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12の基本スキル「質問する」:会話をコントロール(2/2)

前回、「会話の方向性を導く質問」と「相手との関係を強化する質問」の2つの話をしました。まだ、読んでいない人は、こちらの記事をお読みください。


必要な情報を引き出す

必要な情報を引き出すとは、対話を通じて特定の情報やデータを得ることを意味します。これは以下のような状況で重要です。
 
 ・決定を下すために必要な情報を集める
 ・問題解決や分析に必要な詳しい情報を得る
 ・相手の意見や考え方を理解する
 ・確認や誤解の解消する
 
この目的には、クローズドエンドの質問(クローズドクエスチョン)や要約の質問が特に有効です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

図表.必要な情報を引き出す質問

6.クローズドエンドの質問(クローズドクエスチョン):

クローズドクエスチョンは、特定の情報を効率的に得ることができます。

オープンクエスチョンが会話を広げていく質問であるのに対して、クローズドクエスチョンは、話を絞り込んでいく時に有効な質問です。

アンケート調査の設問で、自由に回答する質問(オープンクエスチョン型の質問)と、YES/NOで回答できる質問(クローズドクエスチョン型の質問)になっている調査票を見たことがあるかと思いますが、会話でも同じように、それを使い分けていくイメージになります。

■ クローズドクエスチョンの会話事例:週末の予定
状況:あなたは同僚に、週末の予定について尋ねています。
1.あたな:「今週末は何か予定ある?」
2.同僚:「うん、いくつか考えていることがあるよ。」
3.あなた:「それは外出する予定?」
4.同僚:「はい、そうだよ。」
5.あなた:「ハイキングに行く予定?」
6.同僚:「いいえ、実はビーチに行くつもりだよ。」
7.あなた:「ビーチでサーフィンをする?」
8.同僚:「いや、ただリラックスするだめだよ。」

この会話では、クローズドクエスチョンを使用して、同僚の週末の予定に関する具体的な情報を効率的に引き出しています。
このような質問は簡潔で、話題を絞り込むのに役立ちますが、相手の意見や感情を深く掘り下げることは難しいため、場面に応じて使用することが重要です。

7.要約の質問:

会話をまとめるために、要約や確認の質問をすることが有効です。

たとえば、「つまり、あなたの主な懸念は...ということですね?」のように確認します。

■ 要約の質問会話事例:新しいプロジェクト
1.同僚:「このプロジェクトでは、まず市場調査を行い、次に製品の設計を進めることになっている。そして、プロトタイプを作成した後、顧客フィードバックを集める予定だよ。」
2.あなた:「つまり、まず市場調査から初めて、製品設計、プロトタイプの作成、そして顧客からのフィードバックを集める、と言うステップを踏むだけだね?」
3.同僚:「その通り、それぞれのステップで重要なのは、顧客のニーズに応えることだ。」
4.あなた:「分かった。つまり、プロジェクトの各段階で顧客のニーズに焦点を当てることが重要ということだね?」
5.同僚:「正解。そのためには、チーム全員がその目的を念頭に置いて作業をする必要がある。」

この会話では、要約の質問を通じて同僚の説明を理解していることを確認し、また、プロジェクトの重要なポイントを明らかにしています。

要約の質問は、相手のメッセージを正しく理解していることを示すとともに、誤解があればそれを修正する機会になります。
この質問テクニックは、「聞く」スキルのパラフレージングのテクニックとも関係してくるので、そちらもチェックしておいてください。
 
7つの質問テクニックは、3つのカテゴリーに大まかに分類されますが、状況に応じて複数の目的に役立つこともあります。たとえば、オープンクエスチョンは、会話の方向性を導くだけでなく、相手との関係を深めるのにも効果的です。また、適切な質問を選択し、状況に応じて柔軟に対応することが大切です。

営業での質問の仕方(SPINモデル)

営業シーンで活用される質問スキルに「SPINモデル」と呼ばれる質問テクニックがあります。最後にこちらの質問スキルをご紹介します。

SPINモデルは営業における質問テクニックのひとつで、顧客のニーズを効果的に理解し、それに応えるソリューション(解決策)を提案するために使われます。

図表.SPINモデルの会話プロセス

図表は、こちらの書籍『SPIN営業術」からの引用になります。

状況質問(Situation Questions):

状況質問は、顧客の現在の状況に関する情報を収集するために使われます。たとえば、「現在どのようなシステムを使用していますか?」のような質問です。

問題質問(Problem Questions):

問題質問は、顧客が直面している問題や不満に焦点を当てる質問です。たとえば、「そのシステムでどのような問題が発生していますか?」のように尋ねます。

示唆質問(Implication Questions):

示唆質問は、問題が持つ影響やそれがビジネスに与える潜在的な損害について掘り下げるものです。たとえば、「そのシステムが停止した場合、どのような影響が考えられますか?」のような質問が含まれます。

解決質問(Need-payoff Questions):

解決質問は、解決策がもたらす利点や価値に焦点を当てます。たとえば、「もしシステムがノンストップで利用できたら、ビジネスにどのような利点がありますか?」といった質問です。

SPINモデルは、顧客が自分のニーズを深く理解し、提案されたソリューション(解決策)の価値を認識するのに役立ちます。このアプローチは、特に複雑な商取引やB2Bのセールスにおいて有効とされています。

質問の質を高める事前準備の重要性

質問するスキルの質を高めていくためには、対象となる企業や人物に関する事前の情報収集と整理が非常に重要です。

こちらは「調べる」スキルとも密接に関係してくるので、そちらのパートで詳しく説明したいと思いますが、ポイントになるところを何点か説明したいと思います。

背景情報の収集:

企業の場合は、企業の沿革、業種、主な製品やサービス、市場での位置づけ(ポジショニング)などを調べます。
上場会社の場合は、IR関連資料(有価証券報告書や決算説明会資料など)に事前に目を通しておくと多くの情報を得ることができます。
 
また、人物の場合は、職歴、専門分野、公開されている経歴などの基本情報を調べます。
こちらは、linkedinやFacebookなどのソーシャルメディアなどもチェックしておくとプライベートな情報も得ることができ、接点を作りやすくなります。

また、ニュース、プレスリリース、業界の動向に関する情報などの最新動向もチェックしておきます。さらに、業界内の評判、顧客やパートナーからの評価、社会的影響など、対象となる企業や人物の評判や意見なども調べておくとベストです。

目的と目標の明確化:

会話を通じて何を達成したいかを明らかにしておきます。
たとえば、「新しいビジネスチャンスを探る」だったり、「特定の問題についての洞察を得る」など、目的を明確化しておくことが重要です。また、必要とする具体的な情報や、理解を深めるための情報を定義し、情報収集の目標も明確化しておきます。

質問の準備:

多くの意見や情報を引き出すためのオープンクエスチョンや、特定の情報を効率的に得るためのクローズドクエスチョンを準備し、場合によっては、ヒアリングシートなども準備できているとベストです。

これらの要点を念頭に置きながら事前の準備を行い、会話の中でこれらのスキルを活用することで、より効果的なコミュニケーションができるようになります。

ビジネスの現場では、お客様との会話の中で、効果的な質問を繰り出すことができると、お客様から「この人は良く分かっている。できる人だ」と認識されて、想定よりも多くの話をしてくれる状況が生まれる時があります。質問の使い分けと合わせて、質問内容そのものの質を高める努力もしていってください。

次は、「伝える」スキルをマスターしていきましょう!


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