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vol.5 中国古典を実生活で活かすには

中国古典といえば論語や老子、孫子の兵法などが有名ですが、仕事や人間関係で悩みを抱え、書店でふとそれらを手に取って読んでみたという経験をお持ちの方も多いと思います。

その結果、中国古典を読んだところで実生活で特に役に立つことはないと考える人もいらっしゃいます。

そういう方はたまたま手にした書籍が古典の解説に終始していて、何が言いたいのかよくわからず、自分の抱えている課題の解決に直接的には役に立つように感じない、だから古典は現代で役に立たないものという認識に繋がっていくのだろうと思います。

原文は読みづらいし、書き下し文も漢字を見れば何となく言いたいことは分かるが本当の意味はよくわからない、解説の訳者によって微妙にニュアンスも異なり、自分の抱える課題に個別具体的には答えてくれていない、こんなところが中国古典が軽視されてしまう理由のひとつかもしれません。

中国古典はある意味、究極に抽象化された内容なので、自分が置かれている時代や環境、事情に置き換えて具体化する読み方をしないと役には立ちません。

ところで、書店には日々たくさんの書籍が発売され、並んでいます。

仕事で成果を出したい、悩みを解決したいと思って手に取るのは自己啓発やハウツー本などが多いのかもしれませんが、自己啓発もハウツー本なども実践しないと価値はありません。

読んでなるほどと思ったところで実践しない限り、単に知識を増やしたという自己満足で終わってしまいます。

本は読んでも、実践しないと意味がない。それはハウツー本にしても中国古典にしても同じです。

そして古典が時代を超えて読み続けられる理由は、物事の不変の原理原則や真理を説き、実践して役に立つことが証明されているからに他なりません。

■孫子の兵法の活かし方

例えば、孫子の兵法は戦略論として取り上げられることが多い古典ですが、企業経営にしろ、個人の実生活においても役に立つ示唆に溢れています。

絶対に負けない兵法と聞くと、自分は戦争をしている訳でもないし、兵法など学んだところで何の役に立つのかと感じる人もいらっしゃいます。

けれども、好もうが好まざろうが、私たちはある意味日々を戦っている訳です。仕事をしていれば同業他社との戦いがありますし、思うようにならない部下を抱えていたり、弱い自分自身と向き合ったりするのも一種の戦いです。

兵法は必ずしも相手を打ち負かすための方法論ということだけではなく、リーダーシップ論や組織論、マーケティング論でもあり、処世術でもあります。

そうした視点で孫子の兵法をはじめとする兵法書と向き合い、自分の課題とその解決策に落とし込んでみるとどういう意味になるのか、どう応用できるかと考えながら読み進めると、自己啓発や実用書として活用できることに次第に気が付いていくはずです。

「兵は国の大事にして、死生の地、存亡の道なり。察せざるべからず」

(戦争とは国家の一大事であって、国民や国家の生死はもちろん、存亡にも深く関わる行動だということを心得て計画を立てる必要がある。)

これは孫子の兵法の計篇という章に出てくる言葉なのですが、そのまま読むと「戦争をするのであれば慎重に作戦を練らなければならない」という意味くらいにしか解釈できませんから、ふーんという感じです。

例えば、自分が経営者の立場でこの言葉を読んだ時に、「経営とはまさに戦争を生き抜くこと。社員とその家族の生活がかかっていて、自分の都合のいいように物事が運ぶことはないのだからよくよく考えて行動しないといけない」といった解釈に至る訳です。

また、個人的な処世術として読んだ時には、「人生は戦いの連続。ただ漫然と努力するだけでなく、その時々の判断をしっかりしないと不遇な目に遭うかもしれない。軽はずみなことは控えよう」といった示唆として解釈できる訳です。

■中国古典の選び方

中国古典に興味を持って読んでみようと思った時の書籍の選び方ですが、現代語訳があることはもちろんですが、著者がどんなバックグラウンドを持ってその本を書いているのか、現代の実生活においてどう活かせるのかが書いてあるかどうかに注目すると良いと思います。

道徳的観点なのか、ビジネスとしての活用なのか、処世術や自己啓発なのかで書籍の性格が変わってきますから、その時の自分が何を求めているかによって手に取る書籍も変わってくると思います。

いきなり歴史的な考察という観点で中国古典に取り組むと多分難解で意味がよくわからないでしょうから、今の自分に役に立ちそうという観点で書店で中国古典を手に取ってみてください。

私自身の趣向や理解で代表的な中国古典を以下に紹介しますので、参考になれば幸いです。

・論語 人生について深く考えたい時に読む
・孫子の兵法 仕事での行き詰まりを感じた時に読む
・韓非子 上司と部下の関係性について考える時に読む
・貞観政要 君主論、リーダーシップについて考える時に読む
・老子 人生の儚さや処世術について考える時に読む

中国古典に興味を持つ人が増えたら嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございます。