NO.2の育て方㊸ナンバー2を育てるために心がけること
年が明け、「今年こそは自分のナンバー2を育てたい」と考える社長もいらっしゃるかもしれません。
そんな社長のためにナンバー2を育てるにあたって、何から着手したらよいか、頭の整理をつけられるようにポイントを整理してお伝えしたいと思います。
経営者とナンバー2の双方の目線に立って解説していきますので、ナンバー2の感じ方も参考にしてみてください。必ずナンバー2の心境に変化をもたらします。
■自己理解する
先ず社長自身が自分を知ることが重要です。
自分という人間はこういうものと誰しも自分を理解しているように考えていますが、自分のことは案外正確に把握することはできないものです。
何が好きか嫌いか、何が得意で何が苦手か、何が出来ていて何が出来ていないのか、それすらも誤った解釈をしている場合があります。
プライドが邪魔をしたり、自己評価が高すぎて、実際には出来ていないことまで出来ていると思い込んでいる社長も多いです。
客観的に自分を棚卸しして、厳しめに自己評価してみることが必要です。方法としてはアナログですが紙に書き出すことをお勧めしています。
■自己開示する
社長という立場を強く意識する人にとっては、自分の弱みを部下に知られるのが嫌だという気持ちも強い傾向にあります。
社長として、いつでも毅然として、凛としていたい。そう考えるのはとても素晴らしい姿勢だと思います。
けれどもその結果、苦手なことまで抱え込んでしまい、誤った判断を繰り返したり、課題を先送りにしていたら本末転倒です。社長だからといっても全知全能である訳がないからです。
自己理解という作業を通じて実感した苦手なこと、出来ていないことをありのままナンバー2に伝える覚悟を持ちましょう。
自尊心を保つために事業が停滞するのであれば意味がありません。
■仕事の棚卸し/役割の明確化
ナンバー2として活躍して欲しいと願っても、具体的に何をして欲しいか、役割を明確にしない限り、ナンバー2も努力のしようがありません。
自己理解、自己開示はナンバー2に望む役割を明確にするための作業です。
そのうえで社長自身の仕事を棚卸しをして、自分がやりたいこと、社長としてしなければならないこと、ナンバー2に任せられることに整理、選別する必要があります。
そのうえでナンバー2としての具体的役割を示し、やらせてみることです。
■コミュニケーションの量を増やす
社長業は忙しいものです。けれども忙しさにかまけてコミュニケーションを疎かにしていると、社長はなにを考えているのかよくわからない存在というような認識を持たれます。
また、社長の威厳を保つために、自分に気安く話しかけるなオーラを出して社員を遠ざけている社長がいますが、コミュニケーションゼロで一方通行の指示しか出さない社長に心服する部下はいません。
マーケティング戦略では顧客との接触回数を増やせというのに、自分の部下とはコミュニケーションは取らない。そういう社長ではナンバー2はおろか社員とも良好な信頼関係を築くことはできません。
ナンバー2と適切な量と質のコミュニケーションを図らずにいると、指示の真意など伝わりませんし、方向違いの努力をさせる結果を招きます。
また、こうした姿勢でいると、ナンバー2に限らず、一般社員にとっても、コミュニケーションがないのに何を基準に評価しているんだという疑念を持たれ、何をどう頑張ろうがどうせ評価などされないという諦めの空気を社内に作り出し、活気のない会社にさせます。
親しみやすい、フランクな態度を取れということではありません。
必要なことはいつでもしっかり話し合える関係や雰囲気を作らないと人が寄り付きません。もし、誤った社長像に囚われていて、部下を遠ざけているのであれば見直す必要があります。
忙しいのであれば、定期的に予定を確保して話す時間を必ず設けましょう。
■理念を持つ/行動指針に落とし込む
経営理念を皆さんお持ちでしょうけれども、創業時に作ったままスローガン化していないでしょうか。また、掲げた理念と日々の現実の言動との間に乖離はないでしょうか。そして抽象的になりやすい理念を具体的な行動レベルまで示せているでしょうか。
理念として語られる言葉は耳障りがよいけれど、では具体的にどんな行動が理念の実践なのかが不明であれば単なるスローガンとなってしまいます。
また、社長自身が理念の実践を心がけているでしょうか。自分で掲げた理念を一番実践していないのが社長であったら社内は白けるでしょう。
リーダーは率先垂範が大原則で、理念を最も体現するのは社長の務めです。
自分で決めたことを守れないことほど説得力のないものはありません。
ナンバー2が社長に心服するのは、社長が掲げる理念そのものです。その理念を体現せずに、ナンバー2が社長の考え、行動に共感するはずはありません。
■権限移譲する/管理する/フィードバックする
ナンバー2の能力や姿勢にもよりますが、任せる以上は任せ切る覚悟を持たないといつまで経っても社長の指示に従うだけの当事者意識のないナンバー2にさせてしまいます。
初めから全権を与える必要はありません。実行過程や成果を見ながら段階的に権限を拡大させることです。もちろん任せると丸投げするは違いますからきっちり報連相を徹底させ、フィードバックを行います。
社長には細かな部分においても自分の流儀があると思いますし、勘所というものがあるはずですから自分の目線を教え込むことが必要です。
地道にチェック→指導を繰り返すことになりますが、自分の流儀に沿った仕事のやり方を身につけさせるためには辛抱強く指導を続けないといけません。
■意見に耳を傾ける
ワンマン体質で、部下の意見など聞く必要などないと考えている社長に意見を述べる部下は現れません。意見はどんどん言ってくれと言いながら、意見が上がると全否定する社長も全く同じです。
ナンバー2との間にも心理的安全性の確保が大事です。
意見を聞くというのは、自分の考えややり方への批判を受け止めることだけではありません。部下の感じ方を知る機会でもあります。
社長として正しい命令や指示を出したつもりであっても、それを実行する部下はどう受け止めているのかは会話をし、意見を聞かないとわかりません。
拙速だったか、ハードルが高すぎたか、社内の反感を買いやすいか、ナンバー2の意見を聞くことで、さまざまな角度から再検討する気づきを得ることができます。
■しつけをする
仕事を遂行するだけの能力があるので任せたとします。ナンバー2も中間管理職として現場のリーダーとして振舞うわけですが、ナンバー2という立場を笠に着て、社長には見せない傲慢な態度で現場に接していることも十分に考えられます。
うっかりすると派閥を組んでしまうこともあります。現場へのメッセージが自分の意図しない伝わり方をしている場合もあります。いずれも社長にとっては好ましくありません。
だからナンバー2の言動は管理監督、指導する必要があります。
これを怠ると、思い上がったナンバー2を助長させ、最悪は顧客や社員を引き連れて退職するような事態も起こり得ます。
■人間力を磨く努力をする
仕事はできるけれど、人間性に問題がある社長に人はついてきません。
・私利私欲で会社経営をしている
・傲慢である
・理不尽を強要している
・約束を守らない
・社員の悪口を陰で言う
ナンバー2でなくともこのような社長の元で本気で仕事をする社員はいないでしょう。
人間力を磨く努力とは具体的にこれらと真逆のことをすればいいだけです。
・社会、会社、社員、社員の家族、お客様、取引先のためになることを行う
公という考え方を実践しないといけません。
・謙虚さを身につける
成長する人間は素直さと謙虚さを持っていると伝える社長なら自ら実践し
ないといけません。
・仕事という大義名分のために理不尽を当然としない
やらないといけないことであればどうすれば円滑にできるか知恵を絞る。
・小さなことでも約束を守る
時間を守る、期限を守る。できない約束は軽率にしないことです。
・社員の悪口を人前で言わない
その悪口を聞いたナンバー2は自分がいないところでは自分も悪口を言わ
れているだろうと必ず思います。こうした社長は信頼するに値しません。
■感謝する、労う
ナンバー2も常に期待通りとはいかないまでも、成果を出すために必死に努力をするでしょう。
仕事ですし、役割としても高いレベルを求められるポジションですから、成果を出せてないのに努力などの過程を褒めたりするのも程度がありますが、少なくとも成果を出した際にはきちんと感謝の気持ちを伝え、労う必要があります。
案外、これができない社長は多いです。仮に、信頼しているからこそ出来て当たり前という気持ちであったとしても、言葉にしないことは伝わることはありません。
必要なタイミングでしっかり感謝と労いの言葉をかけましょう。たったこれだけのことでナンバー2の気持ちは変わります。
■見合った待遇を与える
期待を込めて初めから厚遇する必要はありません。仕事ですのであくまで成果を見て段階的に待遇を見直していけばよいです。
会社で唯一他人からの評価の対象から外れるのは社長です。自分の評価は自分でできますし、年収も自由に設定できます。
ナンバー2にはそれができません。ナンバー2も評価されたいと思いながら仕事に従事している社員のひとりです。
自分の命令指示に従い、適切なタイミングで意見を述べてくれ、成果も出してくれるにも関わらず、働きに見合った待遇を与えてくれない人間にナンバー2は全力で尽くすことはありません。
感謝、労いの言葉をかけることは大切とお伝えしましたが、待遇でもその気持ちを示す必要があります。
社長が他人に対して滅私奉公する気がないように、ナンバー2も滅私奉公をすることはありません。いずれ不満が爆発するでしょう。
ざっくりですが、社長がナンバー2を育てるための心がけをお伝えしました。ナンバー2を心服させ、ナンバー2を成長させることができるポイントばかりです。
ぜひ今年こそはご自身にとってのナンバー2を育ててみてください。
本稿が参考になりましたら幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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