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「24分のX」・・・5 赤い弁当箱。連続超ショートストーリー

○24分のX (5)

「いつも私は、何かを探っている」

塚田課長と二人きりで話している間も、彼の手に全てをゆだねている時も、
美晴は何かを探している気分になる。

それは、この逢瀬が永遠のものだと言う核心だろうか、それとも
この危うい関係を終わらせるきっかけだろうか。

「君がいると時間が忘れられるな。本当に心地いいんだ。」

初めての夜、美晴はそんな言葉に微笑んだ。
だが、今は素直に喜べない。
課長が心地よい時間を過ごしていると言いながら、
スマートフォンをチェックし始めるのだ。

『私との時間に本当に心を注いでくれているのかしら?
私はあなたの何? あなたはどんな気持ちで、私に触れて私を抱くの?』

背を向けてスマホを見ている横で、課長の鞄が目に付いた。
漢文開いた鞄の口から、赤い弁当箱が覗いていた。

「妻も子も忘れたよ」・・・これも最初の夜の彼の言葉。

ありふれた言い訳に納得した振りをして
戻る場所のある男に、美晴は心の中で問いかける。

『あなたの24時間の内、
私に割けるのは、どれくらいなの?』

つづく



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