰金」という書き方をしているのが、ほとんどだということに気づく。した行動に対してどのように判断するか、の方が圧倒的にわかりやすいし、行動しやすい。それをすればいい、もしくはしなければいい、それだけだからだ。しかし、「~しないことをする、~しないことをしない」は、全然わからない。何をしたらいいのか、したらダメなのか、全然見えてこない。「~しない」では、定まらないのだ。その言葉だけで、どう行動するのかわからないものは、ビジョンとは呼べないだろう。

それは、「~しない」に限らず、曖昧なものもそうだ。「本音で話す」とかもまさしくそうで、「本音とは何か」が必要になってくるからだ。普段言ってないことを言えばいいのか、相手が傷つくことでも思っていることを言うのか、そこまで示さなきゃ方向性は見えない。言ってしまえば、方向性が見えるまで翻訳した言葉こそ、ビジョンにするべきだ。結局ビジョンは、「~する」というものでなければ末端まで届かない、ということ。別に具体的でなければならない、とそういうこと言いたい訳ではない。方向性が見えればいい、一言で行動の方向性を示してほしいだけだ。


「何をするかも大事だが、何をしないかも大事だ」


という言葉を最近よく聞くが、それをチームに当てはめるのだけはやめた方がいい。

集まってできる組織は、昔からの連れがいるような仲良しこよしではなく、それぞれプライドが育ち切った成人たちだ。ラストワンマイルの部分を、個々の価値観に委ねてはならない。同じ行動になるわけがない、必ずまとまらなくなる。束になりきれない組織は結局弱い、から方便でもいい。輪ゴムのように一定期間まとまれるようなものを「ビジョン」で示しておくべきだ。と、チーム作り初心者のわたくしめが、僭越ながら助言させていただく。



みんなそのままで同じ方向をみる「ビジョン」の魔法が発動するのは、「~するビジョン」だけなのである。




#配送あるある #ミミクソダイアリー #毎週投稿 #ゆるゆる投稿 #日々追記  
#コラム #ビジネス #組織 #チーム #ソーシャルビジネス #ビジョン
#最近の学び #就活体験記

この記事が参加している募集

#最近の学び

181,931件

#就活体験記

11,873件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?