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あっという間に読める超ショート怪談・・・「休日の退屈」

超ショート怪談。休みの日に一人で電話を掛ける女に突然起こった悲劇とは・・・


『休日の退屈』

非通知にして電話をかけ、
もしも留守電だったら伝言を入れる。

「御免なさい。私が悪かったわ。
お願いだから帰って来て。
奥さんとは別れるって言ってたじゃない。
私、ずっと待ってるのよ」

もちろん、私は
失恋したわけでも、振られそうなわけでもない。

でたらめに電話をかけて、伝言の向こうで
修羅場が繰り広げられているかもと
想像するだけで楽しいのだ。

趣味が悪い?
そんな事、分かってるわよ。

でも身に覚えが無ければ、堂々としていれば良いんだし、
伝言が本物に思えるような事実があるのなら、
それはその人のせいで私が、悪いわけじゃない・・・

と、言い訳の独り言をつぶやいたところで携帯が鳴った。

休日に私と話そうと考える奴などいるはずない。
どうせ営業が何かだろう。
興味がありそうな気配を見せて
必死になって売り込んでくる営業マンを
のらりくらりかわすのも
退屈な休日の暇つぶしとしては悪くない。

私は笑っているのを悟られないように、静かに携帯を取り上げた。

「はい。もしもし?」

音がしない。

耳を澄まして集中してみる。


「・・・たせたね」


「え?」


「・・・たせたね・・・待たせたね。
たった今、妻を黙らせてきたよ。今すぐ、そっちに行くよ」

「え? 何? 何ですか?」

ドン!ドン!ドン!

突然、玄関の扉を叩く音がした。

そして、携帯にダブって玄関から同じ声が聞こえて来た。

「来たよ・・・来たよ・・・」

              おわり



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