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「ショウ、ワ、ヨウ」・・・山の中の宿で恩師が体験したこと。


これは、友人から聞いた話で、どこかにも書かれているらしいから、御存知の方もいるかもしれない。

彼の恩師がご健在だった頃、イベントに参加する為、山形に恩師と共に旅行に行ったそうだ。
泊ったのは、山の中の古い旅館。旅館とは名ばかりでほぼ民宿という造り。

宿に入って荷物を置き、トイレに行った恩師が笑いながら帰ってきたそうだ。

「面白いね~この宿」

「何がですか?」

「いやぁ、トイレがね。
廊下の突き当りに三つ並んでるんだけど、
それぞれ仕切りがあって
扉に、「小便」「和便」「洋便」って書いてあるんだよ。

今一、ピンと来ない彼に向かっておんしは丁寧に説明してくれた。

「ほら、和式、洋式なら便器の形だけど、和便、洋便でしょ。
あきらかに中身の分類だよね。
便の内容が、和か洋か、今ちょっと確信がもてないんだよね」

さすがの恩師にも解けない難問だったようだ。


それで思い出したのだが、
映画「2001年宇宙の旅」で、宇宙船の中のシーンで、
トイレの前に立っている男の映像がある。
何やら番号の付いた項目が入り口に書かれていて、
それからズームバックすると、その人が腕を組んでいる
というワンカットだけなのだが、
これが実はギャグに近い、笑いを取るカットらしい、と気づいたのは、
映画を観てから相当経った後。原作本を読んでからだった。

実はこれ、無重力でトイレを使う為の注意事項が
十数項目に渡って入り口に書かれていて、
余りの面倒くささに、男は用を足すのを諦めてしまう。という場面だったのだ。
オチを細かく描かずに、悩んでいるだけで終わらせているから、英語に疎い者には分かりにくい。
この映画全編に共通するある種の「不親切さ」を感じさせる演出なのかもしれないが、キューブリック監督が亡くなってしまったから、確かめる術もない。
その場面に何が描かれ、何を伝えようとしているのか、を観客自身が考えなければならない。
詳細は丁寧で美しいが、突き放されたように感じる。
女を恋に落とすドンファン、男を手玉にとる悪女の技法にも似ている。

つい考えてしまう・・・脳内で何かを補完するようにしむける事が、恋の手練手管なのかもしれない。


         おわり



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