頑固おやじの店
お店の評価基準というのは幾つかありますが、私の場合は商品だけでなくお店自体の雰囲気も重要視したいと思っています。
お客さんを馬鹿にするお店もそうですが、客前で吊るし上げるように従業員を怒鳴る店主はアームロックをかけられても仕方がないですね!それ以上いけない
私は出張等で自炊が出来ない時以外はATMという立場上外食を避けてはいるのですが、機会に恵まれた時は貪欲に好みのお店を探してました。
普段抑えている食べ歩き魂を開放する訳ですからその熱量は半端ではありません。
基本的に人と行く時は相手に合わせるので友人達ですら私のこの姿を見た事はほぼありません。(食にこだわりが無いと言われた事すらある)
そんな訳ですから目の前でグズだノロマだなどと例えその指摘が正しかったとしても、客の存在を無視するようなやり取りをするお店には二度と訪れません。
自らの技術と熱量を注ぎ込んだ筈の料理に自分で泥をぶち撒ける行為が個人的に許せないのです。
実際その手の店はどんな口上を述べようとも言う程美味しくないのですよ・・・プラシーボかどうかはわかりませんが。
気分の問題が大きいのだと思いますが、目的の為には周囲に構わず相手を屈服させようとさえするその頑迷さが味を狂わせるのだと個人的には思っています。
さて、そんな私ですが一度だけ完全敗北したことがあります。
その店はもう、何十年も続くお店で一部界隈からはレジェンド扱いされている店でした。
寂れ気味の住宅街まで交通機関を乗り継ぎ、行列に並ぶのが嫌で眠い目をこすりつつ開店より早くに着くも何人かは既に並んでいる状態。
面倒だなと思いつつも殆どが地元民っぽい風貌からその愛されぶりに期待が持てます。
そしてようやく入店・・・店内は目を回すほどの忙しさです。
「そっちじゃねぇ、早くしろ!」
「何やってんだ、次やれって!!」
「ばかやってんじゃねえ、こっちだよ!!!」
店主のおやじがおばちゃん達に怒鳴り散らしています。
あぁ・・・とても残念だ。
テンションどん底にされた上にこの店もたいしたことないんだろうな。
もうそのまま席を立ちたい気持ちをどうにか抑え込んで注文品が来るのを待ちます。
相手が無作法でも、それが直接こちらに関係する迄は最大限景色として溶け込むのが自分の中の矜持なのです。
「おまたせしました。」
怒鳴られていたおばちゃんがプロの顔で注文品を持ってきてくれました。
そのおばちゃんの手際に応える為にもなるだけプレーンな気持ちで味を楽しむしかありません。例えバックミュージックがおやじの怒号であってもです。
特等席でオペラを見る感覚で手際を眺める事が出来る調理場傍のカウンターに座った事がほんと裏目に出てますね(TдT)
では深呼吸して一口・・・え?、なにこれ!?
衝撃でした。
度肝を抜かれました。
某グルメ漫画でグータラ社員にやり込められるゲストキャラの気持ちを真に理解しました。
美味すぎです。
くやしい・・・でも(味覚が)感じちゃう(ビクンビクン)ってやつですよ(;´Д`)
感情がもはやぐちゃぐちゃでしたがあっという間に完食してしまいました。かなりの屈辱ですが「美味いものは美味い!」という自分の信念を曲げる事はできません。
「とても美味しかったです。 ごちそうさまでした。」
支払いを済ませ丁寧に礼を伝えて店を出ます。おばちゃん達の暖かい「ありがとねー」に混じって鍋しか見つめていない怒号おやじの「まいどありー」が帰ってきました。
私の葛藤など1ミリも気がついていない棒読みです・・・腹が立ちます(笑)
敗北はこの時だけですが、悔しいけどもう一度食べに行きたいお店です。
ちくしょう・・・
<敗北はしてないけど別パターンの話>
<次のお話>
<前のお話>
<某月某日の嵐>
主にオチがつく感じの思い出話を語ってます。
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