Christmas Grotto(クリスマス グロトー)
イギリスの子供たちは、だいたい7歳ぐらいまではサンタクロースの存在を信じている、信じようとしています。
7歳ぐらいからお兄ちゃんお姉ちゃんのいる子たちが
「まだサンタを信じてるの?(嘲笑)お兄ちゃんが言ってたけど、サンタは本当はお父さんらしいよ。ワッハハ」
と徐々にナイーブで幼い、まだ夢の国を信じている同級生の夢をガンガン崩そうと試み始めます。
でも親たちは、なんとか我が子にサンタクロースの存在を信じさせようとがんばります。
両親:「サンタクロースの存在に疑いを持つ人もいるのは事実。お父さんもお母さんも、サンタクロースがいないというお友達の話を聞くたびに少しだけ疑ったことがあるけれど、これは覚えておかなければいけないのよ、エマ…」
「サンタクロースは、信じている人のところに来るんだよ。」
まさしく『子供だましのセリフ』ですよね。
でもこの言葉で「サンタはいるんだ!」と信じようとする子はいるみたいです。子供は同級生がなんと言っても、本当は信じていたいのです。
クリスマス グロトー とは?
サンタクロースを信じている子供たちが『本物の』サンタクロースに会って、サンタさんから直接プレゼントをもらったり一緒に写真をとってもらえるという場所です。
(余談:イギリスではサンタクロースの事を『Father Christmas』と言う人が多いです。)
デパートのおもちゃ売り場や子供服の階の一角に会場が設けられ、大きなアームチェアーに『本物の』サンタクロースが座っていて、子供が来るのを待っています。
デパートの他には、小学校で行われるクリスマスフェアの会場や、動物園や遊園地など子供が集まりそうな場所に、クリスマスの数週間前ぐらいからグロトーの会場が設けられます。
『本物の』サンタクロース ①
娘が3歳ぐらいの時の話です。
デパートの子供服の階のエスカレーターのそばに設けられていた会場を見て、私のママ友が「グロトーに行ってみる?」と提案してきたので、当時グロトーがなんだかわからなかったのですが、友達の提案に同意。娘に『本物の』サンタクロースに会う旨を伝えたところ、あまりに急な話に不安を感じたようだったので、娘の手を握って、自分たちの番が来るのを待っていました。
『本物の』 サンタ①と子供の会話はこんな感じです。
『本物の』 サンタ①
:今日は来てくれてありがとう。僕はトナカイとそりできたんだけど、君はどうやってここまで来たの?
娘: ・・・
私:車できたんだよね。(エマに同意を求める)
娘: ・・・
『本物の』 サンタ①
: お名前は?
娘: エマ。
『本物の』 サンタ①
: 君はいい子でこの1年がんばっていたかな?
娘: ・・・
私: がんばっていたよね?
娘: (頷く)
『本物の』 サンタ①
: それはすごい!これは君が頑張ったご褒美。これからも両親のいう事を聞いて、いい子でいるんだよ。
娘: (頷く)
ちなみにうちの娘は、この時はサンタクロースを信じていました。信じているから、『本物の』 サンタ①を見て、硬直してしまっていました。目にはうっすら涙さえうかんでいました。
夢の国から来た、両親から話として聞いていた、本で読んだことしかない『伝説のサンタクロース』が自分の目の前に現れるというのは、嬉しいというより、ちょっとあまりの衝撃に怖ささえ感じるという感じなのでしょう。
上記の会話の後、ご褒美に『本物の』 サンタ①が用意してくれていた、子供たちがクリスマスに向け事前に書いている『Wish List(欲しいものお願いリスト)』には書いていない、不思議なプレゼントをもらいました。
娘は、そこでちょっとした疑問を感じたようです。
エマ: サンタクロースは私の書いた(私が実際には代筆して作っていた)『Wish List(ほしいものお願いリスト)』を見てないのかな。私はパズルなんてリストに書いてなかったけど…?
と、サンタにお願いもしていないプレゼントを片手に考えこんでいました。
最後は写真撮影です。
『本物の』 サンタ①
との写真撮影の時に、『本物の』 サンタ①の膝の上に小さかった娘をのせる際に気づいたんです。
「ん???酒臭い???」
サンタクロースのイメージはこんな感じ。
お気づきでしょうか。子供たちの信じているサンタクロースのイメージは、寒いところから来たからなのか、顔が赤いんです。
『本物の』 サンタ①
の頬も鼻も、このイメージとおんなじでした。
もしや演出の為に酔っぱらってる?
そのあまりにも強い『ウイスキー臭』に一瞬後ずさりしてしまうほどでした。
(ちなみに、イギリスではサンタクロースはウィスキー好きと言う認識があるようです。)
子供の安全とか考えると怒る人もいたかもしれませんが、世界中の良い子にプレゼントを配っているサンタクロースが、昼間っから、しかも仕事中にアルコールを摂取していると言うギャップに、私は吹き出しそうになって、それを止めるのが大変でした。
夢の国から来た『本物の』 サンタは、100人以上の子供たちと同じ会話をして、写真撮影を強要される一日を過ごすのは、仕事とは言え、お酒でものんでないとやってられないのかな、とちょっと同情しちゃいました(笑)。
本物のサンタクロース②
『本物のサンタクロース②』は、動物園の特設会場で行われてるグロトーで出会いました。
それは有料ということもあり、入り口からマジカルな感じで、受付でエルフの恰好をしたスタッフが私たちを出迎えてくれました。その時は友達の子供たち2人と一緒にいきました。
個室に案内されると、『本物のサンタクロース②』が笑顔で迎えてくれました。
『本物のサンタクロース②』
は、『本物のサンタクロース①』より顔は赤くなく、痩せていました… ガリガリな感じ。
痩せたサンタ・・・ といえばいいのか、健康に気を遣っているヘルシーなサンタといえばいいのか。
そして、この『本物のサンタクロース②』は、対応がちょっと事務的。
予約がいっぱいなのか、
サンタ:「ようこそ!」の後は、さっそく締めのセリフ。
「いい子にしてたかな?」
子どもたちは強張った表情が崩れる間もなく写真撮影が始まり、後でその写真をみたら3人の子供全員が無表情でした。
やっぱり子供の持っているサンタクロースのイメージというものがありますので、サンタは『ちょっとおデブ』ぐらいがいいですね。(笑)
本物のサンタクロース③
これは通っていた小学校のクリスマスフェアで出会ったサンタクロースです。
大人気のグロトーには大勢の生徒が親と一緒に並んで呼ばれるのを待っていました。偶然私たちの前に並んでいた同級生のレキシ-とソフィーと一緒に呼ばれ、『本物の』サンタクロース③のところに行きました。
だれがどう見てもAmazonで500円ぐらいで買えそうな、安っぽいコスチュームを着て、綿でできているひげをつけている『ただの仮装おじさんが』椅子に座っていました。どうみても怪しいかんじのサンタクロース。
そして『本物のサンタクロース③』は、赤の三角帽子をかぶっていました。
その三角帽子の下には… 髪がない。
「どうみてもWood先生だ…」
Wood先生、髪が薄いと言うか… ハゲなんです。
学校の先生が『本物の』サンタクロース③とわかり、また吹き出しそうになってしまった私は、まともにWood先生サンタを見ることができず困っていたので、子供たちのことばかり見るようにしていました。
すると子供たちの表情は、「Wood先生 だよね」という、なんとも文字では表現できない、疑うような夢を壊されて怒っているような、困惑した表情で『本物の』サンタクロース③=Wood先生を見つめていました。
偉いなと思ったのは、3人の女の子は当時6歳ぐらいでしたが、Wood先生に気を遣ったのか、誰も「Are you Mr Wood?」とは言わず、おきまりの「いい子にしてたかな?」の質問の後、『Wish List(ほしいものお願いリスト)』にない不思議なおもちゃをもらって部屋を出ました。
もちろん、部屋を出たあとの会話は、
「Wood先生だったよね。」
夢をかなえる目的のクリスマス グロトーですが、考えてみたら、会ったこともない赤い服を着たおじいさん(バイトの)と会話をさせられ、自分はサンタだと名乗る初めて会うおじさんの膝の上に載せられ写真のポーズをとらされるというのは、子供の年齢や性格によりけりですが、かなり恐怖に近いものがありますよね。
実際、こんな感じで泣き叫んでいる子供もみたことがあります。
サンタクロースの重い責任
サンタクロースを信じる信じないをめぐって、ママ友同士が不仲になるというケースも見ました。
サンタクロースを信じるアリス。
サンタクロースはいないというメガン。
学校で、メガンがアリスに「サンタを信じる人はみんなバカ」と発言。
家でアリスがお母さんにその話を伝えたところ、アリスのお母さんがメガンのお母さんに文句を言い、それから口を利かなくなったということがありました。
幸せと夢を運んでくれるサンタクロースが、まるで宗教の信仰の理解の違いで争うような不和の原因となるなんて… クリスマスは親からプレゼントを貰えるラッキーな日(行事)と言う程度の認識の仕方しかしていなかった私には、ちょっと驚きでした。
夢を子供に与えるサンタクロース。世界を一瞬でもひとつにできるぐらい大きな存在のサンタさん。世界中にいるサンタクロースを信じている子供たちとその親たちからの期待と、その期待に応えないといけないという責任の重圧から、やっぱりウィスキーでも飲んでないとやってられないのが現実かもしれません(笑)。
『本物の』サンタクロース
さんたちは、あと数日で重圧から解放されます。『本物の』サンタクロースさんたちは、子供たちがしているクリスマスまでのうきうきするカウントダウンとは違う意味のカウントダウンを心の中でしながら、毎日知らない子供と会話し、一緒に子供たちと写真をとられているのかもしれません。
お疲れ様、『本物の』サンタクロースさんたち。
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