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内観療法ー強迫、双極症ー 闘病記【21】

退院後

前回は精神科入院のことを述べました。今回は内観療法を受けたときのことを中心に述べたいと思います。

退院してからすぐに大学院に戻りました。何もなかったかのように以前の生活に戻りました。周囲はいつも通りに接してくれました。
バイトも女性と遊ぶことも続けていました。
カウンセラーも少し元気になったと言って喜んでくれました。

今思うと退院後にすぐに学校に戻ったのはよくない判断だったと思います。精神面での休養が必要だったと思います。

再びうつ状態に悩まされる

一ヶ月もしない内に、またうつ状態になる日が出てきました。入院治療の効果は続かず、病状が入院前に戻ってしまったのです。
結果的には入院治療は失敗だったのです。

入院生活を振り返る間もなく私は必死に研究しました。
前にも述べたように焦っていました。早く学問で身を立てたいと思っていたのです。焦れば焦るほどうつ状態になることは増えて行きました。

またうつ状態が頻繁に起こり、どうしようもなくなって医者やカウンセラーに相談しました。医者は打つ手がないという感じでした。

カウンセラーの打開策

カウンセラーは最後の手段として内観療法を勧めてきました。私には初めて聞く言葉でした。そして少し内観療法について調べると、厳しい生活を送ることが分かりました。

しかし病気が良くなるならなんでもしようと思いました。この時も内観療法で病気がよくなるものだと思っていたのです。
そして7日間に及ぶ奈良での内観研修に向かいました。

奈良内観研修所

奈良内観研修所はとても大きな家というような建物でした。
この時も内観療法により何かが変わると思いわくわくしていました。
中に入ると厳しそうなおばさんが迎えてくれました。

玄関には私の前に来ていた家族がいました。子供が帰りたいと言ってごねていました。こんな子供も受けるのかと驚きましたが、親の説得も虚しく結局その家族は帰っていきました。
その一連のやりとりを見ていて、研修は厳しそうだなあと思いました。

部屋にこもる

そして携帯電話を預けて合宿が始まりました。まず部屋に案内されました。6畳ぐらいの和室でした。机と布団と屏風がありました。それ以外は何もありません。窓がありますが風景は良くなかったです。

部屋に入ると隅っこに追いやられて、屏風を目の前に立てます。座布団の上にあぐらをかいて座りました。これが基本の姿勢です。
それから内観が始まりました。

なお研修中はトイレ以外部屋から出ることを禁じられます。またトイレなどで他人と会っても会話は禁止です。

一時間に一度くらいおばさんが見回りを兼ねて来るのですが、その時に与えられた課題について話をするのが唯一の許された会話です。

食事は当然黙食で館内放送を聞く時間です。休憩もありません。寝る時間はしっかりと確保されていました。私は病気なので薬を飲むことを許されました。

内観開始

おばさんに生まれてから5歳までの間で、母親にしてもらったことを思い出してくださいと言われました。
そう言っておばさんは部屋から出て行きました。
あとは一人で座ってとにかくその年齢で母親にしてもらったことを思い出すのです。

真面目に取り組めばいいことがあるだろうと思って記憶をたどりました。
前にも述べたように私はマザコンですから母親にしてもらったことはたくさんありました。

私の両親への思い

ところで、私はこんな病気になってしまいましたが両親のせいだと思うことはほとんどありませんでした。
もちろん恨んでいるということもありませんでした。

基本的にはカウンセラーも含めて、他人に両親の悪口を言うことはほとんどなかったと思います。

病気が両親のせいだと思っていれば、こんなに苦しむことはなかったのではないかと思います。いつも自分のせいで病気になったのだと思って自分を責めていました。

してもらったこと、お返ししたこと、迷惑をかけたこと

さて内観ですが、母親には毎日ご飯を作ってもらったり保育園に連れて行ってもらったり、絵本を読んでもらったりとたくさん思い出すことがありました。

それを見回りに来たおばさんに話します。
おばさんは次は母親にお返ししたことを思い出すように言いました。

この時、母親に喜んでもらうために勉強をがんばったといいましたが、それは自分のためですと言われて却下されました。
純粋にお返ししたことなんて中々ありません。

またおばさんが来て、思い出したことを話します。

次はお母さんに迷惑かけたことを思い出します。
トイレの失敗など、これもたくさん思い出せました。

そしてそれをおばさんに言うと、次は年齢を上げてまた思い出すのです。
これを順番に家族全員分行います。
とにかくしてもらったこと。それに対してお返ししたこと。迷惑をかけたことを考え続けるのです。

厳しい研修

なお寝る前も考えることを設定されます。内容は忘れてしまいましたが、自由に考える時間を与えてもらえませんでした。

真面目に取り組むと結構きついものです。たまに昼寝してしまうこともありましたが大方真面目にやりました。

また食事中は館内放送で内観療法経験者のお話を聞きます。
これがしんどかったです。食事中も休ませてくれないのです。

館内放送は感激する内容で、内観をやる気にさせます。
食事の時くらい気分転換をしたいのですが許してくれません。
これを7日間缶詰でやるのです。

感謝の気持ち

さて、ずっと「してもらったこと」「お返ししたこと」「迷惑をかけたこと」を思い出すと、自然にその人に対して感謝の気持ちが湧いてきます。

私の場合基本的にしてもらったことはたくさん思い出せるのですが、お返ししたことはほとんど見つかりませんでした。またあったとしてもとても小さいことで、お返しとは呼べないものばかりでした。
迷惑をかけたことはたくさん出てきました。

そしてずっと考えていると、自分がいかに愛されていたのか、無償の愛をもらっていたのかに気づいて感謝の気持ちで満たされます。
これを家族全員分やるので、家族全員に対して感謝の気持ちでいっぱいになります。

この研修期間中うつ状態になることはありませんでした。
感謝の気持ちで自分が満たされて気持ちが高ぶっていたのです。

研修最終日

さて全日程が終わると、最後に参加者が集まって研修の感想を述べるという時間が設けられました。
このとき初めて参加者同士で話をしました。
参加者はみんな研修に感動していて大変でした。

「これからは家族のためにがんばります」とか「事業を始めます」とか「子供を大事にします」などを声高に宣誓していました。
話している途中で泣き崩れる人もいました。

私はあまり感動していなかったので気まずい思いをして聞いていました。
番が回ってきたので、病気を抱えていることを話しました。

すると聞いていた参加者に「それは大変でしたね」と言われました。話し終わった後には「お辛い人生でしたね」と言われ、「今まで生きていてくれてありがとう」とまで言われました。

研修最終日は、7日間一緒に研修を受けたということで参加者は妙な連帯感がありました。

帰路にて

帰りの電車で少し年上のお兄さんと一緒になりました。話をしたのですが、「来てすごく良かったと」言っていました。

そのお兄さんは父親とのわだかまりに苦しんでいたことを教えてくれました。内観を通して父親に感謝の気持ちが湧いてきたと言っていました。
また機会があれば内観に参加したいとも言っていました。

私はそんなものかなあと聞いていましたが、個人的には二度と来たくないと思いました。

研修終了後

さて病状ですが、入院したときと同様にしばらくは気持ちが高じているので調子がよかったです。
しかし調子がいいのは続きませんでした。2週間としないうちにうつ状態が出るようになりました。

結果的には病気は良くなりませんでした。非常に残念でした。

しかし、家族関係に問題を抱えている人にはおすすめです。
問題を抱えている中で、してもらったことを思い出すという作業は楽ではありませんが、やればほとんどの人が感謝の念が湧くと思います。

またそれに対して自分がお返しできていないこと、迷惑をたくさんかけて生きてきたことが自然と思い出されるでしょう。

ほとんどの人は「これからは家族に対して感謝の気持ちをもって接しよう」と決意すると思います。

また特に家族関係に問題を抱えていない人にもおすすめです。
家族に感謝して毎日を過ごせるというのは幸せなことだと思います。

決して安くはなく、場所も遠方の方が多いとは思いますが、どうしようもない状態に陥ったときは試してみる価値はあると思います。

大和内観研修所

なお研修というスタイルではなくカウンセリングや家で出来る内観療法の本も出ているようです。
私が行った奈良内観研修所は大和内観研修所と名前を変えて今もやっているようです。
興味のある方は是非お問い合わせください。


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