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「センサー」・・・車が見つけたものは。超ショート怪談。
「センサー」
待ちに待った新車が納品された。
今回は走りよりも安全性を重視した。もういい歳で妻もいる。
いつまでも走り屋ではいられない。
最新式で、スイッチを入れると、車体の前後左右12か所のセンサーが働き、
接近している車両や歩行者を検知し、「キンキン」と警告音を出して、
危険を知らせてくれる。
前方なら「キンキン」。後方なら「キンキキン」。
左右なら「キーンキーン」と、音の種類が変わっているので方向も分かる。
早速、妻を乗せてドライブに出かけた。
「やっぱり新車は良いわね。車内の新しい皮の香りが良いわ」
「そうだな。少しハンドルやブレーキが硬めだけど
これから自分好みに調整できるかと思うと逆に楽しみだよ」
そんなこと言いながら、俺たちはとあるループ橋を降りていた。
ここは初デートで来た場所で、山の中の谷に掛けられた自動車専用の橋だ。
ループ状になって高低差を調整しているから、
走っていると周りの景色がパノラマのように変化して楽しい。
俺たちは昔を思い出しながら、降りていった。
ループの終わりが近づいたところで、
突然、車のセンサーが、「キンキン」と警告音を鳴らし始めた。
「どうしたんだろう。周りに車なんか無いのに」
ループ橋を走っているのは、俺たちの車だけ、見える範囲には
自動車どころか歩行者もいない。
「見えない人でもいるのかな」
「止めてよ。変なこと言うの」
俺は軽く冗談を言いながらも、消えない警告音が気になった。
消えないどころか、警告音が増えていく。
「キンキン」「キンキキン」「キーンキーン」
「キンキン」「キンキキン」「キーンキーン」
いつまでも続くその音に俺はもう耐えられなくなった。
「いくら何でも変だな。ちょっとそこに停めて見てみよう」
俺はループ橋の終わりにある待避用のスペースに車を入れた。
妻と外に出て、車の周りを見て回るが、特に変わった所は無い。
センサーカメラに汚れが付いていたり、何かが貼りついているような事もない。
「分からないなぁ」
「どうしちゃったの?」
途方に暮れた俺たちは、何の気なしに車から少し離れて見た。
ド~ン! バガーン!
突然、上から大型のトラックが降ってきて、俺たちの車は押しつぶされてしまった。
「キャアア~」
悲鳴を上げる妻を抱きかかえて、俺は茫然自失状態だった。
新車は大破。
トラックもろとも燃え上がった。
見上げると、20メートル程上のループ橋のガードレールが壊れて引きちぎられている。
おそらく、スピードを出し過ぎ、ハンドルを切り損ねて、あそこのガードレールを突き破ってしっまったんだろう。
震える妻を抱きしめながら、俺は考えていた。
果たしてこれは、何かに惑わされたのか、何かが助けてくれたのか。
それは今も分からない。
ただ命があるのは運が良かったとしか考えられない。
おわり
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