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ぐん税ニュースレター vol.37 page02 -社会保険労務士の部屋から-

時間外労働の上限規制

まだまだ夏のような暑さが続きますが、カレンダーはもう9月。2023年も残すところ3分の1となり、本年を締めくくり、新しい年を迎える態勢づくりを意識し始めてそわそわする時期です。ちょっと気が早いでしょうか。
とはいえ、2024年4月に向けて既にさまざまな対策を講じている会社も多いはずです。2019年に働き方改革の一環として労働基準法が改正され、時間外労働の上限が法律に規定されましたが、当時は適用が猶予されていたいくつかの業種も、2024年4月からは適用対象となります。そしてこれらの規制が各業界に大きな混乱をもたらすことが予想され、「2024年問題」として注目されています。
まず、建設業。これまでは時間外労働に上限が設けられていなかったのですが、2024年4月からは、原則的な上限時間、すなわち月45時間、年360時間が適用されます。

厚生労働省「建設業 時間外労働の上限規則 わかりやすい解説」より

そして、運送業です。

厚生労働省 「トラック運転者の改善基準告示」資料より

自動車運転者に対して、特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が設けられます(年960時間)。これも建設業と同じで、今までは上限規制がありませんでした。
 
これまでの青天井からの激変に対応するには、5年の猶予では足りなかったことでしょう。時間外労働の上限規制に限らず、この5年で、年次有給休暇の年5日の取得が義務化60時間超の時間外労働の割増率アップなど、特に中小事業主を圧迫するような法改正が次々と行われています。でも、労働時間を削減する、休日を増やす、など、労働環境をホワイト化する対応だけで、人材不足や労働者の高齢化などの問題が解決するのでしょうか。
長時間労働がきつい、と離職する労働者がいる傍ら、稼ぎたいから長時間労働も厭わない人たちも数多くいて、そういう人たちに支えられているのも現実だと、顧問先を見ていても思います。労働時間が減っても給与や売上は保障され、納期内に仕事を終えるにはどうしたらいいか、これは利便性やスピードを最優先してきた社会全体で解決していくべき問題です。
書類の受け渡しがインターネットで可能になり、オンラインの恩恵で人の移動が激減しましたが、人の手を介して物を運ぶことは減ることはありません。2024年問題をきっかけに、三方よしの画期的なシステムが開発されることにも期待しつつ、動向を見守っていきたいと思います。

法改正に伴う助成金活用、新様式の36協定についてなど、お問い合わせはビジネスブレインまで。

社会保険労務士 高橋


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