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ぐん税ニュースレター -社会保険労務士の部屋から- バックナンバー 2019年 7月号

この記事は2019年7月に発行されたニュースレターvol.11から「社会保険労務士の部屋から」の記事を再編集したものです。法改正などは最新の記事および官公庁の情報をご確認ください。

中小企業の働き方改革実践
長時間労働の削減につながる労働時間の弾力化

前回の記事

前回号では、4月に法改正となった労働法関連の働き方改革についてお伝えしましたが、中小企業の 働き方改革の最大の目的であり、経営者が今やるべきことはやはり『長時間労働の削減』。本気で取り組 むと効果を確実に実感できるものでもあります。そもそも労働基準法では1日8時間1週40時間を労働 時間の上限として定めており、これを法定労働時間といいますが、多くの企業ではこの法定労働時間を超えた時間外労働が日常的に存在しています。 長時間労働が蔓延し、残業ありきの労働環境が当たり前となっているいま、業務の効率は下がり、労働者の健康リスクも高まっていると言われています。また、会社側にとっては残業代の支払いが必要となり、労使双方にとって良いことはあまりありません。
一方で、夏は繁忙期だけど冬は閑散期、月末月初は忙しいけれど月半ばは余裕があるな ど、業種や職種によっては、時期によって業務量が大きく変動することがあります。 このような場合、長時間労働を抑制するための制度として『変形労働時間制』があります。

変形労働時間制とは

一定の単位期間内の法定労働時間の総枠を超えないことを条件として、特定の日または週に法定労働時間を超えて労働者に働いてもらうことができる制度で、労働時間を弾力的に運用できます。つまり、この変形労働時間制を取り入れることで、無駄のない働き方に変わり、不要な残業を減らすことが可能になります。また休暇の予定も立てやすくなり、ワークライフバランスの実現に近づきます。運用する期間によって次のような種類があり、導入のための要件等はそれぞれ異なります。

1か月単位の変形労働時間制

労使協定又は就業規則等で、1か月以内の変形期間の労働時間を平均して1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、変形期間における各日、各週の所定労働時間を特定する制度です。月内に繁閑の差がある場合について導入すると効果的な制度です。

1年単位の変形労働時間制

労使協定において、対象期間を、1か月を超え1年以内の期間とし、その対象期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内とします。1日10時間、1週52時間、連続労働日数6日を限度とし、対象期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間を労働委準監督署長に届け出る必要があります。例えば季節的な業務など、年間で繁忙期と閑散期がある建設業や製造業、運輸業で導入が高い制度です。

週単位の変形労働時間制

小売業など接客の業種で労働者が30人未満の事業場についてのみ認められます。 1週40時間のうち1日の所定労働時間の上限は10時間までとし、日ごとの業務に著しい繁閑の差がある場合に導入すると効果的な制度です。労使協定を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。

フレックスタイム制

清算期間(3か月以内※)の一定の期間を平均して1週40時間を超えない範囲
で総労働時間を定めておき、労働者がその範囲で始業、終業の時刻を選択する制度です。コアタイムといって必ず会社に居なければならない時間帯を決めることができます。労働者ごとに裁量権がある場合や、各々で業務量や稼働時間帯が変動する場合、育児や介護と仕事の両立を必要とする場合などに有効な制度です。 就業規則への定めと労使協定の締結、労働基準監督署への届出が必要です。
※2019年4月の法改正で、労働時間を清算できる期間が1か月から3か月に延長されました。

厚生労働省ウェブサイトより

今、注目の勤務間インターバル制度! 助成金を活用して導入を!

働き方改革による長時間労働の削減のための注目の取り組みが『勤務間インターバル制度』です。聞き慣れない方も多いと思いますが、今回の法改正で労働者の健康の観点から働き過ぎを抑止するために、終業時間から翌日の始業時間までに、一定の休息時間を確保することが事業主の努力義務となりました。このように勤務と勤務の間に一定の休息時間を確保することで、労働者が十分な睡眠や生活時間を確保できるため、長時間労働の削減とワークライフバランスの実現に、より一層効果があると言われています。
勤務間インターバル制度はまだまだ認知度が低く、この制度を導入している割合はわずか1.8%です。一方でEUでは勤務間は11時間空けるということが義務付けられています。国はこの割合を10%の目標に近づけるため、今年度、導入企業へ助成金を支給することにしています。働き方改革系の助成金はいま、最も注目の助成金であり、この勤務間インターバルの助成金等を受給
した企業しか申請出来ない助成金も新設されています

厚生労働省ウェブサイトより

まとめ

繰り返しになりますが働き方改革には、何といっても長時間労働を削減していくことが必須です!理想通りとはいかなくても、出来ることから少しずつやってみるほかありません。業務内容や職種などさまざまな事情を考慮した上で、まずは社内の労働時間の制度を一度見直すことや、短めの時間から勤務 間インターバル制度の導入を検討する機会を作ってみませんか?
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社会保険労務士 高橋

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