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「24分のX」・・・10 「泥棒猫の紅い足跡」連続超ショートストーリー


「ゴメン。うちがヤバイ」

朝交わした「株武」の約束は、午後、泥棒猫宛の花束が届いた瞬間に
キャンセルされた。

その日、送られてきたメールは、その一言だけだった。

それでも、塚田課長が今喋ってる言葉は分かる。

「愛しているのは、君だけだ」

「本当に愛しているんだ」

「彼女と過ごしたのは間違いだった」

これは、あなたが私の耳元でずっと囁いていた言葉。

何度も何度も私に言ったその言葉を、同じ口で
今頃はユキに言っているんだろう。

「あの女が強引に誘ったんだ」

という枕詞をつけて。

枕詞? 英語だとなんていうのかしら、ピロートーク? そんなわけないわね。
馬鹿馬鹿しい、でも、なぜか笑いが止まらなかった。

ロッカーから取り出したあの泥棒猫宛の花束を取り出し、
バラの花を一本一本投げ捨てながら、私は会社を出て行った。

同僚も上司も、遠目に眺めるだけで、私には声を掛けてこない。
当然よね。
ここで声を掛けたら、どんな噂を流されるか、分かったもんじゃない。

ユキ、どうかしら? あなたのプレゼントへの私のお返しは?
追い込まれて、おかしくなったように見えるかしら。
それとも、もう私の事なんかどうでもいいかしらね。
ねぇ。どう思う? この泥棒猫の赤い足跡。
あなたの赤いお弁当箱より、素敵でしょ。

           つづく。


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