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ぐん税ニュースレター -お客様訪問- バックナンバー 2022年1月号

お客様との対談 ~株式会社東洋精工~

この記事は2022年1月に発行されたニュースレターvol.21から「お客様訪問」の記事を再編集したものです。最新情報ではなく、掲載当時の内容に基づいておりますので予めご承知おきください。

小林浩一:こんにちは。ご無沙汰しております。コロナ禍の中で今年は増収増益で調子がいいですね。この業界は調子がいいのですか?または受注が増加した業界とかありますか?
福島社長:いい業界といえば、弊社では半導体装置の空圧バルブとかの部品も作っているのですが、これは前年比で3倍ぐらいになっていますね。弊社の総売上の1割以下だったのが、今年は倍以上になっています。
この数年間、メイン顧客からの受注が落ちていたところにコロナ禍になってしまい、大変なことになっていたのです。それで2年間苦しんでいたのですが、やっと戻ってきたということですね。
小林:最近の経済を見ていると、どの業界においても勝ち組と負け組がはっきりしてきた気がします。製造業でも建設業でも仕事が多く集中しているところとダメなところに完全に分かれています。取引先の選別が厳しくなっているという気がします。
福島社長:自動車関連はコロナの影響は強かったですね。でも今年はコロナの影響も弱まってきて生産が戻ってきました。自動車の燃料噴射装置の部品については数年前より、より高度な加工を求められていたのですが、これが今年の夏頃から徐々に出荷できるようになったこともあります。

福島社長(右)と荻野管理部長(左)

小林:企業としては丸い尖ったものを作っているのですよね。
福島社長:はい。この自動車関連部品に関していうと尖ったものというよりは筐体を作っているのです。そのグレードを上げたので単価を上げて頂いてます。
小林:技術力が評価されているというのですね。
福島社長:手前味噌になりますが、うちの部品を使うことでユニット全体が納品できる状況となっているというお客様が何社かあります。そんなお客様に対する売上が全体の6-7割ぐらいあります。
小林:オンリーワンの部品を製造していれば価格競争には巻き込まれませんよね。
福島社長:ある程度の価格競争はありますが、技術を評価してもらっています。
小林:それは福島社長さんが品質に厳しいからですね。安く作るということより品質ファーストでやってきたからですか?
福島社長:品質は絶対譲れない部分ということで、常に安定したものを提供していく。不良品率を下げていくということを目標にしています。
小林:品質を出すためにはどうしたらいいのですか?
福島社長:製造過程の監視しかないです。
小林:監視というと具体的にはどうするのですか?
福島社長:機械設備の状態を監視するのです。機械の状況は毎日違いますから。いい機械がきちんと動いているかどうかを測定器を使って常に調べています。もちろんいい職人も必要です。
小林:そのような態勢をつくるのには努力が必要ですよね。福島社長さんが口を酸っぱくして言い続けているのですか?
福島社長:言わなくてもマニュアルや手順をありますから。でもこのように手順を整備するのに10年以上、20年ぐらいかかりました。お客さんからクレームが出てきて、それを解消していくというものを記録していってだんだんとノウハウや態勢が出来てきました。
小林:それが御社の成功の秘訣ですね?
福島社長:秘訣かどうかわかりませんが、うちでは「美しい部品造りで幸せづくり」を社是としています。これは御社で経営計画書を1日で作成するセミナーをしたときに考えたものです。会社案内にも書いてあります。
小林:その経営理念は弊社で開催した「将軍の日」に参加した時に作られたのですね。すみません。忘れていました(汗)。

小林:以前に、従業員教育の話をした時に、製造工程の全部をできる熟練者を育てるのと、工程を細分化しマニュアル化することで未熟練者でもできるように分業化するのとどっちがいいかという話が出ました。御社は方向性としては熟練者育成を目指しているのですか?
福島社長:製造部で機械を回せる人は12~3人ぐらいですが、1人5~6台の機械を回しています。うちは一人が最初から最後まで責任もって造るという考え方です。
お客さんの要求がとても高いので、機械の性能を知り尽くした人がやらないとできない。自動旋盤で切削して4~5ミクロンの精度を達成していこうとすると、分業化して機械でやっていくわけにはいかない。ただ、今後は機械でやらないといけない部分もあると思っています。そのためにもっとスペックの高い機械を揃えていくことが必要だと感じています。

検査室
NC自動施盤工場

切削で研磨がいらない精度を出す。理論的に厳しいレベルをやっている。それをマニュアル作って出すということは難しい。職人を育てるような教育制度、多能工化というのが正しい言い方だと思うのですが、それを目指しています。派遣労働者は一切入れていない。基本的に全社員が正社員という方向
性です。コスト意識からいうと逆行していますよね。
小林:特色ありますね。他社さんはそういう方向は目指さない。誰でもできるような簡単な方向に行きたがるので、結局価格競争に巻き込まれてしまう。
福島社長:小林先生には怒られるかもしれませんが、僕はお金を残そうと思っていないんです。この会社をどうやってきちんと維持して、業界のなかである程度の地位になるか、で安定した経営を進めていけるかというのが最大の眼目であって。僕が私財を増やしたいと思ったら、やっぱり安い賃金で安い人間を使って、とにかくお金になりさえすればいいやってなる。全く違う発想です。
小林:僕も利益を出すのが会社の目的とは思っていないです。いい会社にすることが重要で。いい会社は利益が出ちゃうんです。
福島社長:利益を出さないと会社は存続していけないので必要なのですが、それは目的じゃないですよね。
小林:いい会社にして利益を出して設備や従業員に投資をしてさらにいい会社にする、そういう循環を回すのがいい経営だと思います。
ところで人材教育も重要ですが、高い機械をどんどん買っていくというのも一つの考え方だと思いますか?
福島社長:今後、もっと精度の高い機械を買っていこうと思っています。値段も高いけど、他にない機械を持っていれば精度が出しやすい。他社と差別化するために生産性よりは精度を上げていくとか、そういう方向に行きたい。そういう機械を現場に入れていかないと、現場に負担がかかってしまいます。
小林:将来の夢は?
福島社長:今の会社をどうやって残していくかなというのが一番の今後の課題ですね。増やしていくということより維持していくことが課題ですね。
小林:もっともっといい会社にしていってください。今日はどうもありがとうございました。

商号:株式会社東洋精工
住所:埼玉県秩父郡皆野町三沢字諏訪平522
業種:精密機械部品の製造
設立:昭和42年7月
売上高:7億円
社員数:53名
昭和36年4月創業。筆記具の精密部品の製造を行う形で創業した。昭和42年7月に法人化、昭和51年8月に商号を株式会社東洋精工に変更し、現社長の福島博が代表取締役に就任した。平成15年9月、埼玉県知事より「彩の国工場」の指定を受ける。
最新機械を積極的に導入して生産性向上に努めている。
ISO9001、14001取得


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