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NO.2の育て方㊴ナンバー2は事業承継の後継者として適任か?

ナンバー2育成の話題のなかには事業承継を見据えた話も絡んでくることがあります。

私自身はナンバー2は後継者の候補になるものの、ナンバー2=後継者には必ずしもならないと考えています。その理由は後述しますので、まずは、事業承継を巡る現状を確認してみたいと思います。

■休廃業、解散した企業は倒産した企業の7倍
2021年における企業倒産件数は6,030件で、57年ぶりの低水準という調査結果となりましたが、同年に休廃業・解散した企業は全国で4万4,377件、倒産した7倍以上の企業が休廃業している現状があります。(東京商工リサーチ調べ)

■経営者の平均年齢は62.49歳
2021年度における全国の社長の平均年齢は62.49歳。
また、休廃業企業の代表者の年齢は
・80代以上が20.0%
・70代が42.6%
・60代が23.3%
60代以上が全体の8割以上を占めます。

どうでしょう?思ったより平均年齢が高い印象かもしれません。こうして経営者の高齢化が進んでいるものの、後継者がいないことで、黒字廃業を選択する場合も増えています。

■事業承継の2025年問題
日本の中小企業は、約380万社でその6割以上は後継者問題があると指摘されていて、この傾向が更に強まり、「2025年問題」と言われています。

2025年になると中小企業の経営者の3分の2が70歳に達し、245万社の経営者が70歳以上に達する見通しで、それらの会社のうち後継者不在の会社は約半数の120万社が後継者を決定していないそうです。

もしこの120万社が廃業した場合、経済産業省の推計によると、GDP損失は22兆円に及び、約650万人の雇用が失われるとも言われていますので、事業承継の問題は、その会社だけの問題でなく、日本経済全体にとっても大きな社会問題であることがおわかりいただけると思います。

■親族承継はもはや一般的ではなくなった
一昔前は経営者の子供や、子供の夫などが承継する場合が一般的でしたが、昨今は親族による事業承継の割合も減っています。

その原因として、少子化によってそもそも後継者候補が少ない、職業の選択肢が増えていて、わざわざリスクを覚悟して家業を継がないことなどが挙げられます。

他には、
・家業の将来性が見出せない
・負債や個人保証の負担に耐え切れない(経営者の個人保証についてはすでに見直しが図られています)
といった理由ももちろんあります。

こうした背景もあって、昨今は事業承継というと、後継者確保、育成よりも
・自社株評価と節税対策
・M&Aによる会社売却
ほぼこの二つのテーマで語られることが多いのが実状です。

一般的に事業承継のテーマは、
・人的資産の承継
・会社資産の承継
・知的資産の承継
この3つがメインで、人的資産のうち後継者の不在と育成が頭を悩ませる課題のひとつと言われています。

中小企業庁ミラサポより引用

■後継者になっている人は誰か
親族承継が減りつつあると説明しましたが、従業員が承継するケース(内部昇格)は2019年時点では33.4%と年々増えています。(ナンバー2であった人材が承継しているかは統計データでは不明です)

中小企業庁事業承継ハンドブックから引用

■ナンバー2は後継者に適任か
さて、冒頭の「ナンバー2は後継者の候補になるものの、ナンバー2=後継者には必ずしもならない」理由を述べていこうと思います。

ナンバー2の本質的役割はトップの補佐役です。補佐役を担うためには事業全体の理解が必要なので、一見すると後継者に最も相応しい能力と経験、資質があるように思えます。

ちなみに、ナンバー2のタイプを細分化すると以下の3つに分類できます。
①補佐型(トップの手足となって、事業を推進するタイプ)
②秘書型(トップが仕事をしやすいように段取りや調整を図るタイプ)
③参謀型(トップの構想を戦術として具体化するタイプ)

同じナンバー2と言えども、それぞれ似て非なる役目を担っています。

では、これらのナンバー2のうち、どのタイプなら後継者として成功しそうでしょうか。可能性だけなら①補佐型でしょうが、②秘書型③参謀型はトップには向いていません。理由は②③は現場で経営実務を担う経験に乏しいからです。

トップの担う経営実務は実行力や胆力を求められますから、誤解なく言うと、考える、調整を図るのが上手い程度では経営者にはなれません。

言うまでもなく、トップは経営に対する全責任を負う立場にあり、時には社内の反対を押し切っても決断することもあります。これは考えている以上に重たい責任と覚悟ですから、経営実務に慣れている人間ですら尻込みします。

これは私自身が長いナンバー2経験を持って、経営者になった現在を考えてみても全く次元の違う話だという実感も含んでいます。

また、ナンバー2を違う側面から言うと、計画が上手くいかなかった場合でも重い責任を背負わない気楽な立場でもあるのが現実で、トップの持つ覚悟の差で言えば天と地の開きがある訳です。

補佐役というのはトップの苦手な部分をサポートするのがメインであり、そのサポートできる能力がトップとして必要な能力と一致するかといえば必ずしもそうではありません。

ナンバー2はトップという対象があって成立する存在でもありますし、ナンバー2というポジションに就く人も、自分は目立ちたくないからという考えを持っていることも少なくありません。

仮に能力が高くても、トップとして活躍できるかどうかは全くの別問題であると言えます。

また、自身が有能なナンバー2であったとしたら、トップに立った時に果たして今度は部下を育成できるかという問題が発生する可能性もあります。

有能だからこそ、自分でやった方が早い、間違いないと思って、部下に仕事を任せることができないという状態に陥りやすくなります。

それまでは自分がトップの補佐役として、トップの弱みを補完していたはずなのに、自分がトップになると功を焦ったり、プライドが頭にもたげて、部下に弱みを見せられず、自分で全てを抱え込んでしまうことがあります。

トップが何もかも抱え込んでしまうと、事業が停滞する原因になりやすいからナンバー2を育てて、任せましょうと私もお伝えしていますが、不思議ですが、人間は立場が変わると考え方まで変わってしまうことがあるので、こうしたことが起き得てしまうのです。

■事業承継とナンバー2
事業承継という観点で言えば、現在のナンバー2が後継者として相応しいかどうかは仕事を任せてみて社長としての資質があるのかどうかを見極めないといけないでしょう。

そして、事業承継後の問題としてよく取り上げられるのは、代替わりした若い2代目社長が古参の番頭、ナンバー2としっくりいかない問題です。

新規事業をやりたがる2代目社長と現状維持を主張する古参のナンバー2が意見対立してしまうというよくある話です。

私が事業承継の局面でナンバー2の重要性を説くのであるなら、新社長を支える古参のナンバー2を再教育するか、ナンバー2も代替わりして新しいナンバー2を育成することを提案します。

では、結局は事業承継の後継者として相応しいのは誰なのかという点について意見を述べると、先代社長とは異なる能力や目線を持った人材を後継者候補として育成することが良いのではないかと思います。

理由は、どんな業種であっても変化が激しい時代にあって、従来のやり方を踏襲するだけでは会社を維持、成長させるのは難しいからです。

例えば現場一筋だった先代社長であったのであれば、戦略を立てることに長けているとかマーケティングに強いタイプの人材を後継者にするなどです。

昨今は、会社売却という方法ではありますが、起業の手段のひとつとして会社を買うというやり方も増えてきていて、まさにいま申し上げたような全く違う感性の新社長が廃業寸前の会社を復活させるような事例も増えてきています。

社長の能力を発揮させる補佐役や運営方法に慣れている従来型の経営の延長に現在のナンバー2がトップとして活躍するかどうかは慎重に検討すべきだと思います。


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