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「24分のX」・・・4 恋の暗号文書? 連続超ショートストーリー(タイトル変更)

○「24分の1」(4)

「君! 何だねこれは!」
塚田課長が、前野美晴をデスクに呼びつけて怒鳴った。

「『株式会社』が『株武会社』になってるじゃないか。
式(しき)と武(たけ)を間違えるなんて、何年社会人をやってるんだ。
小学生からやり直せ!」

「株武会社」は、「今夜デートしたい」という意味だ。
「小学生からやり直せ」は「いつものレストランで」。
「中学生レベル」なら、「駅裏のカフェ」
「高校生で成長が止まってる」なら、「一駅隣の居酒屋」だ。

こうやって塚田は待ち合わせの場所を提案してくる。

美晴がOKなら、武(たけ)を式(しき)に直して提出。
別の場夜に行きたい時には、別の個所を武(たけ)にして提出。
また、美晴が怒られる。
という具合だ。
結局二人は、同僚たちが見つめる中でわざと怒られるという秘密のゲームをしている気分なのだ。

秘密の関係を上手く続けるには、なるべく接触を少なくするのが良いのだが、
妙に空々しくしても、不審がられる。

怒りんぼ上司とバカOLを演じていれば、同情してくれることはあっても、
付き合ってるなどと考える者は少ない。

現に、このゲームをした後は、同僚たちがこぞって慰めに来てくれる。

「あんな怒り方は無いわよね」
「相手は女の子なんだから穏やかに言えないのかしら」

一度は部長に告げ口するとまで言ってくれた人もいて
慌てて止めた。

「美晴さん、サポートが必要なことがあったら言ってね」

「ありがとう、嬉しいわ。みんながいるから頑張れるわ」

そんな会話でこのゲームは毎回終わる。

そして、そのやり取りをベッドで課長に報告する。

秘密の関係を維持しながらも、この会社での日常は続いていく。

つづく

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