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ナンバー2人物史 畏れられて愛される絶対的存在 仕事力と人間力を兼ね備えた諸葛孔明

中国の歴史上で、名宰相、最高のナンバー2といえばこの人しかいないと個人的にも思う人。三国志に詳しくなくてもご存じの方も多い、諸葛孔明です。

孔明は、中国の三国時代に活躍した政治家であり、一方で、軍師、発明家でもあり、劉備の配下として、ライバルである曹操の魏、孫権の呉とともに天下三分の一角を占める蜀漢の建国と発展に大きく貢献しました。

孔明は、現代でいうと、総理大臣兼東京都知事兼防衛庁長官といったところで、常人を超える有能な人物でした。

そんな知恵と才能に満ちた孔明ですが、敵味方から畏敬の念を持たれ、また、仁義と忠誠に厚い人物として、多くの人々から愛されたと評されています。

人々から畏れられていたのに、愛されるとはどのような存在なのでしょうか。一見すると相反する評価ですので、とても興味深いですね。

今回は孔明がなぜ畏れられて愛される存在であったのか、その理由を解説しながら、現代の補佐役、ナンバー2、経営幹部、チームリーダーの在り方について参考になるお話になれば嬉しいです。

■諸葛孔明が畏れられた理由


まず、孔明が民から畏れられた理由のひとつに、信賞必罰を徹底し、厳しく法を執行した点にあると言われています。

先人の智恵の多くを学んできた孔明は国の統治には法家(厳格な制度や規則で統治する考え方)の路線を採用し、功績のあった者には恩賞で報い、法を犯せば身内でも厳しく罰することを徹底しました。

その代表的なエピソードが、かの有名な「泣いて馬謖を斬る」です。

とはいえ、罪ある者も反省すれば赦し、言い逃れをする者は小さな罰でも厳しく罰する公明正大な態度がかえって民からの信頼を厚くさせ、敬愛されていました。

人に厳しい人と言われる人でも、自分自身や身内には甘いという人もいます。事実、孔明は先に述べた馬謖を罰した後に、任命、監督責任を取るために最高位である丞相の地位を自ら辞し、降格処分としました。(さらに、馬謖の家族へは生涯にわたり生活の保障もしています。)

部下の失敗や不始末だけを責め、処分するだけなら誰でもできますが、そうした事態を招いたのは自分の責任と考えられる人は本当に少ないものです。

そうした孔明の姿勢が部下や民の信頼を勝ち得た最大の要因だと思います。

決して自慢するつもりはありませんが、私も会社員としてナンバー2をしていた時には、自分自身は成果を出していても、会社全体で業績が悪い時には減給、賞与を固辞する申し出をし、自ら年収200~300万ほどあえて減らしたこともあります。

ちなみに、君主論を説いたマキァヴェリは「愛されるより、恐れられよ」と言っています。

道徳と統治を切り離し、君主は善と悪をうまく使い分けることが重要であり、「君主は愛されるのと恐れられるのと、どちらがいいだろうか。もちろん、両方であるのが望ましいが、それが難しければ、愛されるより怖れられるほうがずっとよい。」としています。

それだけ孔明の行いや姿勢は難しいことなのだとよくわかりますね。

孔明が畏れられた別の理由は彼の卓越した戦略と発明が挙げられます。彼は、劉備亡き後の北伐での戦いなど、数々の歴史的な戦闘でも大きな貢献をしました。

彼は、敵の動向を見抜き、自らの計略を巧みに実行し、連弩や木牛流馬などの多くの兵器や道具も発明し、戦闘や生活に役立てました。彼の戦略と発明は、敵に文字通り恐れられ、味方からは頼りにされました。

■孔明が人々から愛された理由

次に、孔明が愛された理由として、彼の人格と人間性が挙げられます。彼は、劉備に絶対的な忠誠を誓い、劉備亡き後も生涯にわたって仕えた忠君でもありますが、自分の部下や民衆に対しても優しく、慈悲深い姿勢で接していました。

戦においてもその姿勢は変わることはありませんでした。とある困難な戦において、兵の疲弊に配慮し、兵に交代を促し帰国するよう命じましたが、その気持ちに応えるように兵はむしろ発奮し、戦に勝利することができたというエピソードもあります。

これも有名な話ですが、劉備が臨終に際して、「自分の息子である劉禅が無能であったなら孔明が国王となり、蜀の国を率いて欲しい」と言われましたが、固辞したそうです。

実質的に国王としての働きをしつつも、主君の遺児を守り続け、栄誉も富も望まないその高潔な姿勢に部下や民衆の支持もますます高まります。

果たして、孔明が亡くなった後に明らかになったことですが、目立った財産は少なく、家族が食べていける程度の財産しか保有していなかったそうです。

平時は国力を富ませるために尽力し、戦となればあらん限りの智謀を繰り出し、弱小国家である蜀を率いて強大な魏への抵抗を続けることができたのは孔明の存在なしにあり得ませんし、実際、孔明が亡くなった後、最終的に蜀という国は滅亡することになってしまいました。

孔明は三国時代の英雄としてだけでなく、今なお多くの人々に親しまれ、理想のリーダーの一人として評価されているのはこうした理由からなのだと思います。

■あなたの会社にも”隠れ孔明”がいるかもしれない

孔明という人物に思いをはせる際に感じることは、現代において仕事力と人間力の両方を兼ね備えている人は稀有な存在だということです。まして組織に属し、人に仕える立場であればなおさらです。

一方で、孔明ほどのレベルではないにしろ、会社の中で八面六臂の活躍をしている人材も必ずどこかにはいると思います。

組織を裏方として支える有能で人間力のある人というのは世の中で日の目を見ることはほとんどありませんからその存在が認知されていないだけでしょう。

また、実力も成果も出しているのに、本人が謙虚なために目立たないだけかもしれませんね。

残念ながら多くの会社では実績が上がればそれは全て社長の手柄として宣伝されることの方が多いこともあります。

後付けで「それは当初から自分が描いた構想のとおりに実現し、成果を出すことができた」みたいな自画自賛のインタビュー記事とか読んでいると気持ち悪いですね。

だから私個人は世の中の会社の良し悪しを判断する際には、社長が我が物顔で出しゃばり過ぎずに社員のお陰と謙虚に話しているかどうかを基準としていますし、陰で社員の悪口や不満ばかり言っている社長には何の魅力も感じません。

■補佐役、リーダーとして活躍するために孔明から学べること

孔明のエピソードについてはまだまだお伝えしきれないことが山のようにありますが、代表的なものについてのみご紹介してみました。

基本的に正史に基づいているので、赤壁の戦いで神秘的な力で東風の風を吹かせたといった話はもちろんありません。

私自身、若い頃から中国古典に傾倒しており、多くの名宰相や将軍などのエピソードに触れる機会は多いですが、孔明以上の才能や器量を持った人物はいないと感じています。

孔明の優れていた点、人間的な魅力を簡潔に述べるのであれば、

・冷静沈着であること
・寛容な心を持っていたこと
・学びを大量にしていたこと
・学んで得た知識を実践で用いていたこと
・私利私欲がなかったこと
・主君を立て、忠実であったこと
・決断力と行動力があったこと
・強く、高い志しを持っていたこと
・忍耐力を持っていたこと
・広い人脈を持っていたこと
・人との信頼関係を大切にしていたこと

言葉で言うと簡単そうに聞こえますが、これだけのものを備えていたのですから尊敬の念しか浮かびません。

能力が高いだけでは人を動かすことはできませんし、人を動かすためには自分を律したうえで相応の能力も必要となりますからバランスがとても大切ですね。

才有りて量無ければ、物を容るる能わず。量有りて才無ければ、亦事を済さず。両者兼ぬることを得可からずんば、寧ろ才を捨てて量を取らん。

人は才能があっても度量がなければ、人を包容することはできない。反対に度量があっても才能がなければ、事を成就することはできない。才能と度量と二つを兼ね備えることができないとしたら、才能を棄てて度量のある人間になれ。

「佐藤一斎 言志晩録」

参考までに佐藤一斎の言志四録の内の言志晩録も引用しておきます。

組織を本当の意味で動かせる人になるためには、能力が高いのは当たり前、そのうえ人間力が高いことがさらに求められているのであれば、人間力を高める努力も同時に行わないといけないのだと思います。

高すぎる理想と思われる人もいるかもしれませんが、理想や目標は高いほどそれを目指して努力することで人生も豊かになっていくのではないでしょうか。

僭越ながら、私が仕事として行っているナンバー2や経営幹部の育成支援というものは言うなれば孔明に近づくための多くの気づきや努力の方向性やその具体的方法などをコンテンツとして提供しています。

世の中の中小企業に孔明のような存在が増えて、「いい会社」がたくさん増えることが私自身の願いであり、志しです。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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