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HELLにあ

こんなことしてる場合じゃないのに。

大事な時に限って私の体は言うことを聞かない。

ヘルニアだと言われて、もうすぐ一週間になる。

毎日、だくだくの汗と、さながらロボット歩きで
“ただ普通に歩くこと”が、どれだけ素晴らしく、
尊い行為だったのかを毎秒思い知らされる。

たった少しの階段が、途方もなく高い壁に見えて
数メートル先のコンビニが、果てしなく遠い。

同じ姿勢と大荷物が腰に負担だからと言って、
人生で初めて学校を休んだ。

ごっついコルセットのせいで、大好きだった服や
ハイヒールも諦めるしかない。

ただ腰が痛い。

それ以外は本当に完璧なのに、この病のせいで、途端に人生が真っ暗になった気がする。

地獄に突き落とされたような、もう一生戻れないような、そんな果てしない孤独に苛まれる。

だけど少しだけ。

「湿布、いつでも貼りに行くからね」
「腰、どうですか?買い物行こうか?」

毎日のように心配してくれる恋人の優しさが、
何度もまあるく包み込んでくれるから。

「大丈夫!あとは任せて!」
「任せすぎちゃってごめん。ゆっくり休んでね」

クラスのみんなが、仕事を沢山代わってくれた。

ファッションショーまで残りわずか。ここまで
作り込んだ作品に、妥協なんて似合わない。

地獄に堕ちなければ、気づけなかったであろう
小さな優しさの結晶。

腰は痛いままだけれど、この煌めきのおかげで、
まだ諦めてはいけないのだと、前を向いていられる。

腰がなんだ。諦めるものですか。

そうでしょ?

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