さらばバス乗り場よ (見送る人に笑顔で答え)


幼い頃の旅行でとても印象に残った出来事があります。

何処かの観光地で迎えのバスに乗ろうとしていた時でした。観光客の人数と送迎バスの便数が見合っておらず押し合い圧し合い状態です。

虚弱体質の母は既に疲労困憊な様子で何よりよちよち歩きの私を連れていますので混み合う送迎バスの乗降口を目の前にして早々に次の便を待つ判断をしました。

すると乗降口の混雑から離れた位置で家族連れのおばさんが声を上げて

「ちょっと皆さん、奥に詰めればまだ乗れますし、小さい子連れの方がかわいそうでしょ!」


と声を上げてぐいぐいとバスの乗降口付近をこじ空け始めます。

そうしたおばさんの活躍で危なげに押し合い圧し合う事もなくバスに追加で乗るスペースが出来ました。すし詰めとはいえ効率的に乗ることができたのです・・・おばさんとその家族だけが。

私の母を含めた周囲の大人達と「小さい子供」である私の唖然(゚д゚)とした顔を「良い事をした!」という笑顔で見回してからおばさんが運転手さんへ希望に満ちた一言を発します。


「みんな無事に乗れて良かった! それでは出発しましょう!!」


まるで当時再放送していた宇宙戦艦ヤマトの「ヤマト発進!」を彷彿とさせる軽快な船出の宣言でした。


「プー」

というドア開閉のブザー音を残し、イスカンダルへ旅立っていくヤマ・・・送迎バスの後ろ姿をはるばるのぞみながら私達母子と順番を飛ばされた大人達は送迎バスが再び戻ってくるのをただ静かに待つのでした。

熱中症の足音が聞こえてくる猛暑日の中で(TдT)

この日は母の虚弱体質と仕事の都合で旅行等の家族イベントが殆ど皆無だった我が家がなんの偶然か旅行に行けた日だった筈なのですが、私はこの送迎バスの一件しかこの旅行で覚えている事がありません(;´Д`) ナンダッタンダ アレ



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主にオチがつく感じの思い出話を語ってます。


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